1死を取り、打席に入るのは前の打席で先制スリーランホームランを打っている内藤選手。この緊迫した場面で今度はバッテリーエラー。アリー投手のライスボールが大きく高目に抜けるワイルドピッチで1死二塁、三塁となり、内藤選手との勝負を避けて満塁策をしたリヴェルタ。
この大きなピンチに迎るは、一発のある好打者の藤田選手。果敢にインサイドを攻めるカーダ投手。これに詰まった藤田選手の打球は前進したファースト正面への力ないゴロ。ダブルプレーでピンチを脱したかに見えました。
すると、このゴロがドライブのかかる珍しい打球となり、大川選手のグラブからこぼれ出てしまいます。強烈な回転を帯びた黄色いボールは、すぐ後ろをフォローしていた渡邉選手の手もすり抜けてタイムリー内野安打! リヴェルタにとっては不運な結果となります。
さらに満塁のピンチは続き、打席に入るは藤本選手。149cmと小柄な藤本選手ですが日米代表にも選出されるスピードとパワーを兼ね備えた選手です。インコースを思い切り引っ張った藤本選手の打球は、ファースト大川選手を強襲してライトへと抜けるタイムリーヒット。さらに2点を追加し、6-1と大きくリードを奪って今季3敗と相性の悪かったカーダ投手の立ち上がりを攻略しました。
ここで奪ったモメンタムは渡さないと、早くも4回からビークイーンはマウンドに “世界のエース” 上野 由岐子投手を送ります! 先手、先手とトーナメントでの戦い方を知る岩渕 有美監督の采配にスタジアムからも大きな歓声が起こります。
先頭の塚本 蛍選手が放った強いピッチャー返しをバックハンドで軽快に処理した上野投手ですが、長谷川 優理選手、大川選手に四球、2死を取ったものの下村選手にも四球を与え2死満塁のピンチ。この珍しい投球にスタジアムがざわつき、上野投手を真ん中に岩渕監督と内野陣が集まります。このチャンスを得点に繋げたいリヴェルタ打線でしたが、そこは実績と経験十分の上野投手が後続を抑えて無失点で切り抜けました。
最後まで好プレーで観客を魅了 -終盤
グラウンドコンディションで厳しいディフェンスが続くリベルタですが、市口選手の絶妙のバントをサードの木村選手が猛チャージでセカンド封殺に仕留めるアグレッシブなプレーに、4番・内藤選手を真っ向勝負で三振に切って取るアリー投手の力投など、守備から流れを引き寄せようと懸命にプレーするリベルタの選手たち。
ビークイーンも、ライトの片岡 美結選手がライトファールゾーンへの大きなフライをフェンスに激突して好捕するなど、ベスト4の試合に相応しいプレーで観客を魅了します。
「今日は何をやっても上手く投げられなくて、自分のことで手一杯といったマウンドでした」と話した上野投手も、ひとつひとつ丁寧な投球と好フィールディングでアウトを重ねていきます。
一度火が付いたビークイーン打線は留まることを知らず、5回には市口選手が低めを上手くとらえ、ライト頭上を高々と越えるスリーランホームラン! 6回には藤田選手も豪快にセンターオーバーのソロホームランを放って3本塁打。先発全員の13安打、12得点と猛攻を見せスタジアムを沸かせます。
一方のリヴェルタも、レジェンド・上野投手から5回、6回と1点ずつを返すものの、8点差を付けられたまま最終回を迎えます。最後の攻撃前、「これで終わりにしないよ、これまで1年間積み重ねてきたことをたくさん来てくれているファンの皆さんの前でしっかり見せよう」と話して三塁コーチャーズボックスへ向かった加藤 一秀監督。その檄に応えるリヴェルタ打撃陣が必死に食い下がります。
ツーベースヒットの吉田選手を三塁に進め、木村選手の犠牲フライで1点を還すと、1死でランナーが無くなった展開から、塚本選手の四球と長谷川選手のヒットで再びチャンスメイク。ビハインドを1点でも詰めるべく、着実に得点圏に走者を進めていきます。
2死となり勝負が見えてきた中、渡邉選手の内野安打でもう1点を還したリヴェルタ。加藤監督の期待に応え、最後まで諦めないプレーを見せましたが、ビークイーンの豪打の前に力尽きました。
大勝にも平常心であと1つ -ビックカメラ
リーグ戦で対戦した3試合は何れも1点差で惜敗。鬼門とも言えるリヴェルタ戦を勝利した岩渕 監督は、「濱村投手の調子、打順との相性などを勘案して上野投手に早めにスイッチしました」と、先手、先手でリヴェルタに点差を詰めさせなかった試合を振り返りました。
「マウンドとの相性もあったのでしょう。あれだけ経験のある投手ですし点差も離れていたので、ベンチから見た感じや雰囲気を伝えにマウンドに行きました。試行錯誤しながら良く投げてくれました」と、本来の投球とはいかないながらも好リリーフを見せた上野投手への揺るぎない信頼を口にします。
全員安打で12得点。下位打線にも良い当たりが出たことについては、「(先発全員安打に)そうだったんですね。知りませんでした。」と笑顔を見せつつも、「良いバッティングをしてくれました。ただ打線は相手投手にも寄ります。明日の相手がどちらになるか分かりませんが、明日は総決算なので自分たちがやって来たことを出し切れるように臨みます」と、落ち着いた口調で決勝への抱負を話してくれました。