女子ソフトボール JDリーグ交流戦 戸田中央メディックス埼玉のAlyssa Denham(アリッサ・デンハム)投手-Journal-ONE撮影
jone_logo
取材・文:
Journal ONE(編集部)
この記事は約6分で読めます。

“天下分け目” の決戦が、令和の世に再び!
女子ソフトボール世界最高峰リーグ “JD.LEAGUE(JDリーグ)” に加盟する全16チームが、有名な史実 “関ヶ原の戦い” の舞台となった美濃国(岐阜県)に一堂に会し決戦の火蓋が切って落とされた、東西地区対抗交流戦シリーズは2ndラウンドに突入!

「東西決戦!第2ラウンド・前編 」レポートに続き、6月4日に朝霞市(朝霞市中央公園野球場)に繰り広げられた熱戦の後半戦を、各チームの “名将“ に焦点を当ててレポートします。

東軍・武蔵国 vs 西軍・伊予国

東西決戦・交流戦の初日(5/27)に大垣市北公園野球場で記録した1,646名の観客数に次ぐ1,608名の観客が訪れたこの日。その多くは、地元開催の戸田中央メディックス埼玉を応援する地元ファンの人たちでした!満員のメディックス応援席に、選手たちのテンションも高ぶっているようです。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 戸田中央メディックス埼玉のAlyssa Denham(アリッサ・デンハム)投手-Journal-ONE撮影

スタジアムの外に張り出されたテントには、”骨密度測定” ”乳がん検診” “健康相談” など、日ごろ健康について深く考える機会のない方でも、思わず立ち止まってしまう本格的な健康に関するブースが並びます。埼玉県を本拠地とする戸田中央メディックス埼玉を運営している、戸田中央医科グループ(TMG)のこれらのブースには、観戦に来ていた多くのファンたちで賑わっていました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 第2ラウンドの会場・朝霞市中央公園野球場に設置された戸田中央メディックス埼玉のブース-Journal-ONE撮影

続く第2試合は、その戸田中央メディックス埼玉(埼玉県戸田市)に伊予銀行ヴェールズ(愛媛県松山市)が挑む一戦です。善戦しながらも勝ち切れない “嫌な流れ” から抜け出したいヴェールズに対し、昨年の最下位から一転!勝ち越しで東地区4位と好位置に付けているメディックス。この試合、2年目の躍進を手ほどく “名伯楽” と、”鉄砲伝来”のごとく戦略を一変させた新戦力に注目して見ていきたいと思います。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 第2ラウンドで対戦した戸田中央メディックス埼玉と伊予銀行ヴェールズの選手たち-Journal-ONE撮影

“名伯楽” が見る新たな地平

JDリーグの前身である日本リーグで205勝66敗。日本リーグ優勝5回、全日本総合選手権優勝4回。現在、西地区首位を走るトヨタ レッドテリアーズを強豪チームに育て上げたその手腕は、日本代表監督、台湾代表コーチに招請されるほど。

その名伯楽の名は、メディックスを率いて2年目を迎える福田 五志監督です。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 第2ラウンド 戸田中央メディックス埼玉の福田五志監督-Journal-ONE撮影
「去年4人、今年6人と若い選手が入ってきて、チームの若さは大学のチームと変わらないですよ。ここに、経験のある糟谷選手(ビックカメラからホンダを経て移籍)と鈴木選手(トヨタから日立を経て移籍)が入ってくれて良い見本になってくれていますね。」と、変わりつつあるチームに目を細める福田監督。
「でも、戦力的にはまだ3~4人足りないです。強豪チームと互角に戦えるようになるには来年まで掛かるかなぁ・・・トヨタの草創期も同じでしたよ。弱いチームは同じ道をたどって強くなっていかないといけない。3、4年後を楽しみにしてね。そこまで(監督を)やっているかわかんないけど。(笑)」とチームを創り上げる魅力を教えてくれました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 第2ラウンド 戸田中央メディックス埼玉の福田五志監督-Journal-ONE撮影

「だからと言って対戦カードで手を抜くようなことはせず、毎試合ベストメンバー、全力で戦っています。若い選手たちは、練習でできても試合で実力を発揮できるとは限りません。しかし、“このチームを何とかしよう、強くしよう” と集まってくれた良い選手ばかりなので、結果を求めて貪欲にやってくれています。一方で、チームが成長するには、自分のことだけでなくお互いを知って尊重し合うことが大事。ですから、チームをひとつに戦う意識を高める意味で “ワンチーム” というスローガンを掲げています。若い選手たちは、糟谷選手や鈴木選手が試合の中で見せる対応力を学んで日々成長して欲しいですね。」と福田監督。
メディックスの新たな地平を切り開きながら、リーグ戦でも結果を残している名伯楽の戦術を分かりやすく教えてくれました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 第2ラウンド 戸田中央メディックス埼玉の福田五志監督-Journal-ONE撮影

