セーヌ川を舞台に行われた華やかな開会式から約1週間。パリオリンピックの大会後半に入る、8月1日からいよいよ陸上競技が開幕する。今大会には男子35名、女子20名、補欠登録4名(男子3名/女子1名)の合計59名が日本代表に選出された。
競技は、8月1日に行われる男女20km競歩で始まり、全日程の最終日となる8月11日朝に行われる女子マラソンでフィナーレを迎える。今回の陸上日本代表は、「走・跳・投・歩」のすべてに注目選手が存在。過去に例のない好成績を期待できる陣容となっている。
花の都で新たな歴史を刻んでくれそうな選手たちを、ご紹介しよう。
笑顔で世界を魅了する「逆転の女王」。女子やり投:北口榛花
パリ大会陸上競技において、最も金メダルに近い選手といえば、女子やり投の北口榛花だろう。昨年はブダペスト世界選手権で、金メダルを獲得しただけでなく、陸上界最高峰のリーグ戦として世界を舞台に繰り広げられるダイヤモンドリーグで複数回勝利し、最終戦となるダイヤモンドリーグファイナルにも優勝。
67m38へと更新した自身の日本記録は、2023年世界リスト1位を占め、名実ともに「世界女王」となった。パリオリンピックでは、日本女子フィールド種目初となる金メダル獲得を目指す。
今季はダイヤモンドリーグをメインとする海外主要大会に加えて、日本選手権やセイコーゴールデングランプリなどの国内大会も含め、全8試合に出場。
シーズン序盤はオフのトレーニングによって高まった、体力と技術との摺り合わせにやや時間がかかっていたが、五輪本番に合わせて徐々に調子を上げ、7月12日のダイヤモンドリーグモナコ大会ではシーズンベストを65m21まで引き上げている。
この記録は、今季世界リストで5番目に位置するが、リスト1位の記録は66m70。北口の実力をもってすれば、十分に上回っていける水準だ。
記録レベルの高さもさることながら、最終投てきで豪快なアーチを描いて、鮮やかな逆転勝利を収める試合展開も北口の持ち味。「逆転のキタグチ」として、すっかり世界的に認知されるようになっている。
北口当人は、「本当は最初から良い記録を投げておきたいんだけど…」と苦笑いするが、最終試技に向かう時の北口には、”戦闘モード”の高まるスイッチが、カチリと入る瞬間があり、一段と高い集中力を発揮する印象がある。勝負強さを見せつけるビッグアーチと、見ている人を幸せな気持ちにさせる満面の笑顔で、世界中を魅了してほしい。
競歩界初の五輪金メダル獲得へ。男子20km競歩:池田向希
8月11日、午前7時30分。男子20km競歩は陸上競技最初の決勝種目として号砲が鳴る。ここで金メダル獲得に挑戦するのが池田向希。前回の東京大会で、陸上日本勢最高位となる銀メダルを獲得している選手だ。
競歩は前回まで行われていた50km競歩に代わって、今大会は男女混合のリレー種目が導入され、個人種目は20km競歩のみとなった。このため、メダルを巡る争いは一段と激化すると予想されている。
しかし、池田自身も大きくスケールアップを遂げている。五輪代表選考レースとして行われた2月の日本選手権では、世界歴代3位(日本歴代2位)の1時間16分51秒まで自己記録を引き上げるとともに、序盤から先行するパターンにも磨きをかけ、さまざまなレースに対応できる地力をつけた。