Wheelchair Rugby Freedom×AXE合同練習in高松市 -Journal-ONE撮影
取材・文:
Journal ONE(編集部)

2016年のパラリンピック・リオデジャネイロ大会、東京2020と2大会連続の銅メダルに輝いた “車いすラグビー”。その魅力をレポートする企画!
Journal-ONEでは、チーム「AXE」の密着取材を通じて、競技の魅力はもちろん、選手や皆さんが楽しく取り組む姿や、車いすラグビーを応援する地域の皆さんの優しさにもふれてきたこの企画ですが、今回は特別編をレポートします!

四国・香川県の高松市で開催された合宿の主催チーム「Freedom」の皆さんを紹介する機会をいただきました。合同合宿の様子もレポートしていますので、併せて読んでいただけると嬉しいです。Wheelchair Rugby Freedom×AXE合同練習in高松市 -Journal-ONE撮影

11月25日から3日間で開催された、高知県を活動拠点とするFreedom主催の合宿。密着取材中のAXEが参加するという話を聞きつけ、香川県高松市にやって来ました。
早速、代表の渡邉 翔太選手にお話を聞きました。実は渡邉さんを取材するのは今回が3回目なんです! 最初は、お台場にあるパラアリーナで初めてAXEを取材した練習会、次は11月19日、20日の2日間で開催された三井不動産 2022 車いすラグビー SHIBUYA CUP。これに続いての取材となります。
「私たちFreedomは、高知県が活動拠点なのですが選手の半数近くが県外に住んでいるため、なかなか全体での練習ができません。ですから、2ヶ月に1回程度はこのような合宿形式で練習を行う機会を設けているんですよ。選手同士の連係プレーを確認したり、AXEさんのような別のチームを招いてゲームを行ったりと工夫しながら活動しています。」と渡邉さん。東京で活動している渡邉さんが、高知県を活動拠点とするチームの運営を企画するのは並大抵の苦労ではないなと想像します。しかし、チームのことを話す渡邉さんの充実した表情が「それは苦労に入らない。」と語っています。日本代表として自らのスキルに磨きを掛けつつ、チーム運営を通して車いすラグビー界の盛り上げにも尽力するそのバイタリティに感心してしまいました。Wheelchair Rugby 2022SHIBUYA CUP日本代表 渡邉翔太選手(Freedom) -Journal-ONE撮影

Freedomでひときわ存在感を放つ選手がいます。池 透暢(ゆきのぶ)選手です。
東京2020で日本代表のキャプテンを務めた池さんの、海外の選手にも当たり負けしない大きな身体と素早いチェアワークで日本を銅メダルに導いたシーン! テレビの前で応援していた皆さんもその活躍がしっかりと脳裏に焼き付いていることと思います。
この取材で、テレビ観戦では分からない池さんの魅力を発見してしまったんです。後で紹介しますのでお楽しみに。Wheelchair Rugby 2016リオパラ・東京2020パラ銅メダル 池透暢選手(Freedom)-Journal-ONE撮影

続いては、Freedomで最も運動量が豊富な選手・白川 楓也選手を紹介します。
白川さんは、渡邉さんと共にSHIBUYA CUPに日本代表として選出された次世代のエースなんです!屈強なオーストラリア代表選手たちの間をすり抜けるようにトライを積み重ねていた白川さん。合宿ではほとんど交代なしでコート上を駆け回っていた様子に、この人のスタミナってどうなっているんだろう・・・と不思議に思うほどのタフネスです。
「久しぶりのチーム活動だったので、最初はプレーが上手く連動できずに苦労しました。でも、途中から良い感じになってきたので、この調子で(日本選手権の)優勝だけを狙っていきます!」と力強く語ってくれた白川さん。普段は高知市内で、池さんと森澤 知央(ちお)選手との少人数での練習が多いとのことですが、「池さんのレベルの高い練習を少ない人数でこなしていくと、自然と個々の実力が上がっているように感じます。池さんのメニューはキツいですけどね(笑)。」とハードな練習後にもかかわらず余裕の笑顔で話してくれました。Wheelchair Rugby 2022SHIBUYA CUP日本代表 白川楓也選手(Freedom) -Journal-ONE撮影

