五輪正式種目の “もう一つの” バスケットボール
2021年の東京オリンピックでは、女子バスケットボール日本代表の銀メダル獲得が大きな話題となった。1975年の世界選手権(現在のワールドカップ)の女子代表以来、オリンピックに限れば男女を通じて初となる快挙。
沖縄県も会場となった昨夏の男子ワールドカップにおいても日本は躍進し、男女ともに出場権を勝ち取った今夏のパリオリンピックはさらなる飛躍が期待されているところだ。
ここ数年で認知度が大きく向上し、野球やサッカーに次ぐメジャースポーツに名乗りを上げようとしている日本のバスケットボールには、新たな潮流も生まれている。
一時人気を博した3on3に由来する”3×3″(スリーエックススリー)は、2007年にFIBA(国際バスケットボール連盟)がルールを整備して誕生。日本国内でも、2013年からJBA(日本バスケットボール協会)が本格的に代表チームの強化を始めたばかりというまだ歴史の浅い競技だが、東京オリンピックからは正式種目となっており、女子日本代表は金メダルのアメリカに、唯一土をつけてにわかに注目を浴びた。
2014年に始まったリーグ、”3×3.EXE PREMIER”
その”3×3″の国内普及という点で大きな役割を果たしているのが、2014年に始まった”3×3.EXE PREMIER“(以下プレミア)というリーグだ。世界で初めて設立されたFIBA承認のリーグとして、男子7チームで始まったプレミアは、2018年に女子カテゴリーも作られ、その翌年にはニュージーランドやタイなどの海外カンファレンスも誕生。10周年となる2024年は5カ国・90チームにまで規模を拡大している。
3on3を含むストリートバスケットが競技の原点となっていることから、試合会場は5人制バスケットのように体育館とは限らず、屋外での開催も多い。コートの広さが5人制の半分しかなく、1個のゴールで試合ができる”3×3″は広いスペースを確保する必要がなく、大型商業施設や駅前の広場などで開催されることがほとんど。
過去には、京都・平安神宮や栃木・二荒山神社の参道、静岡・焼津漁港の一角で開催されたケースもある。1試合の時間が10分と短いため、たまたま通りがかった人が足を止めて観戦しやすいという点は、競技普及の観点からも好材料だ。
6月15日に開催されたプレミア女子カテゴリー開幕ラウンドは、千葉県船橋市にある”ららぽーとTOKYO BAY”の北館1階中央広場で開催。土曜日とあって多くの買い物客であふれる中、熱戦が繰り広げられた。ラウンド優勝を果たしたのは、”FLOWLISH GUNMA.EXE“。新規参入ながら決勝まで勝ち進んだ”TOKYO VERDY.EXE“は、わずか1点及ばなかった。
プレミア女子を支えてきた吉武 忍
ただ、”TOKYO VREDY.EXE“は新規参入といっても、昨年までプレミア2連覇を達成しながらも活動停止したチームをほぼそのまま引き継いだ格好で、選手たちの実績は申し分ない。特に吉武 忍は、プレミア女子カテゴリー誕生以降の全てのシーズンでプレーしている唯一の選手。2014年にJBAが初めて代表チームを国際試合に送り込んだ、いわば初代日本代表メンバーの1人でもある。
前所属チームが活動を終えても、こうしてまた新しいチームでプレミアの舞台に立つことができるのは吉武の実力があってこそだが、リーグ全体を俯瞰すると、既存のチームが定着せず、入れ替わりが激しいという現実もある。それを踏まえ、リーグ全体を活性化したいという想いが吉武にはある。
「プレミアの試合って、誰でも出られるわけじゃない。私たちも居場所がなくなるかもしれなかったのを、VERDYに受け入れてもらったのは本当にありがたいので、結果を残したいというのが正直なところです」。