アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜選手と神奈川県川崎市立橘高等学校の生徒の皆さん -Journal-ONE撮影
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取材・文:
Journal ONE(編集部)
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アメリカの超名門私立大学の総称 “アイビー・リーグ” という名前、日本人でも誰もが一度は耳にしたことがあるほど有名ですよね。 

ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュといった歴代大統領や多くの政治家を排出しているイェール大学(Yale University)、全米で最も歴史がありIT企業の創業者などの著名人やノーベル賞受賞者を世界で最も多く輩出しているハーバード大学(Harvard University)、ドナルド・トランプ大統領が卒業したペンシルベニア大学(The University of Pennsylvania)、 アメリカ・大リーグ(MLB)のスーパースター、ルー・ゲーリッグ(Lou Gehrig)選手などスポーツも盛んなコロンビア大学(Columbia University)。 

更には、プリンストン大学、ブラウン大学、コーネル大学。ダートマス大学と世界に名だたる米国の政財界・学界・法曹界を牽引する卒業生を数多く輩出してる大学ばかりです。 

このアイビー・リーグの大学生51名が、「Japan U.S. DREAM BOWL 2023」で、日本の社会人アメリカンフットボール・Xリーグ選抜の日本代表と国際試合を行うために来日しました。練習や試合だけでなく、様々な行事が目白押しのアイビー・リーグ選抜。

Journal-ONEでは、彼らの日本滞在を密着取材しました! アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜の選手たち -Journal-ONE撮影

日本の最先端技術に触れる、JR東海(Central Japan Railway Company)が開発する超電導リニア(Superconducting Maglev)の試乗や、神奈川県鎌倉市での日本文化・歴史の体験、練習会場である神奈川県川崎市の高校生たちとの交流など、アメリカンフットボールが繋ぐ日米の絆を紹介していこうと思います。

 この日も朝から練習に集まった選手たち。日本滞在も後半に入り、練習もより実践的なものが増えてきました。 

アメリカ4大スポーツのひとつ “アメリカンフットボール”は、その最高峰プロリーグ・NFL(National Football League)が、全米で最も興行収入の高いプロスポーツと言われています。そのNFLに多くの選手を輩出するアメリカの大学が参加して行われる “カレッジフットボール(College football)” も、NFLと同じくテレビなどで放映される程人気があるんです。 

そのカレッジフットボールの名門であるアイビー・リーグには、スカラシップといわれるスポーツ奨学金の授与がないため、学業もトップレベルでなければ、プレーすることの出来ないリーグなんです!正に文武両道の選手たちです!アメリカンフットボール アイビーリーグの選手たちは文武両道 -Journal-ONE撮影

 「チーム編成が間際になり、シーズンオフと言うこともあってなかなかフィジカル面の調整が難しいです。今日は、アル・バグノーリ(Al Bagnoli)ヘッドコーチからの指示で少し身体の動きを良くするためのトレーニングを増やしました。」と話してくれたのは、コロンビア大学でスポーツパフーマンスのアシスタントディレクター(Assistant Director of Sport Performance)をしているフランク・リサンチ(Frank Lisante)コーチ。アメリカンフットボール アイビーリーグ Frank Lisanteコーチ -Journal-ONE撮影

これまでの日本滞在の印象を聞くと、「フットボールの試合に向けた準備が大変だけど、用意された様々なプログラムや、空いた時間での日本の体験をとても満喫しています。特に、昨日体験した超電導リニア(Superconducting Maglev)の試乗は最も刺激的な体験でした。311mphで走る鉄道に乗るなんて信じられない!アメリカに住むエンジニアのいとこに写真と動画を送ったんだけど、“311mphで走行する鉄道が浮いているの?” と驚いていましたね。」と興奮気味に話すフランクコーチ。 

「今日は、夕方から東海道新幹線にも乗ることが出来るんだ!東京で行われている大相撲をスタッフで観戦に行くのですが、日本の国技である相撲というスポーツを観る機会はとてもラッキーなんだけど、東海道新幹線に乗ることも本当に楽しみなんです。」と、時間の正確さと乗り心地の良さ、そして超高速で走る日本の鉄道技術に触れて本当に嬉しそうなフランクコーチでした。 アメリカンフットボール 超電導リニア試乗 アイビーリーグ Al Bagnoli Japan U.S. Dream Ball - Journal-ONE撮影

