ラグビーワールドカップ2019の興奮再び
日本で初めて開催された “ラグビーワールドカップ2019”。自国開催で史上初の8強入りを果たした日本代表。“ONE TEAM” が流行語大賞にもなった前回大会の興奮が帰ってきました!
“ラグビーワールドカップ2024フランス大会” 開幕まで2か月となった7月8日、日本代表が秩父宮ラグビー場に強豪ニュージーランド代表のセカンドチーム “オールブラックスXV(フィフティーン” を迎えての対外試合に臨みました。
ワールドラグビー男子の最新ランキングで10位の日本が、セカンドチームとはいえ同3位のニュージーランド・オールブラックス相手にどんな戦いを見せてくれるのか?
W杯フランス大会では、チリ、イングランド、サモア、アルゼンチンと戦いベスト8に進出することが至上命題。同6位のイングランド、同8位のアルゼンチンと格上相手の勝利が絶対条件となるだけに、オールブラックスXVとの一戦はとても貴重な “腕試し” と言ったところです。
試合開始の午後5時から遡ること3時間。既に秩父宮ラグビー場には、“桜のジャージー” を身にまとった多くのファンが詰めかけています。先月、Journal-ONEが独占インタビューした日本ラグビーフットボール協会の土田雅人会長が “一番目に見えて分かるW杯2019のレガシー” と話していた光景が目の前に広がります。
スポンサーのPRブースや、公式ストアで行われているW杯フランス大会を盛り上げる催しにも長蛇の列。コロナ禍を克服し、ラグビー観戦を待ちわびた人たちで試合前から熱気に包まれていました。
対戦相手のオールブラックスXVとは
“XV” という余りお目に掛からない文字に、Journal-ONE編集部でも「エックスブイって何?」と話題になりました(笑)。時計の文字盤にある英数字(Ⅰ~Ⅻ)と言えば想像しやすいでしょうか。その “15番目(フィフティーン)=XV” を意味しているのです。
“オールブラックス・フィフティーン” は、W杯フランス大会に出場する正代表(オールブラックス)のセカンドチーム。テストキャップはつかないセカンドチームとは言え、スーパーラグビーで活躍している選手たちばかりが選ばれています!次のW杯でオールブラックスの中心となる若い選手と、圧倒的な分厚い選手層からオールブラックスには選出されなかったテストマッチの経験を持つ有能な選手達で構成されたチームなのです。
この試合のスコッド(日本戦に臨む23人の選手)の中には、W杯2019で来日し3位となったメンバーであるスクラムハーフ(SH)ブラッド・ウェバー(Brad WEBER)選手、センターバック(CTB)ジャック・グッドヒュー(Jack GOODHUE)選手がスタメン。日本生まれのフランカー(FL)アキラ・イオアネ(Akira IOANE)選手など、代表キャップを持つ選手も6人。26歳の若き司令塔、スタンドオフ(SO)Stephen Perofeta(スティーヴン・ペロフェタ)選手も、昨年秋(リポビタンDチャレンジカップ2022)にオールブラックスのフルバック(FB)として来日しています。
試合前の会見で、「試合までの準備期間が短い中、経験豊富な選手と新しい才能溢れる選手をチームとしてひとつにしていくことが重要です。W杯フランス大会への招集を狙っている選手、初の代表選出というチャンスを得た選手、それぞれが目立った活躍を見せてオールブラックスに入りたいという高いモチベーションで臨んでいます。」と、ウェバー選手が話していたとおり、目の色を変えて臨んでくることが予想される一戦です。
その中でも、Journal-ONEがイチ推しの選手として挙げたいのが弱冠22歳、FBのRuben Love(ルーベン・ラブ)選手です。今回はFBとしての招集ですが、SOでもプレーできる圧倒的なパフーマンスに注目!今シーズン、怪我の影響でプレーできなかった日々を過ごしてもXVに選出されるのですから、ラブ選手への期待の高さが覗えます。
次世代のオールブラックスを背負う選手として、2016年、2017年の2年連続ワールドラグビー最優秀選手賞に輝いたスター選手で、日本のサントリーでもプレー経験のあるボーデン・バレット(Beauden BARRETT)選手のような活躍を期待したいですね。
リッチー・モウンガ(Richie Mounga)、ダミアン・マッケンジー(Damian McKenzie)といったタレント揃いのオールブラックスSO陣は、英国を中心に “フライハーフ” (flyhalf)と呼ばれる花形のポジション。
ボールのハンドリングやパス、キック、ステップワークなど様々な技術に正確性と求められることはもちろん、瞬時の状況判断力や試合の流れを読む冷静さも必要なのです。短い距離でトップスピードに到達する俊敏性に長けたラブ選手の動きに是非ご注目下さい!
