オープン間もない“猫カフェ”が話題に
猫と同じ空間でくつろぎ、癒される。そんなイメージが浮かんでくる”猫カフェ”のイメージだが、地域特性を活かした保護猫(家や飼い主がいない一時的に保護されている猫)が主役の猫カフェが話題を呼んでいる。

どこかの家のリビングのような店内‐Journal-ONE撮影
首都圏のベッドタウン、多くのマンションや住宅が立ち並ぶ千葉県松戸市に2月にオープンした“保護猫ハウスろくねこ~みんなで作るネコミュニティ~”。約20坪あるどこかの家のリビングのような落ち着いた雰囲気の店舗には、現在5匹の成猫と2匹の子猫が暮らしている。
「オープン当初から、平日も土日もたくさんのお客様に利用していただいて」と話すのは、保護猫ハウスろくねこマネージャーの石山理恵さん。大学院で動物行動学を専攻していた石山さんは、獣医師である夫の実家”ますよし酒店”の経営に携わりながら猫カフェを開業した異色の経営者だ。

保護猫ハウスろくねこマネージャーの石山理恵さん‐Journal-ONE撮影
酒屋さんの情報網からユニークな営業方針を導く
「ここにいる猫は、様々な理由で飼い主を失った保護猫たちばかりです。猫カフェという形態にしていますが、保護猫たちを再び人と暮らす環境に慣れさせて、新しい飼い主に出会える場を作りたかったのです」と、開業のきっかけを教えてくれた石山さん。自身の子育てがひと段落したことを機に、かつて携わっていた保護猫活動のボランティアを一年ほど続ける中でオープンを決めたと話す。

個人が保護する猫の情報も掲示されている‐Journal-ONE撮影
生業の酒屋さんで培った地域の皆さんとのネットワークから、個人で保護猫活動をされている方が多い地域あることを知ったという石山さんは、「さまざまな方が保護している猫たちが、いつでも素敵な飼い主さんに出会えるような場所になれば」と地域の保護猫活動のハブ的な役割ができるカフェを目指している。
そのため、保護猫ハウスろくねこの営業スタイルは“猫ファースト”が特徴。店舗の壁面には、猫たちの住まいであるケージが置かれているが、来店者は中央にある子供が塗り絵やパズルをして遊べる作業机や、小さなテーブルを囲む猫柄の座布団に座って猫が出てくるのを待つ構造だ。

猫ファーストの環境でのんびり過ごす‐Journal-ONE撮影
もちろん、来店者はケージを覗きこんで猫と触れ合うこともできるし、自らケージから出てきた猫に備え付けのおもちゃで遊ばせることもできる。猫用おやつを与えて、猫とコミュニケーションを取る機会も設けられている。「人慣れや住居慣れをするトレーニングとして、普段私たちが生活している家の中のような雰囲気を作っています。お客様も、ご自宅でくつろいでいるように自然に猫と触れ合ってほしい」と、この営業スタイルの意図を石山さんが説明してくれた。

猫用おやつを食べにケージから飛び出してくる‐Journal-ONE撮影
地域特性に思わぬ副次効果も
一方でマンションが多い地域の特性から、「マンションの決まりで、動物を飼いたくても飼えない方が多い地域でもあります。ですから、ここに来て猫と生活する疑似体験をしていただきながら、保護猫活動のことも知ってもらえれば」と、この地域ならではのニーズも踏まえた運営を考えている石山さん。
最近テレビで、保護猫や保護犬の活動をフィーチャーする番組が観られるようになったが、画面で観るよりも実際に来店することで、”自分の街”で行われている保護猫活動の実態をより身近に感じてもらえるようになるだろう。

保護猫活動について体験を通して知ることができる‐Journal-ONE撮影
また、「飼っていた猫と死別した方や、現在猫を飼っている方が、キャットフードなどを寄付していただくケースも出ています」と、石山さんが猫好きのコミュニティが生んだ思わぬ副次効果も紹介してくれた。
