皆さんこんにちは。レポーターのNiinaです。
東京2020オリンピック・パラリンピックの感動から1年が経ちました! 思い起こせば、とても楽しみにしていた自国開催の大会が、コロナ禍で開催すら危ぶまれていたとても辛い時期でもありましたね。
しかし、新型コロナウイルス感染症対策(以下、感染症対策)を行いながら大きな大会を安全安心に開催できたことで、その取り組みは世界中に注目されました。今では様々なイベントでこの対策が活かされていることを考えると、これも東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシーなのだと思います。
そしてやっと、わたしたちの身近なところでも感染症対策を行いながら、スポーツ観戦を楽しむことが出来るようになり、テレビでしか応援することができなかった選手たちを間近で観られる機会が戻ってきました!
今回、東京2020パラリンピックで注目された競技のひとつ “車いすラグビー” のミニ大会が、千葉県千葉市で開催されると聞いてやってきました!
車いすラグビーチーム “AXE(アックス)” 密着取材の2回目に、早くも生で試合観戦が出来るなんて感激です!初めて取材した合同練習のレポートも是非、読んで下さいね。
11月6日に開催された “第3回 千葉ロータリークラブカップ”。
前回の取材で協力いただいた “RIZE CHIBA”、東北から駆け付けた “TOHOKU STORMERS”、AXEによる総当たり戦に加えて、試合の合間には観戦者が車いすラグビーを体験できるイベントもあるとのことで、とても楽しみです!
- スポーツを支えるひとたちの熱い思い ー
早速、千葉ロータリークラブの國吉 晃甲さんにこの大会について伺いました。
「2010年に千葉市に車いすラグビーのクラブチームが出来たことを新聞で知りました。当時の熊谷市長(現・千葉県知事)と “オール車いすフリーの街” を目指そうということで、その象徴としてご当地チームを応援し始めたことがきっかけです。」
なるほど。身近なチームを応援することで、車いすでも住みやすい街にしていこうという取り組みだったんですね!
「2017年に、私が千葉ロータリークラブの社会奉仕委員会長をしていた際、ロータリー財団地区補助金などを用いて、その象徴となる第1回大会を開催しました。コロナ禍で3年ぶりの開催となりましたが、会員の協賛金とボランティアのおかげで自主開催することが出来ました。」と國吉さん。
1951年に創設された国際的な社会奉仕連合団体 “国際ロータリー” のメンバークラブである千葉ロータリークラブは、会員数113名の千葉県内最大のクラブ。
世界大会や全日本選手権が開催される千葉ポートアリーナはもちろん、市内4か所のコミュニティセンターでも車いすラグビーの練習ができる環境を提供されているんです。
こういったスポーツを支えるひとたちの熱心な活動が、世界で戦う選手たちの後押しとなっているのだと改めて感心しました。
― 車いすラグビー観戦のコツを伝授 -
前回の取材では、選手たちと一緒に練習や試合に参加させていただき、俊敏な車いすワークや力と力のぶつかり合いを目の前で見て本当に驚きました。そして今回は初めての試合観戦!より楽しく観戦するコツをAXE代表の岸 光太郎さんに教えていただきました!
「ボールを持った選手を中心とした、オフェンスとディエンスのせめぎ合いはテレビ中継などでも良く目にするシーンだとは思います。でも実際に観戦するならコート全体に目を向けて観て下さい。」と岸さん。2012ロンドン大会、2016リオデジャネイロ大会と2大会連続で日本代表選手を務めた岸さんの熱い解説が続きます。
「ボールを持っている選手とのマッチアップとは別に、ボールを持っていない選手たちがどのような攻防をしているのかに注意して観ながら、次の試合展開を予想する楽しさもあるスポーツなんです。」と岸さん。
確かに、ボールを持っていない選手同士が激しいポジショニング争いをしています。
特に印象的だったのは、東京2020銅メダリストで、10月10~16日にデンマークで開催された “2022 Wheelchair Rugby World Championship” でも見事、銅メダルに輝いた日本代表の今井 友明選手(RIZE CHIBA)と羽賀 理之選手(AXE)が車いすを絡め合わせながら、有利なポジションを奪い合っているシーンです。
「羽賀選手はディフェンスかいくぐり、パスを受けやすい位置に抜け出す技術が高い選手。ですから、ボールから離れたコーナーに抑えつけることで、AXEの得点機会を奪っているんですよ。」と試合後に話してくれた今井選手。
松戸市で開催された羽賀選手のトークショーに飛び入り参加してしまうほどの仲良しなので、試合でもマッチアップしているのかな?と思って聞くと・・・
「羽賀選手はスキルの高い日本代表選手なので、対戦するのが面白いんです。つい熱くなっちゃいますけど!」と笑顔で記念撮影にも応じてくれました。
更に試合中にもスペシャルな解説をいただいた選手が・・・
こちらも、東京2020銅メダリストで同じくデンマークで行われたWorld Championshipでも活躍されたAXEの倉橋 香衣選手です!
