パリ五輪に期待が高まる春シーズン
オリンピックイヤーとなる今年、陸上競技恒例の春シーズン国内主要大会は、5月19日に行われた”セイコーゴールデングランプリ”でひと区切り。
この間に、”チームジャパン”として、五輪出場枠の獲得に成功した種目や、必要な条件を満たしてパリ五輪日本代表に内定した選手、五輪本番での活躍が期待できるような好記録の誕生など、五輪シーズンの幕開けにふさわしい明るいニュースが届いている。
ゴールデンウイーク以降の好結果を、トラック&フィールド種目に絞って、きゅっとまとめてご紹介しよう。
ダイヤモンドリーグ蘇州大会:やり投世界女王・北口榛花、優勝でシーズンイン
世界陸連が「世界最高峰シリーズ」として展開している”ダイヤモンドリーグ”(DL)の第2戦・蘇州大会が4月27日、初戦の廈門大会(4月20日)に続いて中国で開催された。
女子やり投で昨年の”ブダペスト世界選手権””ダイヤモンドリーグファイナル”を制しただけでなく、アジア歴代2位となる、67m38の日本新記録を樹立して、2023年世界リスト1位の座に収まった日本の大エース、北口榛花が、この大会でシーズンイン。4回目の試技まで7番手で進行する苦しい展開となったが、5回目で2位に浮上すると、最終投てきで62m97をマークして、劇的な逆転Vで五輪イヤーをスタートさせた。
また、この大会には第1戦の廈門大会110mハードルで、3位の成績を収めるとともに、日本陸連が設定している条件を満たしてパリ五輪の代表に内定した泉谷駿介も出場。世界大会メダリストたちと優勝争いを繰り広げて2位と、DLで連続上位フィニッシュを決める好走を見せた。
ダイヤモンドリーグ ドーハ大会:3000m障害の三浦龍司、五輪内定を決める
4月29日に行われた”織田記念”(広島)には、男子3000m障害にブダペスト世界選手権6位で、日本記録保持者(8分09秒91)でもある三浦龍司が出場。参加標準記録(8分15秒00)をクリアして、トラック中長距離種目最初の五輪内定者となるかが注目されるなかでのレースとなった。
圧倒的な強さを見せて快勝したものの、悪天候も影響して記録は8分22秒07にとどまり、代表内定は持ち越しに。しかし、三浦は、5月11日にカタールで開催されたDL第3戦ドーハ大会で、8分13秒96をマークして5位となり、「パリ行きチケット」をきっちりと手に入れた。
日本選手権10000m:男子は葛西潤、女子は五島莉乃が初優勝
5月3日には、五輪日本代表選考会として、6月に実施が予定されている他種目に先駆ける形で10000mの日本選手権が、静岡・エコパスタジアムで開催された。
優勝者が参加標準記録(男子27分00秒00、女子30分40秒00)を突破すると、日本代表に即時内定する大会で、男女とも非常に水準の高いこの記録を狙って、ペースメーカーや電子ペーサー(ウェーブライト)も用意されての開催となった。
有力選手を抑えて男子10000mに勝利したのは、社会人2年目の葛西潤(旭化成)。残り3周(1200m)を切って先頭に立って徐々にリードを広げると、ラスト1周で鮮やかなスパートを放って後続を突き放して快勝。参加標準記録の突破はかなわなかったものの、自己記録を大幅に更新する日本歴代4位の27分17秒46で日本選手権初優勝を飾った。
葛西に続いたのは太田智樹。セカンドベストの27分20秒94をマークして、2大会連続2位とハイレベルでの安定感を印象づけた。これにより太田は、WAワールドランキングでターゲットナンバー内(出場枠:27)に収まる日本人最上位に浮上、代表入りへ一歩近づく形となっている。
また、3位には快走を見せた19歳の大学2年生・前田和摩が続いて、初出場で表彰台に。U20日本新記録で日本人学生最高記録となる27分21秒52の好タイムを叩きだし、注目を集めた。