神宮司廳(伊勢神宮) 広報室 音羽悟広報課長スペシャルインタビュー-Journal-ONE撮影
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取材・文:
Journal ONE(編集部)
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第63回 式年遷宮に向けた地域の思い

「”古式ゆかしい参拝ルートでめぐるお伊勢参り” を伝えていきたい。」と、公益社団法人 伊勢市観光協会が中心となり、来る “第63回 神宮式年遷宮” に向けた新たな取り組みが始動しました。

地元の熱い思いから始まり、全国から参拝者を募集した今回の企画。日本全国から多くの応募が集まり、国内における関心度の高さを示した結果となりました。日本人の心のふるさと・伊勢が持つ人々を惹きつける力に改めて驚かされたこの企画。

また、今後徐々に復活していく訪日外国人旅行者にも神宮参拝の本質を分かりやすく伝え、伊勢で素晴らしい体験をしていただきたいという思いも含んた今回の企画について、神宮司廳と二見興玉神社への独占インタビューが実現。それぞれのお話を伺うことが出来ました。

神宮司廳 広報室 広報課長 音羽 悟さん

- ”古式ゆかしい参拝ルートでめぐるお伊勢参り” を実施しての感想をお聞かせ下さい

先ずは今回、様々な地域から参拝者の方にお集まり頂いたことに感謝しています。20歳代から60歳代と幅広い年齢層の方が集まったことは本当に嬉しい限りです。また、今回の抽選はかなりの倍率であったと聞いております。

神宮は外宮、内宮だけではないんです。伊勢市の約1/4を占める広大な鎮守の森一帯が神宮なんですね。その広大さを、実際に来て、見て、感じて頂くことが大事だと考えています。
神宮参拝の前に身を清めるため、二見興玉神社へ参拝して外宮、内宮と参拝する古くからのならわしを体験頂くことで、その大きさを実感して頂けたのではないかと思います。

神宮司廳(伊勢神宮) 広報室 音羽悟広報課長スペシャルインタビュー-Journal-ONE撮影

- 今回は日本国内の方を中心とした体験となりました。

これからは新型コロナウィルス感染症も落ち着き、外国からの旅行者も増えていくでしょうから、是非多くの外国人旅行者にも参拝して頂きたいですね。今回は、Journal-ONEのイギリス人記者がこの体験に参加してくれましたが、このように日本の方と一緒に興味深く参拝頂けると良いですね。

外国の方に、神宮の広大さを理解して頂けるよう、案内にも工夫をしているんですよ。
例えば、「神宮はパリ市街地と同じくらい広大です」と紹介すると、殆どの外国人はその大きさが直ぐに分かって頂けるのです。ただ、神道の本質を説明するのには苦労をしています。

- 具体的に外国人の方へ神道を説明する難しさは何でしょうか。

参拝に来られた外国の方が、どこの地域や国の出身なのか、どんな宗教を信仰しているかにもよりますが、“目に見えない存在の大切さ” を理解して頂くことが難しいですね。
神道で大切なのは神気です。神様の気を感じて頂くことが大切なんですね。五十鈴川の清らかに流れる音や、木漏れ日、杉の大木が風に揺れるゆらぎなど、神気を感じる何気ない自然の情景に日本人特有の見えない存在への畏敬の念を抱く。これがなかなか理解出来ないと言われることが多いです。

像や建物、絵画などの目に見える存在であれば、そこに畏敬の念は感じやすいようです。神楽殿の建物やその作りには感動されますし、正殿の鰹木には殆どの外国人が興味を持たれています。これはこれでとても良いことだと思いますので、写真映えするところでは写真の撮り漏れが無いようにご案内しています。でも、正宮の近くまで来るとそれ以上奥へは入れない。「ここまで歩いてきて、御神体を見せないのはなぜなのか」と聞かれるのです。

見えない存在にこそ価値があることを分かって欲しいですね。

- 撮影禁止の場所が点在していることにも疑問を持たれるようですね。

撮影禁止の場所は、神様がいらっしゃる場所です。当然、そこは穢れを祓い、清淨化された場所ですので、写真にそれらが吸収されてしまうのではないかという考え方から来ています。
江戸末期から明治初期に西洋文化が一気に広がっていた時代、人がカメラに収まると魂を抜かれてしまうと言われていましたが、こういった考え方が影響しているのかもしれません。

何れにせよ、様々な歴史や文化、宗教観を持つ世界中の人々に日本人の心のふるさとである神宮をもっと知って頂き、実際に参拝して頂くためにも、ご理解頂くための工夫を重ねていく必要があると思います。

- 最後に、参拝にあたりこれだけは知っていて欲しいことを教えて下さい。

「清める」と言うことを知って欲しいですね。神社には手水があり、神様がいらっしゃる場所に入る前に両手を清めます。また、神社の周りには五十鈴川のような清流もあって、その清流を渡ることで身体も心も清めて、綺麗な状態で参拝することが大事です。
加えて、鳥居は神様の領域へ入る入口ですから、一礼してから鳥居をくぐることも忘れないで欲しいですね。