ミニ大会とは言え試合中・・・少し遠慮して後ろの方で観戦していたのですが、隣に呼んでいただいて試合の生解説をしていただいてしまいました。
とっても明るい倉橋選手。女性でもプレーできるとは言え、激しいぶつかり合いが絶えないスポーツでもあります。なんで車いすラグビーを選んだかを聞いてみると
「車いすをぶつけても怒られないのがとっても嬉しくて!」と倉橋さん。
「車いす生活になる前は、球技に馴染みがなかったんです。リハビリの部活動体験で色々なスポーツに挑戦したけど、球技スポーツは向かないかなぁって思っていたんです。でも、車いすラグビーは激しいぶつかり合いが迫力あって爽快感があって。チームプレーも面白いですよね。」とハマった理由を教えてくれました。
試合の合間には、AXEの頭脳・岸選手と真剣に戦術について語り合ったり、コートの選手たちに展開を先読みして注意を促したりするその目は、世界で戦うアスリートの鋭い視線にすっかりファンになってしまいました!
また岸選手は「日本代表や元代表がたくさんプレーしているため、常にクラブチームの戦術も世界での戦い方を見て取り込んでいるんです。代表以外の選手もその戦術を理解し、実践することで世界が近くに感じることの出来るスポーツだと思います。観戦もそういった視点で観るとより楽しめるのではないでしょうか。」と、強豪・車いすラグビー日本代表を下支えするクラブチームの面白さも教えてくれました。
― 迫力ある選手たちのプレーに釘付け!会場には凄い方も登場! -
1回目の密着取材で、ハイポインターの俊敏な動きとパスワークはご紹介しましたが、この日もAXEの点取り屋・峰島 靖選手とニック選手の動きは観る人を圧倒させていました。
峰島選手の巧みチェアワークと、ニック選手の豪快なタックルに、会場からは何度も驚きの声や万雷の拍手が湧き上がります!
前回の練習試合体験でも驚いた、RIZE CHIBAの山口 徹朗選手、豪州選抜との対外試合「渋谷カップ」に招請された、TOHOKU STORMERSの橋本 勝也選手との激しい点の取り合いは迫力満点です。
トライ、パス、ディフェンスとハイポインターと共に攻守の要となるミドルポインターは、絶妙な位置取りと素早いチェアワークで観客を魅了します。
日本代表の羽賀選手は、やはり素人の私が見ていても「いいところにいるなぁ~」と思わず手を叩いてしまう職人芸を魅せてくれますが、注目は同じAXEの青木 颯志選手です!
まだ高校生でスタミナも十分ですし、競技歴半年とはとても思えないほどのプレーを魅せてくれました!試合のインターバルでは、中谷 英樹ヘッドコーチから「颯志は残り全部出場ね!」と声を掛けられ、前回の練習でも岸選手や強化選手の乗松 隆由選手からも戦術のアドバイスを一番受けていた”期待の新星”です。
“2022 SHIBUYA CUP” でも日本代表に選出された青木選手。たくさん試合経験を積んで次世代の日本代表を担う名選手になる道のりを応援していきたいです。
そして、常にフィールド全体を見渡して布石を打ち続ける頭脳戦を展開するローポインターのプレーにも歓声が集まります!
いつも明るく話しかけてくれる、乗松選手はディフェンスだけでなく、自らもトライを狙える特異な能力を持つ選手。相手のハイポインターの進路を先読みして「そこに居たかぁ~」と思わず唸ってしまうポジショニングも絶妙で、フィールド内の戦略家といった印象です。
また、今回初めてお会いした山口 貴久選手も2016リオデジャネイロ大会の銅メダリストだけあって、素晴らしいパスワークで会場を湧かせます。
「ノールックでパスカットしたり、味方にパスを通したりと、目が後ろに付いているかのようなプレーが凄いんです。」とマネージャーの一瀬 優月さんが教えてくれたとおり、全く後ろを見ずに相手のパスをはたき落したシーンには会場から拍手が巻き起こりました!
