取材・文:
ペインツェル 仁衣那(ガーナ/日本)

皆さんこんにちは。レポーターのNiinaです。

7月に国立競技場で開催された「東京2020オリンピック・パラリンピック1周年記念セレモニー」をレポートし、8月には有明アリーナで開催された「東京2020パラリンピック1周年記念イベント」の車いすバスケットボール・エキシビションマッチもレポートしました。

そして今回、ひとつのスポーツを深く掘り下げ、その魅力を皆さんと共有していく新しい企画を始めることになりました!
最初のスポーツは、東京2020パラリンピックで注目された競技のひとつ「車いすラグビー」です。プレーする選手たちは勿論、チーム活動を支えるスタッフの皆さん、国内・国際大会などを運営する皆さんや試合の様子をJournal-ONE独自の視点で紹介していきます。

車いすラグビー

パラリンピック・パリ大会に向け、もっと「車いすラグビー」を好きになって、日本代表と国内でプレーする選手たちを応援できるよう、いろいろなことを教えてもらおうと思います。

パラリンピック・リオデジャネイロ大会、東京大会と2大会連続で銅メダルに輝いた日本代表!10月10~16日にデンマークで開催された、「2022 Wheelchair Rugby World Championship」でも見事、銅メダルに輝いたんですよ!
常に世界の頂点を争うレベルのスポーツは、どういった選手たちが。どういった環境でプレーしているのか?

「車いすラグビー」をもっと知るために、2022年度に「車いすラグビー」クラブチームとして登録されている9チームのひとつ、2007年から関東で4番目に発足した「AXE(アックス)」さんを密着取材をさせていただくことになりました!
今回は、AXEさんが主催された練習会をレポートします。

- パラスポーツ専用施設で初・取材! -

10月15日、初めての取材をするため、東京都「お台場」の一角にある「日本財団パラリンピックサポートセンター(日本財団パラアリーナ)」にやって来ました。
2018年に竣工した日本財団パラアリーナは、パラスポーツ専用の体育館!東京2020パラリンピックを目指すパラアスリートの皆さんの練習施設として建設されたとのこと。
バスケットボール2面分の体育館、シャワー室付き更衣室、会議室、トレーニングルームなどが整備されています。
お台場といえば、アミューズメントやショッピング施設、レインボーブリッジや砂浜のある公園で知られる東京屈指の観光名所ですが、パラアスリートの皆さんがさまざまなスポーツを楽しむスポットでもあるんですね!

取材前、車いすラグビーを観戦したことがなかった私は、どのような競技なのかワクワクしていた反面、知らないことばかりで選手の皆さんに迷惑をかけてしまうのではないかとドキドキしていました。
でも、練習前に密着取材のご挨拶をさせていただくと、選手の皆さん本当に優しく、そしてとても明るく私を迎えてくださいました!

先ずはチームの代表・岸 光太郎さんが、準備をしながら練習の流れを説明してくれました。
岸さんは、チームの代表として様々な活動の企画や準備、メンバーとの連絡を取りながら、自らも選手としてプレーしているんです。しかも岸さん、パラリンピックではロンドン大会とリオデジャネイロ大会で日本代表に選出されていて、リオデジャネイロ大会の銅メダル獲得に貢献されたんです!

そんな凄いアスリートにお世話をしてもらって申し訳ないな・・・と思っていたのですが、とても面倒見が良い方で、ご自分の準備ルーティンをひとつひとつわかりやすく説明してくれました。

特に、一般車いすから競技用車いすに乗り換える際は、脚立を改造した特性の「乗り換え台」に身体を預けながら・・・
「スタッフが女性なので、担いでもらって乗り換えるのはとても大変なんです。出来るだけ労力をかけないよう、こういった道具を工夫して作って手間を減らしているんです。」と教えてくれました。

身体を脚立に預けた際、後ろにひっくり返らないよう前傾させた天板や、握力が無くても脚立を掴めるための手首が通せるロープ状の持ち手など、工夫されたポイントが幾つもありました。
車いすを乗り換えるのにこのような苦労があるとは知らず、とても勉強になりました。