一点を争う緊迫した試合展開

大観衆の声援を背に受けたメディックスの先発は、新加入のAlyssa Denham(アリッサ・デンハム)投手とGwen Svekis(グウェン・スヴェキス)捕手のバッテリー。昨年、アメリカのAthletes Unlimitedのリーグ(AUX Softball)でバッテリーを組んでいたふたりは、試合前の練習でもじゃれ合う仲の良さを見せてくれます。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 戸田中央メディックス埼玉のAlyssa Denham(アリッサ・デンハム)投手とGwen Svekis(グウェン・スヴェキス)捕手-Journal-ONE撮影

一方のヴェールズは、先週の交流戦第1ラウンドでも好投した、ルーキーの遠藤 杏樺投手と、笑顔弾ける元気な新キャプテン・安川 裕美捕手のバッテリー。安川主将を中心に、いつも笑顔でソフトボールに取り組むヴェールズの選手たちは、見ている私たちに元気を与えてくれます。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 いつも明るい伊予銀行ヴェールズの選手たち-Journal-ONE撮影

女子ソフトボール JDリーグ交流戦 いつも明るい伊予銀行ヴェールズの安川裕美選手-Journal-ONE撮影

試合は両投手上々の滑り出し。早くも投手戦の様相を呈してきた2回に、メディックス・福田監督期待の4番・糟谷 舞乃選手の2試合連続本塁打で1点を先制します。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 先制のソロ本塁打を放った戸田中央メディックス埼玉の糟谷 舞乃選手-Journal-ONE撮影
追いつきたいヴェールズも、「先週の試合で失敗した送りバントにフォーカスして1週間練習してきた。」と、世界を知る名将・石村監督が話していたとおり、猛烈なバントシフトをモノともせず得点圏に走者を進めますが、アリッサ投手の力投の前に得点には至りません。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 戸田中央メディックス埼玉のAlyssa Denham(アリッサ・デンハム)投手-Journal-ONE撮影

しかし5回表 無死1塁から「(雨の中)橋の下でも練習してきました。」と話した、業師・吉金亜希子選手がこの日2つ目の犠打でチャンスを作ると、1番・松瀬 清夏選手がセンターに抜けるタイムリーを放ち、ようやく同点に追いつきます。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 2つの犠打を成功させた伊予銀行ヴェールズの吉金亜希子選手-Journal-ONE撮影

ここで動いたのは、メディックスの福田監督。「先発・アリッサから増田にスイッチするスタイルを貫いているが、徐々に良い結果が出るようになってきた。」と話していたとおり、3巡目を迎えるこのタイミングで早めの継投策を打ち出します。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 2試合続けて好リリーフを見せた戸田中央メディックス埼玉の増田 侑希投手-Journal-ONE撮影

この期待に応え、増田 侑希投手が後続をしっかり抑えると、続く5回裏に8番・深沢 未花選手が高い弾道で放った打球は、レフトフェンスを越える勝ち越しソロ本塁打!早めの継投で流れを渡さなかったメディックスが、すぐさま勝ち越しに成功します。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 勝ち越しのソロ本塁打を放った戸田中央メディックス埼玉の深沢 未花選手-Journal-ONE撮影

女子ソフトボール JDリーグ交流戦 勝ち越しのソロ本塁打を放った戸田中央メディックス埼玉の深沢 未花選手-Journal-ONE撮影

試合の流れを決定付けたポジショニング

メディックスが僅かに1点をリードする緊迫した展開で迎えた7回表。試合の流れを決定付ける出来事が起こります。
メディックスは、1死から2番・三輪 玲奈選手が2塁打で出塁すると、代走から入った山北 莉乃選手が、センター前に鋭く弾き返すセンター前ヒット。
3塁コーチャーズボックスに入る福田監督の右腕が激しく回り、加速した三輪選手が本塁へ突進します。しかし、センターの松瀬選手からの好返球を受けた安川捕手と三輪選手は、本塁手前1m、右バッターボックスの手前でクロスプレーに!

