未来のオリンピアンが輝く舞台
オリンピックに野球とソフトボールが帰ってくる‼ 2021年のオリンピック・東京大会(以下、東京2020)で金メダルに輝いた野球日本代表と、ソフトボール日本代表の活躍は、コロナ禍で無観客試合となったものの、開催国である私たち日本人に多くの感動を与えてくれました。
来年のオリンピック・パリ大会では、実施競技からの除外された野球とソフトボール。去る10月16日に行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会において、2028年オリンピック・ロサンゼルス大会(以下、ロス五輪)での実施競技として、野球・ソフトボール競技が正式に採用されたのです!!
世界中が歓喜にわいたその発表からわずか4日後、東京都内において今から5年後、ロス五輪で輝きを放つ世界中の選手たちが集まる “第1回 WBSC女子U15ソフトボールワールドカップ2023” 記者会見が開催。記念すべき第1回優勝に名を刻んだ国だけが初めて触れることが許される “ワールドカップ・トロフィー” を中心に11カ国・地域のヘッドコーチ、大会関係者が集まった会見場は終始笑顔に満ちあふれていました。
どの国のヘッドコーチも、試合の勝ち負けという結果よりも、世界中の選手たちと貴重な交流ができる機会を得たことへの喜びと、この大会開催に尽力した人たちへの感謝の気持ちを伝えます。ロス五輪が決定したことを受け、未来のオリンピアンたちの輝く舞台が広がっていくことへの喜びに溢れた素晴らしい雰囲気に触れ、スポーツが持つ素晴らしい力を再認識させられます。
日本語はもちろん、英語、中国語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、チェコ語と、7カ国語が飛び交う会見では、日本の取材陣からの質問を公式通訳さんや司会者、各チーム帯同の通訳さんを通じてやり取りするという “手作り感あふれた” 会見スタイルに、最初は少し緊張気味の笑顔を見せていたヘッドコーチたちも、最後はリラックスした笑顔に変わり会見を終了しました。
世界の “中学生” はみんな同じ(笑)
10月21日(土)の午後、東京都世田谷区の駒沢オリンピック公園総合運動場硬式野球場で行われた開会式。各国代表のユニフォームに身を包んだ選手たちは、さすがナショナルチームの風格を漂わせています。
しかし、実際に話をしてみたり、選手たち同士のじゃれ合う姿を見ていますと、そこはまだまだ “中学生の女の子たち”。カメラを向ければ周りの選手がフレームに収まろうと一斉に集まってきて、見せる笑顔は世界共通。見ている私たちの心を和ませてくれます。
各国スタッフの皆さんも、この大会を本当に楽しんでいるようで、スマホやGoProを片手に選手たちのオフショットを動画で撮影しています。やはり、この世代の子どもたちに広くこのイベントを知ってもらうためには動画が良いのでしょうか。アメリカ代表の選手たちもTikTokに公開すべく、二人組で自分たちが考えたダンスを撮影して何度もその様子を確認していました。
「思いっきり楽しまないと、周りの国に負けてるよ!」と、コーチ陣から水を向けられた日本代表の選手たちも、入場時のパフォーマンスを外野のフェンス脇で何度も練習(笑)。 2016年オリンピック・リオデジャネイロ大会で一躍有名になったパフォーマンス。陸上男子400mリレー決勝、各国代表4人による入場時パフォーマンスで銀メダルに輝いた日本代表が見せた “侍パフォーマンス“ を練習する選手たち。オリンピックのレガシーがこういった部分でも次世代に受け継がれているのだと興味深い一端も見ることが出来ました。
場内アナウンスで紹介されてグラウンドに入っていく各チームは、それぞれのお国柄が良くわかるパフォーマンスを見せながら笑顔で整列していきます。選手たちと一緒に来日したご両親たちや、日本在住の各国のファンも、自国の選手たちが紹介されると大きな歓声で選手たちの晴れの舞台に華を添えています。
大会を心から楽しんでいるスタジアム全体の雰囲気に、御臨席された高円宮妃殿下、主催者であるWBSCのベンチュウ・ロー事務総長、共催する東京都の潮田 勉副知事も、終始笑顔を見せられる素晴らしい開会式となりました。
大会開催の意義を語る
「直前(10月16日)に、ロス五輪においてソフトボールの正式種目復活が決まりました。こういった注目されている中で、未来の日本代表となるU15のワールドカップが開催される意味はとても大きいです。」と話すのは、日本ソフトボール協会副会長の宇津木 妙子さんです。「金メダルを獲得した東京2020の地・東京都で第1回大会が開催されることも、ソフトボール界にとって本当に素晴らしいこと。」と続けます。
宇津木さんは、代表監督退任後も東京国際大学の特命教授や、同大学の女子ソフトボール部の総監督、公益財団法人日本ソフトボール協会の副会長、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の執行理事、一般社団法人日本女子ソフトボールリーグ機構(以下、JDリーグ)の副会長兼キャプテンを歴任し、世界中でのソフトボール普及や人気拡大に尽力されているのです。