岸さんはアップ中、合同参加していた「RIZE CHIBA」の選手たちと談笑をしたり、AXEの選手にテクニックや戦術のアドバイスを送ったり、常に全体に目を配らせています。
私にも練習中、車輪でボールを上手に拾い上げるコツを教えてくれたり、練習試合では戦術のポイント解説してくれたりと、目が後ろにも付いているのでは?と思うほど気遣っていただきました。

- 競技用車いすに乗って、選手と一緒にプレーを体験! -

話を聞くには先ずは体験から・・・ということで、早速競技用の車いすをお借りして、体験しながら取材をすることになりました!
お借りしたのは、ディフェンス用の車いす。見て下さい!パンパーが凄い前に突き出しています。

「僕たちのようなローポインター(障がいの重い選手)は、動きがどうしても遅くなるため、このような突き出したパンパーのあるチェアを使い、相手のチェアを引っかけたり進攻を妨害することで、得点を簡単に与えないようにするんですよ。」と、日本代表の強化指定選手である乗松 隆由(たかゆき)選手が教えてくれました。

乗松さんは先月、私が住む千葉県松戸市のイベントに、同じチームの日本代表・羽賀 理之(まさゆき)選手と参加してくれたばかり。今回のご縁もあって、乗松さんとは意気投合です!
一緒に試合に出させてもらった際、ボールを持った選手に乗松さんと一緒にディフェンスしたのですが、乗松さんは相手の車椅子にバンパーを巧みに引っ掛け、とてもうまくガードしてました。

「ローポインターのプレーの醍醐味は、動きの速いハイポインターの進路を止めたり、攻撃のルートを遮断したりするところ。ボールを持っていない場所での攻防も試合観戦の楽しみのひとつですよ。」と、ツウな観戦のコツも教えてくれました。

私は車いすの操作が難しくて全くディフェンスになりませんでしたが、試合などの激しい動きでなければ、女性の力でも簡単に前後左右、回転と小廻りが効いて自由に動けます。
また、座面は小さめでしっかりと固定されていて、車いすが身体の一部のようにフィットする乗り心地でした。フォルムも近未来の乗り物みたいでとってもカッコイイ!

試合中の激しい攻防に “パン!” という大きな音が鳴り、試合が中断しました。同じディフェンスの小川 晃生さんのタイヤがパンクしたのです。
急いでコートアウトすると、コートの片隅にはたくさんの車輪が用意してありました。
スタッフの坂井 亜由美さんと太田 知子さんが慣れた手つきでタイヤを交換し、それが終わると小川さんも直ぐにコートに戻っていきました。

練習の合間、小川さんと話をしたのですが、仕事の関係でしばらく車いすラグビーから離れていたとのこと。
「私のように週5日フルタイムで働いている選手、倉橋さん(倉橋 香衣選手)や羽賀さんのような日本代表選手、乗松さんのようなアスリート契約で働く選手など、本当にいろいろなバックボーンを持つ選手たちが集まっているのがAXEなんですよ。」と小川さんがチームの構成を教えてくれました。

「体力的にも技術的にもついて行くのは大変ですが、これからも趣味として続けていきたいですね。」と控えめに話す小川さんでしたが、ブランクもフルタイム勤務による練習不足も感じさせない動きにビックリしてしまいました。

小川さんと同じくローポインターの橋本 惇吾さんも、激しいポジション取りのディフェンスでタイヤが浮き上がりました! 凄い迫力です。
次の取材では、橋本さんにもディフェスの魅力を聞かせていただこうと思います。

- 支えるひともプレーヤー! -

再びコートの外に目を向けると、坂井さんと太田さんがたくさんのタイヤに囲まれて何かやっています。近づいてみてみると・・・ 手際良くパンク修理をしています!