幾通りもある連携プレーを正確にしてこそ、チームとして機能するフットボール。この日は、コーチ陣から幾度となく「Communicate!」という言葉が発せられ、そのたび選手たちはプレーを止めて、プレーの意図や選手の動き方を確認しています。 

普段は別の大学でプレーしている選手たちですので、短時間で互いを理解するのは難しいと思いましたが、選手たちは笑顔で意思疎通を行っています。 

きつい練習も楽しんでプレーしているアイビー・リーグ選抜の選手たち。スポーツを心から楽しんでいるトップアスリートの姿を観ていると、こちらも思わず笑みが溢れる練習風景です。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜選手の練習風景 -Journal-ONE撮影

フィールドを囲んで多くの関係者も来日していますが、そのひとりの女性に話を聞いてみると・・・「私は、#4のライアン・ヤング(Ryan Young)の母なんです。アイビー・リーグ選抜に選ばれて日本代表と戦う試合が、息子の大学生最後の試合となるとてもメモリアルな機会に恵まれました。是非、この目で観たいと思って夫(Rod)と一緒に日本まで観に来たんです。」とサヌラ(Sanura Young)さんが話してくれました。 

シカゴでビジネスディベロップメント(Business Development)の仕事をしているロッド(Rod Young)さんも、「息子の最後の試合も楽しみですが、初めて訪れた日本で観光も楽しんでいます。渋谷と明治神宮、浅草に行きました。他にどこかオススメのスポットはありますか?できれば、日本の皆さんのことが良く知ることのできる場所が良いな。」と会話が盛り上がります。 

私たちが、さまざまな日本の食べ物や生活用品を売る店が建ち並ぶ、上野のアメ横を紹介すると、「日本人が買い物に行く街なのね。お土産を買うのにピッタリ!たくさんお土産買わないといけないから。」とサヌラさんも乗り気です。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜Ryan Young選手 -Journal-ONE撮影

練習後に合流したライアンは、「日本はとても清潔で、安全な国ですね。日本の歴史や文化に興味があったので、このような機会を頂けて皆さんに感謝しています。」と今回の来日を本当に喜んでいる様子です。「3月~4月にかけて行われるNFL(最高峰プロリーグのNational Football League)のトライアウトに向けて、トレーニングを続けています。」と卒業後もフットボールでプロを目指すライアン。 

家族で一緒に記念撮影をしましたが、家族を本当に大切にしているアメリカ文化が覗える素敵なショットになりました。ライアンには、Journal-ONEのInstagram人気企画「Powerful message from Athletes」で、日本の皆さんに向けたメッセージを書いてくれました!アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜Ryan Young選手とご家族で記念撮影 -Journal-ONE撮影

 午前中の練習が終わり、選手たちは何組かに分かれて日本での体験・交流イベントに向かいます。私たちが取材したのは、高校生との交流イベント。練習場からほど近い、神奈川県川崎市立橘高等学校のグラウンドで1年生のスポーツ科の生徒の皆さんと、選手たちが到着するのを待つことにしました。神奈川県川崎市立橘高等学校のスポーツ科1年生の皆さん

 バレーボール、陸上、硬式野球、サッカー、ソフトテニスといった様々なスポーツで高校日本一を目指す若きアスリート39人が元気いっぱいに選手たちをお出迎えです。アイドル並みの歓声に、バスを降りたキャプテンのスコット・バレンタス(Scott Valentas)選手ら、総勢14名の選手は少し恥ずかしそうな顔で高校生たちの前に登場しました。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜Scott Valentas選手ら総勢14名の選手 -Journal-ONE撮影

橘高等学校の生徒たちの前に登場したアメリカンフットボール アイビーリーグ選抜の選手たち -Journal-ONE撮影

グラウンドでの交流は “フラッグフットボール” です。 フラッグフットボールは、タックルをしない代わりに腰の左右につけた紐状の “フラッグ” を取ることに置き換え、接触の危険を除いてフットボールの仕組みやルールを体感できるスポーツなんです。 