2000年のオリンピック・シドニー大会で銀メダル、2004年のオリンピック・アテネ大会で銅メダル。 “宇津木ジャパン” と呼ばれた戦士たちは、監督自らが1分間に40本のペースで打ち続ける “速射砲ノック” で高い守備力と強靱な精神力を身に付け、絶対王者・アメリカに挑戦し続けたその経験から、「高山選手(高山 樹里さん:1996年オリンピック・アトランタ大会から3大会連続でオリンピックに出場)も19歳の時にアトランタオリンピックに選出されています。ですから、今大会に選出されている選手たちも十分にロス五輪に出場する可能性はありますよ。」と教えてくれました。
日本代表を抑え、WBSCランキングで1位を死守するアメリカ代表のレジェンドも、この大会の意義を話します。
アメリカ代表チームに帯同しているKelly Kretscman(ケリー・クレッチマン)さんは、2004年のオリンピック・アテネ大会で金メダル、2008年のオリンピック・北京大会で銀メダルに輝いたアメリカが誇るソフトボール界のレジェンド! 日本リーグ‘(現在のJDリーグ)でも活躍した経験を持っています。記念すべき第1回の開会式に整列する各国の選手たちを眺めながら、「私が15歳のころは、アメリカ国内だけてプレーしていました。若い時から海外に出て、世界の選手たちとプレーできるというこの素晴らしい経験を楽しんでもらいたいですね。」と話していました。
後輩の活躍に自分たちの未来を重ねて
開幕戦に続き日本代表と台湾代表の試合も行われるとあって、駒沢オリンピック公園総合運動場硬式野球場には、“JAPAN” のレプリカユニフォームを着た多くのファンが詰めかけました。
その中には、同じロス五輪への出場を夢見て日々汗を流す、アスリートたちの姿もありました。こちらの皆さんは、東京国際大学ソフトボール部の選手たち。宇津木さんが総監督を務める部員の皆さんは、去る9月に佐賀県で開催された、“第75回全日本総合女子選手権” でJournal-ONE編集部が取材していた皆さんです。
「秋のリーグ戦はあまり良い成績が残せなかったのです。冬にしっかりトレーニングを積んで、一回り成長します。」と、西内ガブリエルゆみ選手(小平西高)が近況を教えてくれました。ロス五輪でソフトボールが正式競技に復活することについては「5年後って言えば…24歳?25歳?」と未だ現実感が無いほど遠い未来のようでしたが、「もちろん、日本代表になりたい。先ずはインカレでの優勝を果たし、JDリーガーになって代表に選ばれるような選手になれるよう頑張ります!」と、皆さん笑顔で大きな目標に向かう決意を話してくれました。
予選ラウンド・全勝の日本代表
開会式に続いて行われた日本代表と台湾代表の試合は予選屈指の好カードとあって、開会式から更に観客も増えて会場は益々の熱気に包まれています。
今年の6月11日から17日かけ台湾で行われた “第1回女子U15アジアカップ” では、台湾代表が3∸2で日本代表を下して初代女王の座に輝きました。因みに、アジアカップ予選リーグでは日本代表が3-0で台湾を下していますので、今年の戦績は1勝1敗の五分。
ロースコアでの接戦が予想さたとおり、日本先発の梶目 莉空投手(広島プリンセス)、台湾先発のKUO Li-Yu投手の好投で序盤に0を重ねた両チームでしたが、先制したのは日本代表でした。
3回二死のノーチャンスから、2番の櫻木 藍睦選手(福岡・KGスラッガー)が技ありの内野安打で出塁すると、今大会のキャプテン・3番の加減 夢華選手(佐賀女子短期大学付属佐賀女子高)がボールを上手く手元に呼び込んでのツーベースヒットを放つと、櫻木選手が俊足を飛ばして一塁から一気に生還。高い技術を見せて欲しかった先制点を奪います。
その後は、梶目投手から中村 律投手(東京・神田女学園中)、山本 心音投手(大阪・岸城クラブ)と継投した日本代表投手陣が台湾代表を無失点に抑えて白星発進となりました。
10月24日まで行われた予選リーグは、グループ1の日本代表とグループ2のアメリカ代表が共に5戦全勝(共に不戦勝1を含む)で首位通過。10月26日から29日まで開催されるスーパーラウンドに駒を進めた日本代表は、4チームの総当たり戦でも全勝を狙います。
[スーパーラウンドの日本代表戦予定]
10/26(木) 14:00 フィリピン代表戦 大田スタジアム
10/27(金) 14:00 アメリカ代表戦
10/28(土) 14:00 ペルー戦
上記3戦での順位をふまえ、10/29(日)の11時からは3位決定戦、14時からは優勝決定戦が行われるスーパーラウンドの会場は、東京都大田区にある大田スタジアム。JR大森駅、京急平和島駅、東京モノレール流通センター駅と、どこからでも行きやすいスタジアムです。
5年後のロス五輪で輝くであろう世界各国の選手たちのプレーや笑顔は、観ている私たちに夢と希望を与えてくれます。秋晴れの晴天が続くこの時期、ピクニックがてらに大田スタジアムへ出かけて、彼女たちに声援を送ってみてはいかがでしょうか?