対するはJAPAN XV
観衆22,283人!“桜のジャージー” で満員となった秩父宮ラグビー場に姿を現わした日本代表。そのジャージーは桜では無く、EMERGING BLOSSOMS(エマージング ブロッサムズ)のジャージーです。
ジャパンとして臨んだW杯イヤーの初戦ではありますが、臨んだのは “JAPAN XV(フィフティーン)“。各国代表同士の戦いであるテストマッチに認定されず、キャップ対象外となるオールブラックスXVを相手に、日本もセカンドチームとして参戦するために “桜のジャージー” を着用しないとのこと。
試合前の会見で、「FLの福井翔大選手やウィング(WTB)のジョネ・ナイカブラ選手、CTBの長田 智希選手など、テストマッチ出場経験がない5人の選手が、メンタリティの部分でオールブラックスXVという強い相手にどこまで戦えるかを見極めたい。」と、ジェイミー・ジョセフ(Jamie JOSEPH)ヘッドコーチが話したとおり、JAPAN RUGBY LEAGUE ONE(リーグワン)で活躍した新たな戦士たちの活躍に期待をする起用となりました。
また、リーグワンの準決勝でも見事な復活をアピールしたSOの松田 力也選手のプレーにも期待を寄せていたジョセフHC。「同じく、リーグワンで活躍したポテッシャルの高い木田 晴斗選手が怪我で出場させられないのは残念。」と、チームとして色々と試しながら残り2ヶ月間で進化を止めないチーム作りの戦略を話してくれました。
強風も味方に:前半
陸上自衛隊音楽隊による両国国家斉唱のセレモニーでは、旗手が持つ両国国旗が千切れんばかりにはためく強風の中、風上に陣を取ったJAPAN XVが先制します。
最初のスクラムでオールブラックスXVから出たパスをターンオーバーするなど、動きの良さを見せた日本は、3分に相手ゴール5mライン含んでノットリリースザボールでチャンスを掴むとすかさずペナルティゴール(PG)を選択。松田選手がしっかりと決めて3-0とします。
7分には自陣5mラインでスクラムとピンチを迎えますが、ここもノットリリースザボールでボールを奪うと中央からのラインアウトまで押し戻し、敵陣深くまで攻め込みます。
序盤優勢に見えた展開でなかなかトライが奪えない中、こんどはオールブラックスXVが反撃に転じます。15分に、日本は自陣インゴール手前で反則を犯しますが、オールブラックスXVが選択したのはPGではなくスクラム!ここから左に展開し、SOのペロフェタ選手がトライして3-8と逆転を許します。
23分、敵陣15mライン付近のオフサイトで得たチャンスに、再び松田選手がPGを決めて6-8と食い下がりますが、攻撃が思うように行かないのかキャプテンのリーチ マイケル選手の檄を飛ばし、自らも起点となってボールを展開しようとしますが上手くボールが繋がりません。
中央付近での攻防が続き、このまま前半終了かと思われた39分。ノックオンで攻撃権を奪われた日本代表は、自陣5mラインでスクラムというピンチを迎えてコラプシング(故意にスクラムを崩す反則)となり、相手にPGを与えてしまいます。
「風の強いコンディションの中、キックやパスの精度が上がらず難しい試合だった。」と、オールブラックスXVのレオン・マクドナルド(Leon MACDONALD)ヘッドコーチが試合後に振り返った通り、逆風の中で2本のキックが大きく左にスライドする失敗をしていたペロフェタ選手が、今度は右ポストを直撃するキックを放って成功。6-11とリードを広げて前半を終了しました。
力の差が顕著に:後半
流れを変えたいJAPAN XVは、後半開始早々から堀江 翔太選手、具 智元選手、姫野 和樹選手といったW杯2019メンバーを投入して流れを変える作戦に出ます。
しかし、15分に同じくW杯2019メンバーのCTB・グッドヒュー選手にトライを決められ、リードを広げられる苦しい展開になります。
JAPAN VXは、このあとも得意のアタックラグビーが影を潜め、ボールハンドリングにもミスが出て攻撃の流れが掴めない状況になります。
