Game3(日本代表 vsニュージーランド代表)レポートから続く
日本vsオーストラリア(Game8):乗松 隆由レポート
東京2020パラリンピック競技大会で銅メダルを獲得した “車いすラグビー”。リオデジャネイロ大会と連続のメダル獲得となった自国開催は、コロナ禍で無観客試合となりましたが本当に多くの皆さんが応援してくれました。車いすを激しくぶつけ合う攻防や、鋭いチェアワークでボールを運ぶ選手の姿を初めて見て、車いすラグビーに魅力を感じてくれたと話してくれるファンも増えたこの盛り上がりを更に大きくするためにも、来年のパリ大会への出場権を獲得したいところです。
そのパリ行きのキップが優勝した国のみに与えられる国際大会、“三井不動産 2023ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ(以下、AOC)” の初日に世界ランキング8位のニュージーランドと、同2位のオーストラリアに連勝して勢いに乗る日本代表(同3位)の2日目をレポートしていきたいと思います。
昨日、成長著しいライン(競技に出場する4人の選手を構成するチーム)の活躍もあり、オーストラリアとの接戦を勝ち切れた日本代表ですが、まだまだ予断は許せません!何と言ってもオーストラリアは「何をしてくるかが分からない。」チームですので、とっておきの戦術カードをどのタイミングで切るかの駆け引きや、4日間で7試合を戦うためのフィジカルとメンタルをどうキープしていくかといった、大会全体を通したチームマネジメントも重要になってくるのです。
この試合も、日本代表のラインを中心にして試合展開を解説していきたいと思います。
ラインについては “祝・パリパラ出場!!-車いすラグビー日本代表ゲームレポートⅠ” で詳しく説明していますので、併せて読んで下さいね。また、昨日のオーストラリア戦 “祝・パリパラ出場!!-車いすラグビー日本代表ゲームレポートⅡ” とも読み比べてもらうと、よりライバル・オーストラリアとの激闘の様子が分かると思います!
Game8-第1ピリオド
【3・3・1・1ライン】#21池 透暢選手(3.0)、#7池崎 大輔選手(3.0)、#1若山 英史選手(1.0)、#9今井 友明選手(1.0) ※カッコ内がClass
先発は、ここまでの4試合とも全てこのライン。ケビン(Kevin Orr)ヘッドコーチの信頼度がとても高いことが分かります。対するオーストラリアも前日の対戦と同様、エースの#3 ライリー・パット[Ryley Batt]選手(3.5)、#10 クリス・ボンド[Chris Bond]選手(3.5)を中心とした主力のラインでリベンジを狙うようです。
このラインは車いすラグビー日本代表の象徴として度々スポーツニュースに取り上げられる “池・池コンビ” こと、ハイポインターの池選手、池崎選手のダイナミックな動きが光ります。しかし、このラインで注目して欲しいのが若山選手と今井選手のローポインターコンビなのです。オーストラリアのハイポインター、バット選手、ボンド選手のコンビも “池・池コンビ” に負けないパワーとアジリティ(俊敏性)が自慢。この2人に自由にコートを動き回らせないよう、若山選手と今井選手が進路を塞いで池選手と池崎選手がマッチングに入れるよう時間を稼いだり、チェアを密着させた技ありのマークで動きを鈍らせたりすることで、オーストラリアの選手たちの体力はもちろん、メンタルも削っていくところは是非観て欲しいポイントです。
この試合、序盤から日本の戦略が変化していることに気付きます。それは、昨日の試合で勝因となった “ローポインターにボールを持たせたところを狙う” というディフェンスを徹底する戦略です!#14 アンドリュー・エドモンソン[Andrew Edmondson]選手(2.0)がボールを保持してパスを供給するタイミングで猛烈なプレッシャーを掛けることによって、簡単にバット選手、ボンド選手にボールを渡さず時間と体力を削っていきます。
スピードとスタミナが十分な序盤は一見、ハイポインター同士の点の取り合いに見えますが、若山選手と今井選手の働きにより、オーストラリアは日本代表に比べて体力を大きく消耗して得点せざるを得ない状況を作っています。こういった試合展開に持ち込みつつ、8-7となったところで日本代表はラインを変えてきました。
【3.5・3・1・0.5ライン】#32橋本 勝也選手(3.5)、#13島川 慎一選手(3.0)、#23小川 仁士選手(1.0)、#2長谷川 勇基選手(0.5)
2番手に投入されたのも、やはり東京2020大会以降で急成長したこのラインでした。先日のオーストラリア戦で見事に機能した “世界で勝つためにはとても重要なライン” が、この日は更に進化した姿を見せてくれました!