「山口さんは頭の後ろにセンサーが付いているんですよ!」と試合後に峰島さんが笑って教えてくれましたが、当の山口さんは「企業秘密です。」とにっこり。次はその秘密をじっくりと取材したいと思います。
前回のインタビューでローポインターの魅力を教えてくれた小川 晃生選手と橋本 惇吾選手は、ディフェンスを妨害して味方のハイポインターの進路を確保したり、トライさせないよう進路コースを塞いだりと、常に先を読んでの動きでチームに良い流れをもたらす役目を果たしていました。
試合後、橋本選手は「自分のプレーの醍醐味をたくさんの観客に見てもらえて良かったです。」とファンの声援が力になったと笑顔で話してくれました。
そして、試合中ふと周囲を見渡すと・・・なんと!日本代表ヘッドコーチのケビン・オアーさんが鋭い視線で選手たちの動きをチェックしている!?
「ケビンはいつも選手の状態を把握するため、ふらっとミニ大会や練習に来ることが多いんです。アメリカから飛行機で・・・」と岸さんが言うとおり、誰もケビンコーチに驚くことなく試合が進んでいきました。
11月19日~20日に開催される “2022 SHIBUYA CUP” に向けての視察でもあるのでしょうが、試合の合間にご挨拶をさせていただいたケビンコーチはとっても優しくて笑顔が素敵な方でした。
しかし、日本代表ヘッドコーチやパラリンピアン、メダリストが我が街の体育館でしかもこんな近くで観られるとは本当に貴重な体験ですね。2年後に迫ったパラリンピック・パリ大会に向けて、私ももっと車いすラグビーや選手、スタッフの方を近くで見続けたいと思いました。
― 車いすラグビーにハマるさまざまな理由 -
既に車いすラグビーに魅了されている私ですが、スタッフの皆さんはどういった経緯でチームに参加したのでしょう?
今回初めてお会いしたマネージャーの一瀬さんにお話を聞きました。
「私は所沢にある国立障害者リハビリテーションセンター学院の義肢装具科に在籍する学生なんです!」と本当に明るく自己紹介を始めた一瀬さん。「入所されている方がリハビリでさまざまスポーツを体験するためいに部活動があるんですが、そこに見学に行ったことがきっかけです。学校で学ぶだけでなく、こういった活動をガッツりやってみるのも経験だと思って色々な部活動を見学していたのですが、車いすラグビーにハマってしまいました。」と競技との出逢いも話してくれました。
車いすラグビーにハマった理由については。「激しくぶつかる音や衝撃はもちろんですが、タイヤが焦げる音や、障がいの種類に応じて選手たちが工夫して最高のパフォーマンスを観せるところが本当に面白いです。車いすのこぎ方ひとつだけ見ても筋肉の使い方が千差万別で、そういったことに気付くととっても楽しいです。」と一瀬さん。
義肢装具士を目指す未来の技術者の視点に感心しただけでなく、義肢装具の勉強にも興味が湧いてきました!
一方、メカニックの川畑 亮輔さんは「東京2020の試合をテレビで観て感動してしまって・・・何とか自分もこのスポーツに携わりたいと思って、AXEに入れてもらったんです!」と、その行動力に驚きました。
一緒に試合中の車輪交換やパンク修理をしていたスタッフの島崎 洸史さんは「子どもが中学1年生で(5年生の時から)車いすラグビーをしているんです。子どもの車いすラグビーを見ているうちに、自分もこの競技に携わってみたくなってAXEに入れてもらったんです。」と家族で楽しむスポーツとして車いすラグビーを選んだことを教えてくれました。
3人とも、試合を真剣な眼差しで見つめ、試合を盛り上げる声かけをしたり、選手を素早くサポートしたりと心から車いすラグビーを楽しんでいる様子が良く分かりました。
優勝したAXEを代表して羽賀選手が「これからも、車いすラグビーをみんなで盛り上げていきましょう!」とコメントしたように、車いすラグビーは、活躍の場を提供するささえる人たち、最高のパフォーマンスを見せる選手たち、そして試合観戦や競技体験を通じて応援する人たちが一体となって育むスポーツであることが分かる取材となりました。
次は、いよいよ国際親善大会 “2022 SHIBUYA CUP” をレポートします!
日本国内だけでなく、世界中の人たちと楽しむ車いすラグビーの魅力を引き続きレポートしますので楽しみにしていて下さいね。