「選手ひとりひとりが自分のスペアタイヤを持っているんです。パンクは日常茶飯事で、スペアを使いながら直ぐに次のパンクに備えて修理しておくんですよ。今日は全然(パンクが)少ない方です。」と太田さんが、自転車屋さん顔負けの手つきでパンク修理材を塗りながら説明してくれました。

練習前の準備や試合中のアシストなど、常に動き回っているふたりは何がきっかけでこの競技を知ったのか不思議に思い尋ねてみると・・・

「私は、リハビリの仕事をしているのですが、そこで車いすラグビーをしている方に誘われて見に来るうちにハマっちゃいました。」と、坂井さん。
太田さんも、「友だちに誘われて・・・」と、車いすで生活される人たちとの関わりが多い日常で、自然とこの競技の魅力に気付かれたと話してくれました。

多様性の時代といわれる現代ですが、私は車いすで生活する方との接点がありませんでした。坂井さんと太田さんとお会いし、多様性の社会は心の温かい人たちを育む社会なんだなぁと感じました。

車いすラグビーのルールも、さまざまな障がいを持つ方が参加できる多様性のスポーツであることに感心しました。
障がいの重さにより3.5点〜0.5点までのポイントが選手に付与され、合計値の制限内でチーム編成をしなければならないため、様々な障がいを持った方がチームを組んでプレーします。女性は体力差を鑑みてさらに優位なポイントが与えられますので、性別も関係なくプレーできます。
ポイントに応じて選手の役割があって、連携して点を取ったり防いだりとめまぐるしくコートを動く皆さんは、とても楽しそうにプレーされていて本当に素晴らしいスポーツだなぁと思いました。

- テンポの良い試合展開に欠かせないキープレーヤーたち! -

そして、ポイントゲッターとして終始コートを縦横無尽に動き回っていたのが、峰島 靖さんと、コバック ニコラス ポールさん。

峰島さんは持ち点3.5、ニックさんは持ち点3.0のハイポインター。ディフェンスとオフェンスの切り替えがとても早く、このふたりにボールを集めることが得点に繋がるため、味方はパスを通そうとしますが、コースを読んだ相手チームのディフェンス陣がその進路を阻むという攻防が観ていて楽しいです。

峰島さんは、ディフェンスのガードを先読みして回避したり、塞がれた進路から180度急転回して隙間を素早く通り抜けたりと、視野の広さとチェアテクニックは目を見張るものがあります。

ニックさんは、スピードは勿論ですが、ディフェンスのタックルが凄い!
練習や試合の合間は、ジョークを交えたフレンドリーな会話で私の緊張を和らげてくれたニックさんですが、試合中は全くの別人(笑)。
凄い勢いで相手に突進し、ドカン!という大きな音と衝撃をあげるニックさんのタックルは、側に居なくてもその威力が伝わってきます。

記者がタックル体験をした動画がInstagramにありますので、こちらを観て下さい。一瞬、車いすが浮き上がり、身体が後ろに持っていかれる様子が良く分かりますよね?
「マーダーボール(殺人球技)」の異名があるだけあって、本当の試合ではもっと激しいぶつかり合いが観られるのでしょうから、生の試合観戦が楽しみです。

ハイポインターと同じく、オフェンスもディフェンスも素早く対応するミドルポインターのプレーも見応えがあります。

青木 颯志さんは。競技を始めてまだ半年というのに、峰島さんやニックさんと同じくらいの運動量で攻守に活躍していました。
「同じミドルポインターの日本代表・羽賀さんを目標に、もっと上手くなりたい。」と話す青木さんには、チームの皆さんも期待されているようで、戦術やポジション取りなど場面場面で先輩たちが的確にコーチしていました。

- 初めて間近で見て、体験した車いすラグビーに感動! -

デンマークで銅メダルを獲得した「2022 Wheelchair Rugby World Championship」日本代表の倉橋さん、羽賀さんの他、パラリンピック・リオデジャネイロ大会で銅メダルを獲得した山口 貴久さんも、AXEのメンバー!
次の取材でお会い出来ることを楽しみにしています。

今回、初めて車いすラグビーを体験させていただきましたが、早くもその素晴らしさに魅了されました!
AXE、RIZE CHIBAの選手、スタッフの皆さんの優しい振る舞いにとても嬉しい気持ちになりましたし、チームの垣根を超えて楽しそうにスポーツをされている姿がとても印象的でした。

これからもっといろいろとお話を聞いて、車いすラグビーの素晴らしさを読者の皆さんと共有したいと思います。
次のレポートも楽しみにしていて下さいね。

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