先ずは、少人数に分かれてボールの持ち方や投げ方、走り方やパスの受け方などを選手たちが身振り手振りで教えます。ハーバード大・ワイドレシーバー(WR)のジャック・ビル(Jack Bill)選手は正しいボールの握り方とスローイングを教えていますね。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜 Jack Bill選手 -Journal-ONE撮影

 プリンストン大・ディフェンスラインのジェームズ・スタッグ(James Stagg)選手は、自分か走り込む位置とタイミングを決めて、そこへパスを投げ込むといった少し高度なテクニックも教えているようです。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜James Stagg選手 -Journal-ONE撮影

最初は遠慮がちだった生徒の皆さんも、得意の身体を動かしたコミュニケーションで徐々に選手たちとの距離を近づけていきます。ハイタッチをしたり、英語を交えて質問したりとグラウンド一面に笑顔が広がりました。  

続いては、フットボールの最大の魅力と言うべき ”セットプレー” の実践です。 

今度は4チームでグラウンドを半分ずつ使い、オフェンス側とディフェンス側に分かれます。10ヤード先の線を越えればオフェンス側の勝利、防げばディフェンス側の勝利という簡単ルール。生徒の皆さんは早くプレーがしたくてウズウズしているようです。 

一方のアイビー・リーグの選手たちは、戦術をボードに書きながら選手同士で真剣に話しています。 

 ハーバード大コンビ、ディフェンシブバック(DB)のディアッサ・ジャキテ(Diassa Diakite)選手とラインバッカー(LB)のコービー・ジョセフ(Kobe Joseph)選手も、選手の動きを書いたパネルを持って、生徒の皆さんそれぞれの役割と動き方を真剣に教えています。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜 Diassa Diakite選手とKobe Joseph選手 -Journal-ONE撮影

最初は戦略や動き方に戸惑っていた生徒の皆さん、徐々にコツを理解したのか、フットボールらしい動きになってきました。タッチダウン!と思いましたがパスを受けた選手がまたパスを出すという反則での得点に、選手たちは一瞬苦笑い・・・ 

しかし、得点は得点だとスコット選手のかけ声でチームみんなが喜びを分かち合っています。得点に喜びを分かち合う選手たち -Journal-ONE撮影

 あっという間のふれ合いの時は過ぎ、僅かな時間でしたが一緒に戦ったチームメイトで記念撮影をして別れを惜しみます。選手たちと生徒の皆さん、若きアスリートの日米交流は素敵な笑顔で満たされています。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜選手と川崎市立橘高等学校の生徒の皆さんで記念撮影 -Journal-ONE撮影

アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜選手のみなさんとの即席の記念撮影大会 -Journal-ONE撮影

少しの余った時間で、即席の記念撮影大会が始まると、選手たちはもみくちゃです! 

コロンビア大のロングスナッパー(LS)パーカー・レフトン(Parker Lefton)選手も満面の笑みですね。最も多くの生徒のみなさんに記念撮影を求められていた、コロンビア大DBのマイク・フリューゲル(Mike Fluegel)選手も嬉しそうに応じていました。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜 Parker Lefton選手 -Journal-ONE撮影

アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜 Mike Fluegel選手 -Journal-ONE撮影

「私は陸上選手なので球技は本格的にやっていないですし、英語も分からないから不安だったのですが、ジェスチャーでコミュニケーションが取れて本当に楽しかったです!」と嬉しそうに話してくれたのは、陸上部で短距離をしている佐野 晴風(はるか)さん。橘高等学校陸上部の佐野 晴風(はるか)さん -Journal-ONE撮影

今や世界レベルにある日本の陸上ですから、佐野さんもこの先、海外の選手たちと切磋琢磨する時に今日の出来事を思い出してくれるかもしれませんね。 

 続いては、教室に入り国際科の生徒の皆さんとの交流イベントです。黒板に書かれた “WELCOME” の大きな文字や、折り紙による装飾がなされた教室に入った選手たちは、歓迎のおもてなしに早速笑顔です。 