神宮司廳(伊勢神宮) 広報室 音羽悟広報課長スペシャルインタビュー-Journal-ONE撮影

 

 

二見興玉神社 祢宜 尚 孝之さん

- ”古式ゆかしい参拝ルートでめぐるお伊勢参り” を実施しての感想をお聞かせ下さい

この企画に合わせ、今回初めて夜の浜参宮を行いました。ご存じの通り、神社の大切な行事の多くは夜に行われますが、静寂の中で心を落ち着かせて神様に奉仕するその雰囲気の一端を、夜の浜参宮で感じて頂ければ嬉しいです。

また、当日はこの時期(2月初旬)には珍しく、寒さも和らぎ波も穏やかで、満月も観ることが出来た素晴らしい天候に恵まれたことも良かったと思います。

私たちもこの企画に協力させて頂いて、色々と気付かされることがありました。日本の各地からお集まり頂いた参拝者の皆さんが、満足されていれば嬉しいです。
次回は、4月から12月の良い時期に実施できると良いですね。二見興玉神社 祢宜 尚孝之さんスペシャルインタビュー-Journal-ONE撮影

- 今回は日本国内の方を中心とした体験となりました。

外宮、内宮の状況は分かりませんが、ここ二見興玉神社には新型コロナウィルス感染症が流行する前でも、余り外国人の方は参拝に来られていない印象があります。これから徐々に外国からの旅行者も戻ってくるようですから、これを機会に多くの外国人旅行者に参拝して頂きたいです。
Journal-ONEのイギリス人記者が興味深く夜の浜参宮をして頂いていたのを見て、二見地区の魅力がもっと海外に伝わっていけば、世界中の方に参拝頂けるのでは無いかと期待しています。

- 外国人の参拝者が少ないとは、どういった理由が考えられるのでしょうか。

神話にも出てくるように、日本では自然に神が宿るという考え方がありますが、それがどうも想像しづらいようですね。
二見興玉神社には、興玉神石を拝むための鳥居の役目を果たしている夫婦岩があるのですが、日本人ですとこの岩を見て夫婦や親子が寄り添っている様に見えるのですが、外国の方はそう見えないようです。

こう言った日本人の見えないものを想像するといった特性であったり、身の回りの自然に神が宿るという考え方を如何にわかりやすく説明できるかが大事です。

日本の名所旧跡を巡るだけで無く、日本人の心を理解して頂く場として神宮とその周辺地域に注目が集まると、もっと多くの外国人の方が訪れてくれるかもしれませんね。

- 夜間参拝だけでなく、早朝の参拝も気持ちが良いですね。

夜と同様、朝も心静かに波の音を聞きながら参拝して頂けます。心を清めて外宮、内宮に参拝する理にかなったしきたりだと思います。
夫婦岩の間から遠くに臨む富士山を観ることが出来るのも、空気の澄んだ早朝や夕方が多いので、その風景を拝まれるために参拝される方も多いです、

また、二見地域には個性ある旅館やお店なども多くありますので、夜も早朝も動きやすく散策にも良い場所では無いでしょうか。古式ゆかしい参拝のしきたりでめぐるお伊勢参りで日本の原点・伊勢で自然観を知って頂きたいです。

- 最後に、参拝にあたりこれだけは知っていて欲しいと言ったことを教えて下さい。

やはり、神に奉仕するためには「清める」大切さを知って欲しいですね。手を洗う、清潔にするといった気質も日本の神話から来ている風習ですし。
二見興玉神社は、身を清める神宮参拝の玄関口としての役割も果たしています。四季折々の風景が織りなす境内の雰囲気を楽しみながら、身を清めて外宮、内宮へと向かって欲しいですね。二見興玉神社 祢宜 尚孝之さんスペシャルインタビュー-Journal-ONE撮影

 

インタビューを終えて

初めて来日した外国の方が最初に抱く日本の印象に「街がとても綺麗」という感想があります。身を清めることが根底にある日本人の気質が、活きているのかもしれませんね。

音羽さんのお話はとても分かりやすく、優しい語り口に時間を忘れて引き込まれてしまいました。

また、伊勢全体を “神宮参拝者をお迎えする町” と捉え、最初に身を清めるために参拝する二見興玉神社を神宮参拝の玄関口に例えた尚さんのお話もとても興味深いものがありました。

地域の思いで神社さんと一緒に実現した「古式ゆかしい参拝ルートでめぐるお伊勢参り」を知ってもらうこの企画。国内外から注目され、新たな参拝のきっかけになる素晴らしい取り組みですね。

アクセス
①皇大神宮(内宮) ②豊受大神宮(外宮) ③二見興玉神社
  • ①JR名古屋駅-近鉄名古屋駅-近鉄特急(約80分)-伊勢市駅-バス(15分)
  • ②JR名古屋駅-近鉄名古屋駅-近鉄特急(約80分)-伊勢市駅-徒歩(5分)
  • ②JR名古屋駅-快速みえ(約110分)-二見浦駅-徒歩(15分)

 

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