昨日の試合後、「出だしは気負ってしまった。」と話していた橋本選手の落ち着いたプレーが光ります。忍者のように神出鬼没なポジションチェンジが自慢の小川選手が、しっかりとフォローに来るタイミングを待ってから攻撃に移ったり、島川選手と息を合わせてボンド選手からボールを奪ったりと、オーストラリアに付け入る隙を全く与えません。
オーストラリアも何とかモメンタム奪い返そうと、ボールを持った島川選手に襲いかかりますが、じっくりとディフェンスを引きつけた島川選手が遠くのスペースに入り込む橋本選手に超ロングパス!豊富な攻撃のバリエーションに、会場のボルテージは一気に上がっていきました。
【3・3・1.5・0.5ライン】#21池選手(3.0)、#13島川選手(3.0)、#22乗松 聖矢選手(1.5)、#2 長谷川選手(0.5)
昨日の試合で最も激しい点の取り合いとなったこの時間帯に登場したのは、やはりこのラインでした。まだ体力が十分にある両チームの選手たちが、コート中央付近で見せてくれた激しい攻防を制して、モメンタムをしっかりと保つことを期待されたラインです。ところが!流石のオーストラリアもこの時間帯の対策をしっかりと立ててきたようです。
パス供給をするローポインターの選手を早めにフォローし、「日本代表の思惑には乗らないぞ!」と言わんばかりのバット選手が獅子奮迅の働きを見せます。
池選手、島川選手の動きも決して悪くはありませんが、バット選手の動きに焦ってターンオーバーを許し、15-15のイーブンに戻されて前半戦終了となりました。
Game5(韓国戦)のミドルポインターの活躍が活きる
ここで、日本代表の本日の1試合目を振り返ってみましょう。この試合展開がこの後のオーストラリア戦後半に繋がってくるキーにもなるため、時間を巻き戻して振り返りたいと思います。今日の日本代表のゲームスケジュールは、10時30分から韓国戦、19時からオーストラリア戦と試合間隔が非常に長く、コンディションの調整が懸念されていました。こういったスケジュールでは、先の韓国戦でどれだけ消耗を抑えられるかが重要になります。
オーストラリア戦でハイポインターが序盤から良い動きを見せられた要因として、韓国戦で活躍したミドルポインターについて解説しておきたいと思います。#4羽賀 理之選手(2.0)と#14中町 俊耶選手(2.0)です。
今大会の韓国代表メンバーについては、最初のレポートで紹介したとおり2つの懸念点がありました。“いつも代表で出てくる主力選手がいないためハイレベルな試合に対応できるのか” “招集選手が7人しかいないため、長丁場の4日間を戦え抜けるのか” というポイントです。それが早くも2日目で現実のものとなってしまったのです。
ニュージーランド、オーストラリアの屈強なハイポインターの選手たちを抑え込めるハイポインターの駒が少なく、1日目で相当疲弊していた韓国代表。この日本戦では既に対抗する余力は残っておらず、第1ピリオドから20-2と日本代表が大きく差を付ける展開となります。
そこで日本代表は第1ピリオド後半からClassの合計が8点に満たないラインを編成し、ハイポインターを休ませる作戦に出たのです。この試合で好守のキーとなったのが、ミドルポインターの羽賀選手と中町選手。ハイポインターのコンビと比べると、2.0~2.5も少ないラインでも質を落とさないゲーム展開を見せてくれました。
第2ピリオド以降、殆どのラインに参加した羽賀選手は世界屈指のリーチを活かしたキャッチングと、高校時代に野球部で培ったスローイング力を活かし、中町選手にロングパスを通して楽に得点を重ねていきます。両選手ともボールのハンドリングがとても上手いため、ハイポインターほどのスピード感が無くても着実にボールを運んでいきます。
「ボールを持っている選手に対しハードにプレッシャーを掛ける。自分たちがやるべきことをやり続けるのはどのラインでも変わりません。」と試合後に話してくれた中町選手ですが、橋本選手とのコンビネーションは最高!お互いに何も確認すること無く、協調して得点を重ねていきます。それもその筈、中町選手と橋本選手は同じ “TOHOKU STORMERS” というクラブチームで活動しているからなんです。「これだけ大きな声援を背に受けてプレーできたのは本当に力になりました。」と話す中町選手。
