北の大地にある全国大会常連の強豪大学
全日本大学野球選手権大会5年連続20回の出場、明治神宮野球大会3年連続5回の出場を誇る強豪大学。東京六大学野球連盟、東都大学野球連盟、関西学生野球連盟など、大都市圏を中心にNPB(日本プロ野球)へ多数のOBを送り込んでいる歴史ある大学を想像することだろう。
しかし、この輝かしい実績を誇る大学は、東京でも大阪でも、はたまた名古屋でも九州でもない日本最北にある大学野球連盟・北海道学生野球連盟に所属する “東京農業大学北海道オホーツク野球部”。6月に明治神宮野球場と東京ドームで開催された、第73回全日本大学野球選手権大会でその戦いを取材したJournal-ONE編集部は、最北リーグの大学でプレーする選手たちのひたむきな姿に目を引かれた。
出場選手名簿を見ると、地元・北海道の甲子園出場経験のある高校から来た選手たちもいるが、関東、近畿、九州、果ては沖縄まで様々な地域から選手が集まっていることに気付く。
チームを率いる同校OBの三垣 勝巳監督も、大阪の名門・PL学園高の出身。今でも語り継がれる歴史的な一戦、1998年夏の選手権大会準々決勝で松坂 大輔氏を擁する横浜高(南神奈川代表)と、延長17回、3時間37分にわたる死闘を演じた経験を持っている。
野球をするに適した気候と言えない北の大地の大学から、どうして毎年のように全国大会に出場できるのか?どうして周東 佑京選手(福岡ソフトバンク)、玉井 大翔投手(北海道日本ハム)のようなNPBで活躍する選手を多数輩出できるのか?
その疑問を解くべく、エスコンフィールド北海道で開催されたプロ野球とアマチュア野球の交流戦 “北海道ベースボールウィーク2024″の取材を終えたJournal-ONE編集部は、一路北海道網走市に飛び、東京農業大オホーツクの活動を取材することにした。
心身ともに成長できるキャンパスの環境
女満別空港から車で約20分、大観山(標高181 m)と天都山(標高151m)の頂上へ向かう道を指す “東京農業大学北海道オホーツク” と書かれた看板に従い、急な山道を登っていくとキャンパスが見えてくる。
近くには、広大なオホーツク海を一望できる人気の観光施設 “オホーツク流氷館” があり、流氷の季節を迎えると、一面に漂う流氷の景色を見ようと海外からも多くの観光客が訪れる人気のスポットにもなっている。
小高い山の上、大きな農場や草原、森を背負う佇まいは、日本にある大学とは思えないほど美しい。豊かな自然に囲まれた広大なキャンパスは、約35万㎡にも及ぶそうだ。町中と結ばれたシャトルバスや、きれいな道路、広い駐車場などアクセスも申し分ない。キャンパス内に入ると、一般市民も四季折々の景観が楽しめる最長5kmに及ぶ遊歩道 “オホーツク・ファイン・トレール” が敷設されており、地域の皆さんにも親しまれるような環境が整えられていた。
このキャンパスの真横に設置された東京農業大北海道オホーツク野球部の練習場。独立した立派な野球場の右中間フェンスの奥に設置された室内練習場には「全国制覇」の文字が掲げられ、全国から集まった選手たちの意識の高さがうかがえる。授業の前後に時間のロス無く野球に打ち込める最高の環境は、選手たちの更なる成長に欠かせない充実した練習環境だが、驚いたのはそれだけではない。