ホームベースに向かって足を伸ばすものの、安川捕手と正面衝突した三輪選手は衝撃で3塁ベンチ方向に倒れます。この瞬間、まだホームベースに届いていない時点で主審が大きく手を広げてセーフの判定。主審の立ち位置はベースタッチを見る場所から離れ、また目線もホームベースに向けられていない状態でのジャッジでしたが、抗議は認められずメディックスが3-1とリードを広げました。

7回裏、ヴェールズも2死から代打の瀧川 愛海選手がヒットで出塁して反撃の狼煙を上げますが、後続が断たれて万事休す。地元の大歓声を背にメディックスが連勝でこの東西決戦第2ラウンドを締めくくりました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 代打で安打を放つ瀧川愛美選手(伊予銀行ヴェールズ)-Journal-ONE撮影

チームの好調を支える新戦力

「当ててくる打者が多く、審判のストライクゾーンも狭い日本特有の環境の中で良くやってくれている。」と福田監督が万全の信頼を寄せるアリッサ投手は、「日本に来て本当に良いチャレンジができています。シーズンの真ん中に差し掛かって、身体ももちろんですがメンタル的にもキツい場面に入っています。ですので、1日1日をきっち投げていこうと集中していることが良い結果(連勝)に繋がったと思います。」と、このシリーズでの好投を振り返ります。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 戸田中央メディックス埼玉のAlyssa Denham(アリッサ・デンハム)投手-Journal-ONE撮影

「アメリカ人にとって日本でプレーすることは夢のひとつです。メディックスに来て、日本のチームメイトと一緒にプレーできていることが何よりも嬉しいですし、チームに加わってから直ぐに良い結果が出ていることは、私たちにとっても凄く嬉しいです。でも私たちはまだベストなプレーができていないので、ここからまだまだ成長できると思っています。これからの試合がとても楽しみですね。」と、グウェン選手は更なる飛躍を話します。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 戸田中央メディックス埼玉のGwen Svekis(グウェン・スヴェキス)捕手-Journal-ONE撮影

来日から3ヶ月半となった日本での生活について聞いてみると、「日本の生活はとても素敵。直ぐに日本の生活に馴染めたし、多くの友だちもできました。戸田も住みやすくて、あっという間に3ヶ月半が経ちました。もう直ぐ前半戦が終り、帰国して家族に会うのが待ち遠しいです。」と、日本の生活を楽しみながらも、そろそろ家族が恋しくなってきたというアリッサ選手。

「シーズン前の1日しかなかったオフに、京都まで行くことはできませんでしたが、箱根に行って両親に富士山を見せることができました。」「日本食は餃子(王将)がとっても気に入りました。たこやき、大トロ、和牛なんかも両親と一緒に楽しみましたね。」と、日本での初トライの数々を楽しそうに教えてくれたグウェン選手。
「私も餃子は鉄板メニュー。1週間に1~2回は行っています(笑)。今まで、なかなか新しい日本食にトライする機会がありませんでしたが、グウェンが “これも美味しいよ、あれも美味しいよ。” って教えてくれるので楽しんでます。」グウェンと向き合って笑いながら話すアリッサ。こういった日本を楽しむ感覚も、活躍に必要な能力なのかもしれませんね。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 戸田中央メディックス埼玉のAlyssa Denham(アリッサ・デンハム)投手とGwen Svekis(グウェン・スヴェキス)捕手-Journal-ONE撮影

残り2節となった前期の意気込みについては、「もう少し良いプレーができたと思うし、今その片鱗が見え始めています。体力的にキツい局面ではありますが、あと2週間でもう少しパフォーマンスが良くなることを願っています。」とグウェン選手が話せば、「残り2週間、帰国してリフレッシュできる時が近づいていると感じることができるので、シーズン初めの頃の精神状態に戻り、楽しんでゲームに臨みたいですね。」と、アリッサ選手も最後のひと踏ん張りを誓っていました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 戸田中央メディックス埼玉のAlyssa Denham(アリッサ・デンハム)投手-Journal-ONE撮影

JD.LEAGUE(JDリーグ)東西地区対抗交流戦シリーズはこの日が折り返し。東軍8勝、西軍8勝とまたも互角の結果となりました。
両軍譲らない交流戦は、6月10日、11日に戦場を新潟県上越市、愛知県豊田市、滋賀県甲賀市、岐阜県大垣市の4会場に移動し、3節目に突入します。

どの会場も接戦が予想される好カードが揃う交流戦。特に、6月11日に激突するトヨタ レッドテリアーズ対ビックカメラ高崎ビークイーンの “両地区首位決戦” は見逃せません。皆さんもお近くの会場に足を運んで、選手たちの熱いプレーを間近で感じてみてはいかがでしょうか?女子ソフトボール JDリーグ交流戦 ビックカメラ高崎ビークイーンの上野由岐子投手-Journal-ONE撮影

アクセス
朝霞中央公園野球場
  • 東武東上線 朝霞駅-徒歩約15分

 

おすすめ記事