こちらでは、選手ひとりに生徒の皆さんが2~3人ついて、お互いのことを話す時間のようです。生徒の皆さんは少し緊張した面持ちですが、パソコンやボードで作った自己紹介のプレゼンテーション資料を見せながら英語で思いを一生懸命に伝えていきます。  

その熱意を十分に受け止めようと、ハーバード大DBのハリル・ドーシー(Khalil Dawsey)選手も真剣に生徒の言葉に耳を傾けます。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜Khalil Dawsey選手 -Journal-ONE撮影

Japan U.S. DREAM BOWL 2023」で見事、MVPを獲得したペンシルベニア大のランニングバック(RB)イザヤ・マルコム(Isaiah Malcome)選手も、プレー同様の真剣な眼差しで生徒のプレゼンテーションを聞いています。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜 Isaiah Malcome選手 -Journal-ONE撮影

「Japan U.S. DREAM BOWL 2023」でMVPを獲得したIsaiah Malcome選手 -Journal-ONE撮影

お互いを分かり合えた後は、日本文化 “折り紙” で鶴を折るチャレンジです。こちらは自己紹介から様相が変わり、選手も生徒も笑顔で鶴を折っていきます。細かい手作業に大柄な選手は悪戦苦闘です。ハーバード大LBのソロモン・エッビ(Solomon Egbe)選手は、大きな身体を丸めて手先に集中しています。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜 Solomon Egbe選手 -Journal-ONE撮影  ブラウン大オフェンシブライン(OL)のチャド・ブルーミー(Chad Bloom-Webster)選手は、大きな身体を丸めて手先の細かい作業に没頭します。太くて大きな手を重ね合わせると、「うわぁ~ 凄く大きいですね!」と生徒の皆さんもびっくりです。アメリカンフットボール アイビーリーグ選抜 Chad Bloom-Webster選手 -Journal-ONE撮影

選手の皆さん全員が、時間内に折り鶴を完成させたようです。完成した鶴を持って、嬉しそうに写真に写るジャック・ビル(Jack Bill)選手は、「今日の交流は何もかもが素晴らしかった。プレゼンでは3人のことを深く知ることができて、本当に良かったです。彼は通訳になりたい夢があると言っていたし、アスリートをサポートする仕事に就きたいと、僕と共通の夢を持った生徒もいたことが分かったしね。」と充実した時間を振り返ります。折り鶴が完成し嬉しそうなJack Bill選手 -Journal-ONE撮影

ジャック選手と同じ夢を持つ、小田 百々果(ももか)さんは「スポーツ栄養士になりたいので、本格的なアスリートであるジャックに普段の食生活や、栄養素の摂り方などをもっと聞きたかったです。」と名残惜しそうに話します。消防士を目指す丸本 そらさんの「ジャックの優しい対応に、とても感動しました。」という笑顔に、この交流イベントの成功を実感しました。神奈川県川崎市橘高等学校の小田 百々果(ももか)さんと丸本 そらさん

橘高校がある神奈川県川崎市は、”アメリカンフットボールを活用したまちづくり“ を進める街。競技団体や地域、市民と連携しながら、地域活性化や青少年の健全育成の推進に取り組んでいるとのこと。スポーツをすることだけに焦点を当てるのではでなく、国際交流といった取り組みも加えながら多くの市民が参加できる工夫をしているのですね。 

 同行していたアイビーリーグ事務局(The IVY League)のキャロライン・キャンベルマクガバン(Carolyn Campbell-McGovern)副事務局長(Deputy Executive Director)も、「日本に来ることができて選手たちには貴重な経験になっています。今日は、日本の高校生から何を学びたいか。選手たちは事前に考えて訪問しています。きっと実りある交流になったと思います。」と、皆さんの笑顔を見ながら満足そうに話してくれました。アイビーリーグ事務局のCarolyn Campbell-McGovern副事務局長 -Journal-ONE撮影

アクセス
川崎市立橘高等学校
  • JR南武線 平間駅-徒歩10分
  • JR南武線 向河原駅-徒歩8分
  • JR横須賀線 武蔵小杉駅-徒歩12分

 

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