世界最高峰リーグで躍動するトップチームが立ち上がる

夏季オリンピックで2大会連続の金メダルを獲得し、2028年のロサンゼルス・オリンピックでは3大会連続の金メダル獲得に挑む女子ソフトボール日本代表。昨年、中国で開催された第19回アジア競技大会では6大会連続の金メダルの金字塔を打ちたて、今夏、イタリアで開催されたWBSC女子ソフトボールワールドカップでも金メダルを獲得した。

ロス五輪金メダルを狙う日本代表-Journal-ONE撮影

数あるオリンピック・パラリンピック種目でも、これほど長きにわたり世界トップクラスの実力を維持し続ける競技は数える程しかない。その世界最高峰の選手たちが集まる女子ソフトボールの国内トップリーグ “ニトリJDリーグ“ は11月17日に全ての試合日程を終了したが、所属する16チームの中にはプレーするだけではなく、地域と連携して子どもたちに笑顔と夢をもたらす取り組みも行っている。

去る10月26日と27日、静岡県掛川市のいこいの広場野球場で行われたJDリーグのリーグ戦最終節。Journal-ONE編集部はその取り組みを取材すべく、地元のNECプラットフォームズレッドファルコンズが中心となって開催された “掛川ドリームフィールド” の様子を取材。トップチームを中心に、地元企業やソフトボール協会がタッグを組んだイベントの模様を紹介することで、「地域創生におけるスポーツの果たす役割」について考えていく。

子どもたちのスポーツ機会創出もリーグの重要な役割だ-JournalｰONE撮影

スポーツ界にも影を落とす社会課題に一計を

1990年前後から社会課題として議論されている “人口減少” “少子高齢化” だが、その影響はとどまるところを知らない。今この瞬間にも、労働力不足、社会保障費、地域インフラの維持更新費と深刻な問題がニュースで取り上げられているが、2014年に出された「896の自治体が消滅する可能性がある」という有識者レポートに日本中の自治体、私たち日本国民は大きな衝撃を受けた。

民間有識者で構成される日本創成会議が、2040年までに20～39歳の女性の数が半分以上減少する可能性のある都市を “消滅可能都市” と定義して発表したこのレポート。これに該当する自治体はもちろん、そうでない自治体も「明日は我が身」と様々な施策に取り組んでいる。

活動自治体の域を越えて選手を受け入れる静岡EASTMAX-JournalｰONE撮影

この社会課題はスポーツ界にも影を落とす。子どもたちが減少する地方では競技人口が激減し、スポーツをする機会自体も失われつつある。競技人口の減少は、その競技の人気低迷はもちろん、世界屈指の競技レベルを維持していくことも難しくなってくる。人気低迷は、観戦チケット収入やスポンサー収入に直結し、コロナ禍を経て拡大し続けるインターネット経由でのスポーツ動画配信市場に活路を見いだすも、レッドオーシャンとなりつつある市場でしのぎを削り合っている状況だ。​

そんな中、「本拠地開催を案内するだけでは、中々観客増員に繋がらない」と考えたNECプラットフォームズは、静岡県内で活動する小学生の女子ソフトボール選手たちに狙いを定めた。「JDリーグ開催期間中は、各世代のソフトボールチームも活動シーズン。公式戦や練習試合、地元での練習などが重なるため、トップチームの試合観戦であってもそれに割く時間が無いのです」と、身近なファンへ一計を講じる。リーグ戦の会場である野球場の直ぐ横で、子どもたちのための私設大会を企画したのだ

地元・掛川は多くのファンが詰めかける-JournalｰONE撮影

民間の力で夢の舞台を作り上げる

この取り組みにいち早く賛同したのは、掛川ソフトボール協会だった。日本各地で開催されるリーグ戦は、各地のソフトボール協会が会場設営や運営などを主催チームと一緒に行う仕組み。その仕組みを利用して、今までJDリーグのチームが試合前の練習会場として使用していた15,000㎡ある多目的広場の一部を球場仕様に設営して子どもたちの夢舞台・掛川ドリームフィールドを作り上げた。

JDリーガーが練習する会場後方には茶畑も-JournalｰONE撮影