5大会連続20回目の選手権大会
北海道の北東沿岸にある網走市。流氷が接岸する1月下旬頃から3月にかけては “観光砕氷船” に乗船すべく海外からも多くの観光客が訪れる。また、かつて「ここは地の果て」と犯罪者に恐れられてきたことで知られていた “網走監獄” もあり、今では北海道有数の観光スポットなっている。季節を通じて賑わいを見せる観光都市・網走に、大学野球日本一を目指す学校がある。
1989年の創部以降、5大会連続20回目の出場を決めた第73回全日本大学野球選手権大会の一回戦に登場したのは、東京農業大学北海道オホーツク野球部。決して野球をするに適した場所であるとは言い難い網走市にある強豪大学だ。
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全国の高校から来た選手たちが頂点を目指す-Journal-ONE撮影
「北海道の人たちでも、なかなか訪れる機会の少ない場所」と話す、三垣 勝巳監督も同大学の野球部OB。今年も登録選手には地元・北海道から南は沖縄県まで、全国の高校から進学してきた選手たちがずらりと並ぶ。
「網走まで来て大学野球をやろうとする選手たちは、やはりそれぞれに覚悟を持って集まっているのです」と言う三垣監督も、大阪の名門・PL学園で甲子園を沸かせた後、網走で野球を続けた”覚悟”を持った選手の一人。
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試合開始を待つ東京農業大学北海道オホーツクの選手たち-Journal-ONE撮影
「私の場合は当時父の体調が悪く、 近くに居るとお互いが頼ってしまうと思い、網走で野球を続けることにしたのです」と教えてくれた三垣監督は、才能溢れる世代として今でも ”松坂世代” と称される時代に活躍。伝説の “PL学園 vs 横浜高校 延長17回の死闘” を演じたキャストの一人が、最北の大学で見る夢に興味が湧いた。
神宮の杜に響いた ”東農大伝統の応援”
大会2日目に行われた一回戦の相手は、阪神大学野球連盟から4大会連続10回目の出場となった天理大学。
東京農業大学北海道オホーツク・神宮 僚介(群馬・桐生第一高)投手、天理大・長尾 渉佑(岡山商大付高)投手と、スリークオーター気味の右腕からキレの良いボールを投げ込む同じタイプの投手が先発して始まった一戦。1回表に東京農業大学北海道オホーツクが主導権を握った。
1死から、友寄 恒太(沖縄水産高)選手のヒットを足かがりに一、二塁のチャンスを作ると、4番・良元 優斗(長野・佐久長聖高)選手の右前適時打で先制する。
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初回に4番・良元 優斗(佐久長聖)の適時打で先制-Journal-ONE撮影
得点をあげて意気上がる東京農業大学北海道オホーツクの応援団は、東農大伝統演舞の “大根踊り” でスタジアム全体のモメンタムを得て試合を優位に進めていった。
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東農大の伝統演舞”大根踊り”が球場を沸かせた-Journal-ONE撮影
真夏のような暑さが最北の選手を襲う
130km/h後半の速球を中心に丁寧な投球で、強打・天理大打線の内角に臆することなく投げ込む神宮投手。無失点で序盤を抑えてきた北のエースに降り注ぐ真夏のような太陽が、徐々にその体力を奪っていった。
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3回まで天理打線を完璧に抑えた神宮僚介(桐生第一)-Journal-ONE撮影
4回裏、安打と失策で無死二塁のピンチを迎えた神宮投手は、続く天野 航也(兵庫・報徳学園高)選手の送りバントに素早く反応して三塁封殺。ピンチを脱したかに見えた直後、 ”プロ注” の4番・石飛 智洋(島根・出雲西高)選手に右中間への逆転2点本塁打を浴びる。
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逆転の2点本塁打を放つ天理大の石飛智洋(出雲西)-Journal-ONE撮影
完投能力のある北のエースに容赦なく襲いかかる暑さに、4回二死から二つの四球を与えたところで神宮投手は無念の降板。「元々球数を使って勝負する投手なのですが、やはりこの慣れない暑さにスタミナを奪われてしまった」と、継投のタイミングを振り返った三垣監督。