Wheelchair Rugby 2022SHIBUYA CUP日本代表 白川楓也選手(Freedom) -Journal-ONE撮影

県外在住者で関西から参加しているのは、京都の松岡 幸夫選手、大阪の崎山 忠行選手です。アスリート契約で仕事に就きながら、工夫している日々の活動を教えてくれました。
「普段はジムでトレーニングをして、ローポインターとしては珍しいロングスローのテクニックを磨いています。」と松岡さん。「こんな年寄りでもアスリート契約してくれる会社に感謝し、チームのためにできることをやっています。特に誰よりも声を出してチームを鼓舞したり、プレーの展開をみんなに教えていくことを心がけていますよ。」とユーモアたっぷりに話す松岡さんでしたが、プレー中は同じローポインターの森澤さんと戦術面の情報を共有したり、“目標とする” 羽賀さんにプレーのコツを聞いたりと常に忙しそうな姿が印象的でした。Wheelchair Rugby 松岡幸夫選手(Freedom) -Journal-ONE撮影

崎山さんは、ツインバスケットボール選手との二刀流で活躍する選手!「ツインバスケも面白いですけど、ラグビーでラグ車をぶつけ合うとスカッとしますよね!」と車いすラグビーならではの魅力を教えてくれます。普段は、ツインバスケの練習や筋トレで鍛錬をしているとのことですが、「坂道スロープをラグ車でダッシュしたり、バトルロープ(2本の太いロープを動かして筋肉を鍛えるトレーニンググッズ)を使った全身を鍛えるトレーニングも取り入れていますね。」と、工夫を凝らしたトレーニング方法も教えてくれました。Wheelchair Rugby 崎山忠行選手(Freedom) -Journal-ONE撮影

鳥取県米子市から参加しているのは、角 佳樹選手です。
地元の病院でシフト制のフルタイム勤務をしている角さんの活動は、「体育館で1時間半程度の自主練習や、父とのトレーニング、車いすの走り込み、ユーチューブでの研究などいろいろと工夫しています。」とのこと。同行していたお父さんも「中学くらいまでは野球とか陸上とかいろいろなスポーツにチャレンジしていましたね。車いすラグビーを紹介されて、Freedomの見学に行ったらその魅力にとりつかれて直ぐに加入してしまいました。」と劇的な車いすラグビーとの出会いを思い出して話してくれました。
「私は、この競技では珍しい先天性脳性麻痺(まひ)でプレーをする選手です。病気の性質上、どうしても手足の動きが一瞬遅れてしまうため、上手くプレーが出来ないことがあります。」と話す角さんにとって、セットプレーの練習が出来る合宿は実力を高める大切な機会とのこと。つきっきりでコーチする池さんも、「彼の障がいで車いすラグビーをやっている選手はいないので、その苦労は計り知れない。それでも一生懸命プレーする姿は本当に素晴らしい。」と角さんのプレーする姿勢を賞賛していました。Wheelchair Rugby 角佳樹選手(Freedom) -Journal-ONE撮影

男女混合の珍しいスポーツである車いすラグビー。果敢に挑戦を続ける女性アスリートがFreedomにも在籍しています。高知県に住む森澤 知央(ちお)選手です。
普段は高知市内で、池さん、白川さんと練習を重ねる森澤さん。日本代表と一緒に日々激しいトレーニングに励む森澤さんの競技歴はまだ数ヶ月と聞き、ビックリです!
「まだまだやるべきことが多いので、池さんや白川さんと一緒に練習をできる恵まれた環境に感謝しています。」と森澤さん。同行していたお母さんも「車いすラグビーをやると聞いたときはビックリしましたが、娘がやりたいということは応援しています。競技を始めてから色々なことに前向きになってきましたしね。」と森澤の活躍に目を細めます。
現在、運転免許の取得にも励んでいる森澤さん。憧れの選手・AXEの倉橋 香衣(かえ)選手にも積極的に話しかけて、色々なことを教えてもらっているようでした。Wheelchair Rugby 森澤知央選手(Freedom) -Journal-ONE撮影