一方、オールブラックスXVはバックスの鋭いパス回しと個人技が冴え渡り、22分にはWTBのエテネ・ナナイセトゥロ(Etene NANAI-SETURO)選手、27分にはCTBのアレックス・ナンキヴェル(Alex NANKIVELL)選手、そして途中から入ったSHのフォラウ・ファカタヴァ(Folau FAKATAVA)選手にトライを決められ、ノートライの6-38という大差で敗れました。
オールブラックスXVのコメント
2000年からオールブラックスでキャップを重ね、トップリーグのヤマハ発動機でも中心選手として活躍したマクドナルドHCは、「強風で風下という前半戦は慎重にプレーしました。キックやパスも非常に難しいコンディションでの試合でした。」と、特にペロフェタ選手がキックで手を焼いた強風への対策が上手くいったと話します。
「今日は来日して一番のコンディション(降雨で気温が下がった)だったことがラッキーだった。日本はラインスピーが早く、タックルも良かった。ストラクチャをしっかりさせて戦ってくるチームなので、スペースを作って戦う作戦が上手くいった。」と、キャプテンのビリー・ハーモン(Billy HARMON)選手も想定通りの試合運びに満足した表情で話します。
日本のラグビーの印象について聞かれると、「(自分がプレーしていた頃と比べて)サイズも大きくなったし、自信も深まっている。スピード感ある日本のアタッキングラグビーにのみ込まれないように次も気をつける。」と、引き続き日本のアタックラグビーへの警戒をポイントに挙げていました。
JAPAN XVのコメント
厳しい表情で会見場に姿を現わしたジョセフヘッドHCは、会見が始まると同時に試合を振り返り始めます。「率直な感想はとても残念な結果。チャンスは作ったものの得点につなげることができなかった。チームとして一貫性を持ったラグビーができなかった。」と悔しさを滲ませます。
共同キャプテンのリーチ マイケル選手も、「悔しい結果になったが、負けは負けでしっかり受け止めたい。このチームの強さは反省点から改善していけるところにあると思うので、来週に向けて、もう1回仕上げていきたい」と、大敗を振り返り厳しい表情で話します。
これまでの合宿で取り組んだ初戦としての手応えについては、「ディフェンスの部分やスクラム、モールである程度相手にプレッシャーをかけられたところはあったが、メンタルもフィジカルで改善しないといけない。これからワールドカップで戦うイングランドやアルゼンチン、サモアといった体の大きいチームとの試合が控えているので、フィジカルを最優先に強化していきたい」と話しました。
今後の日程
初優勝を掲げるW杯に向けた国内5連戦は、ノートライの大敗というスタートとなりましたが、強化試合は始まったばかり。オールブラックスXVとの再戦を含めた国内での日程は以下の通りです。
・7/15(土)日本 × オールブラックスXV(熊本・えがお健康スタジアム)
・7/22(土)日本 × サモア(札幌ドーム)
・7/29(土)日本 × トンガ(東大阪市花園ラグビー場)
・8/ 5(土)日本 × フィジー(東京・秩父宮)
そして、国内強化試合を終えた8月15日(火)には、W杯登録メンバー33人がいよいよ発表され、更にW杯フランス大会直前となる8月26日(土)にもイタリア・トレヴィーゾで、イタリア代表との強化試合が追加!W杯モードが一気に加速していきます。
そして本番となる、W杯フランス大会は9月10日(日)から予選が行われることになります。※試合は日本時間
・9/10(日)20:00 日本 vs. チリ
・9/18(月)4:00 イングランド vs. 日本
・9/29(金)4:00 日本 vs. サモア
・10/8(日)20:00 日本 vs. アルゼンチン
史上初の快挙達成の瞬間を、より感動的に味わうために今からでも遅くはありません!
強化試合でラグビーに触れ、もっとラグビーを好きになってみんなで日本代表を応援しましょう。リーグワンのプレーオフ観戦記、日本ラグビーフットボール協会の土田雅人会長独占インタビューも併せて読んでいただけると嬉しいです。