パシフィックネーションズカップ決勝はフィジーに力負け
2012~15年まで指揮を執ったエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が再任した「ブレイブブロサッムズ」こと、ラグビー日本代表(世界ランキング14位)。6月から7月にかけて、イングランド代表(5位)、ジョージア代表(12位)、イタリア代表(8位)と国内で対戦したテストマッチでは3連敗と白星を挙げることができなかった。
その後、8月23日から9月21日まで環太平洋の6ヵ国が参加し、その王者を決める「パシフィックネーションズカップ2024」(PNC)に挑んだ日本代表。予選はプールBで、カナダ代表(21位)にアウェイで、アメリカ代表(19位)には熊谷で勝利し、予選プール1位で準決勝に臨んだ。
準決勝では世界ランキングは1つ格上で、昨年のワールドカップでも対戦したサモア代表(13位)と激突し、49-27と快勝して決勝に進んだ。決勝は6ヵ国中、世界ランキングがトップの10位で、昨年のワールドカップでベスト8に入った強豪フィジー代表と対戦した。
日本代表は前半こそ、10-10で折り返したが、後半、フィジカル、展開力で劣り失トライを重ねてしまい17-41で敗戦し、準優勝で大会を終えた。
PNCでキャプテンを務めたベテランCTB(センター)立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)は「前半、もう少し自分たちで勇気を持って、ジャパンのラグビーができたと思う。そこを10番としてキャプテンとして引っ張れなかったのはすごく悔しい」とコメント。
ジョーンズHCも「セットプレーでもブレイクダウンでも空中戦でも勝てなかった。試合で自分たちが優れていた部分は1つもなかった。私たちがどれほど目標から遠く離れているかを再認識する良い機会になった。ひたすら努力を続けるしかない」と前を向いた。
パシフィックネーションズカップの結果
○日本代表 55-28 カナダ代表
○日本代表 41-24 アメリカ代表
○日本代表 49-27 サモア代表
●日本代表 17-41 フィジー代表
世代交代中の日本代表、超速ラグビーの完成を進める
先発選手の総キャップ数(代表試合出場数)が200に満たない若いチームだった日本代表は、フィジー代表には力の差を見せつけられて、トップ4に向けてはまだ道半ば……という印象は拭えなかったが、PNCを通して見ると、決して悪い点だけではなかった。
6月から7月にかけてのテストマッチ3試合では、ジョーズHCは”超速ラグビー”を掲げていたものの、日本代表は1試合平均2トライ(18得点)しか挙げることができないでいた。
しかし、PNCでは格下との対戦が多かったこともあるが、SH(スクラムハーフ)藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、SO李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)の若きハーフ団がアタックをリードし、CTBディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)が5試合連続トライを挙げた。
大会を通してカナダ戦で8トライ、アメリカ戦で5トライ、サモア戦は6トライ、フィジー戦では2トライと、平均5.3トライ(40.5得点)を重ねた。パス、ランに重きを置いた超速ラグビーが浸透しつつあり、攻撃力は確実に向上したと言えよう。
6月から7月の試合の反省を踏まえて、8月中旬の宮崎合宿ではチーム全体としてハンドリングスキルの向上、相手陣22m内での得点力アップ、FW(フォワード)は近場のブレイクダウンの練習、ラインアウト、BK(バックス)は選手同士の連携強化などに取り組み、その成果がしっかり出た。
ジョーンズHCはPNCを振り返って「ハル(立川キャプテン)のリーダーシップの下で、選手はよりつながりを深め、お互いに協調し合うようになった。チームは強くなったし、ポジティブな文化が育ちつつある。またラグビー面ではいくつかのアタックの場面では本当に素晴らしかった」と前を向いた。
特にジョーンズHCが評価したのは、アメリカ代表戦で後半20分に31-24と迫られてもアタックして突き放したシーンだ。「プレッシャーがかかった中で、選手全員で落ち付いてエネルギーを上げることができ、アタックし続けることができて10点を挙げることができた」と目を細めた。