Wheelchair Rugby Freedom×AXE合同練習in高松市 -Journal-ONE撮影

香川県高松市の合宿では、FreedomとAXEの対戦型の練習に多くの時間が費やされました。(合同合宿の様子も詳しくレポートしています。)
その中で、ひときわ存在感を見せていたのが池さんです。東京2020日本代表のキャプテンとして銅メダルに導いたキャプテンシーを、テレビ観戦では知ることのできないシーンが合宿で見ることができました。セットプレーはもちろん、基礎練習でもひとりひとりの動きに目を配り、アドバイスや指示を的確に出していく池さんの姿です。
AXEのハイポインター・峰島 靖選手と激しくぶつかりながら、他の選手たちに常に目を配って的確にポジショニングや対応の仕方をコーチしていきます。自分もプレーしているのに、なんでそんなに周りが見えるのでしょうか・・・
「それが仕事ですから(笑)」と優しく微笑む池さん。「Freedomにはいろいろな障がいを持つ選手がいます。その選手たちの特長を互いに共有することでプレーの精度は上がっていくんです。」と、自らだけでなくチーム全体でプレーする大切さを教えてくれました。
次世代を担う、渡邉さん、白川さんも池さんの指示に呼応するように、周りのチームメイトの特長を把握しながら、自分のプレーが活かせるように心がけたプレーが目立ちます。
名選手の遺伝子は、こういったチームの活動の中で受け継がれていくのですね!Wheelchair Rugby 2016リオパラ・東京2020パラ銅メダル 池透暢選手(Freedom)-Journal-ONE撮影

選手の特長を活かした戦術を説明する池透暢選手(Freedom)-Journal-ONE撮影

選手たちだけでなく、スタッフの皆さんもさまざまな地域から集まってきたようです。
今回の合宿に参加している杉本 麻美さん、榎本 美紀さん、山本 彩歌(さやか)さんは、それぞれ鳥取県、大阪府、高知県からこの合宿に参加しているんですって!
鳥取県倉吉市から参加している杉本さんは、「高知県で行われた講習会に参加した際、講師の方からFreedomが鳥取で合宿するという話を聞き、鳥取合宿で初めて車いすラグビーを間近で見たんです。その後、何回か関西のチームに見学に行ってスタッフや選手からいろいろお話を聞く中で、競技やチームにより深く関わりたいと思うようになってスタッフになりました。」とハマったきっかけを教えてくれました。
大阪府東大阪市に住む榎本さんも、劇的な車いすラグビーとの出会いがありました。
「私は、2011年にテレビで放送された車いすラグビーを題材にしたドラマを見て興味をもちました。車いすラグビーの活動について調べていたら、たまたまその時に住んでいた家から10分ほどの場所で練習をしているチームがあると知って・・・ 1度見学をしたらあまりの迫力にハマってしまいました。」と、榎本さんがドラマの題材になりそうな出会いのストーリーに驚いてしまいました。Wheelchair Rugby Freedom×AXE合同練習in高松市 -Journal-ONE撮影

Wheelchair Rugby Freedom×AXE合同練習in高松市 -Journal-ONE撮影

Wheelchair Rugby Freedom×AXE合同練習in高松市 -Journal-ONE撮影

また、この合宿で “新たな出会い“ も生まれました。
車いすラグビーの体験に訪れた、尾崎 友香里さんと、長谷川 尊さんのお二人です!
お二人とも、香川県で開催された将来オリンピック・パラリンピックなどの国際競技大会に出場してみたい若いアスリートの夢を応援し、世界で輝く未来のトップアスリートを発掘するプロジェクト「J-STARプロジェクト」に参加し、車いすラグビーを紹介されたとのこと。
「東京2020で車いすラグビーをテレビで見ていて、激しいスポーツというイメージがありました。」とツインバスケットボールをしている尾崎さんが印象を語ります。「実際に練習を見学し、プレーがめっちゃ速くてぶつかる様子が凄いなぁって思いました。」と目を輝かせる表情は、日本代表を目指すアスリートです!Wheelchair Rugby Freedom×AXE合同練習in高松市 -Journal-ONE撮影

「今日は体験ができて本当に良かった。ぶつかったときの衝撃は予想以上でしたね!」と長谷川さんも楽しそうに感想を教えてくれます。「高校では陸上競技で、50m走や投てき競技をしていました。チームスポーツをやってみたかったので、車いすラグビーはとても魅力的ですね。」と早くも入団に前向きな発言です。現在はフルタイム勤務で働く長谷川さんですが、「香川県でアスリート契約をしているパラアスリートもいるので、僕もそれに続いて世界で活躍できる選手を目指したいです。」と新たな出会いに期待を膨らませていました。Wheelchair Rugby Freedom×AXE合同練習in高松市 -Journal-ONE撮影

香川県高松市 文化・スポーツ部 スポーツ振興課の尽力で開催に至った今回の高松合同合宿。詳しいレポートも紹介しています。
地域が支える車いすラグビーの輪。日本全国でこのような素晴らしい取り組みや、素敵なチームが増えていけば、競技レベルだけではなく地域の活性化にも繋がっていくことが期待されますね。Wheelchair Rugby Freedom×AXE合同練習in高松市 -Journal-ONE撮影

アクセス
高知県立障害者スポーツセンター
  • 高知駅~バス・ハビリセンター下車

 

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