AOC終了後もクラブチームでの活動が続きますので、このコンビネーションが見られるクラブチームの試合も観戦していただいて、大きな声援を中町選手に送って欲しいですね。
Game5(韓国戦)では緊急事態への対応も
それともう一つ。この日、クラブチーム “AXE(アックス)” でチームメイトである#3 倉橋 香衣選手(0.5F)が欠場となりました。昨日のオーストラリア戦で、バット選手と激しいコンタクトをした際に、軽い鞭打ちのような症状になったとのこと。こうなると、他のローポインターがフォローする機会が増えますし、ラインも一部組み直す必要が出てくる緊急事態です。そのため、この日は#1 若山選手、#9 今井選手、#23 小川選手の活躍が期待されるところです。
【2・2・1・1ライン】では、小川選手の個人技と、若山選手と今井選手のコンビネーションが光ります。小川選手はたった一人で2人の選手を抑え込んでいます。これだけで、Classの総点数が6点であってもマッチアップが互角になりますよね。若山選手と今井選手は。互いのポジショニングを対角に取ってスペースを消したり、ディフェンスが足りていると見るや否や高い位置に素早く移動してゴールまで一気にボールを繋いだりと大活躍を見せてくれました。
「ローポインターのラインであっても、ポジショニングや役割りは変わりません。コートの中で常にコミュニケーションを取って、ゲームメイク仕切れたことが良かったです。」と試合後に小川選手が話してくれたとおり、若い小川選手のキャプテンシーにも頼もしさを感じましたね。
また、#22 乗松選手と#2 長谷川選手も、普段組む機会の少ないラインの中に入っても全く違和感の無い協調ある動きを見せてくれます。乗松選手はNo3のポジションであっても果敢にゴールを狙っていきますので、韓国は本当に嫌でしょうね。
これだけローバンパーの選手が入っていると、普通は動きが遅くなるのですが、日本のローポインターはトランジション(攻守の切り替え)がとてつもなく早いため、韓国がフォーメーションを整える暇無くプレッシャーを掛けられています。ターンオーバーの連続となりましたが、決して手を緩めない日本代表は70-18の大差で3連勝を果たし、余力を持ってオーストラリア戦に臨むことになりました。
Game8-第2ピリオド
【3・3・1.5・0.5ライン】#21池選手(3.0)、#13島川選手(3.0)、#22乗松選手(1.5)、#2 長谷川選手(0.5)
【3・3・1・1ライン】#21池選手(3.0)、#7池崎選手(3.0)、#1若山選手(1.0)、#9今井選手(1.0)
第2ピリオドに入り17-18となった日本代表は、主戦ラインを投入してオーストラリアに傾き掛けたモメンタムを奪い返しに行きます。エース・バット選手が休むローテーションとも重なったため、再逆転のチャンスと見た日本は、次々にフレッシュなハイポインターを投入しますが、オーストラリアも譲りません。
【3.5・3・1・0.5ライン】#32橋本選手(3.5)、#13島川選手(3.0)、#23小川選手(1.0)、#2長谷川選手(0.5)
【3・3・1.5・0.5ライン】#21池選手(3.0)、#13島川選手(3.0)、#22乗松選手(1.5)、#2 長谷川選手(0.5)
ここで注目して欲しいのは、#3 倉橋選手(0.5F)が欠場した穴を埋めた、#2 長谷川選手(0.5)の奮闘です。このハイレベルの戦いの中、ピリオド中にほぼ出場し続けるのはフィジカル、メンタル共に相当キツいはず。ところが、長谷川選手が所属しているチーム “BLITZ(ブリッツ)” は、少ないメンバーで何試合もこなすタフネスなチーム。島川選手、池崎選手、小川選手と日本代表の4人が所属していることもあって、高いレベルでの長時間プレーはお手の物なんです!今年2月に行われた、車いすラグビー日本選手権でもそのタフネスさにやられた苦い思いが蘇ってきました(笑)。
Game8-第3ピリオド
【3・3・1.5・0.5ライン】#21池選手(3.0)、#13島川選手(3.0)、#22乗松選手(1.5)、#2 長谷川選手(0.5)
28-29と接戦が続く第3ピリオドも同じラインで戦う日本代表は、33-32と1点リードしたところでベンチタイムアウトを取りました。新たな作戦を共有しつつフレッシュなラインに入れ替えてオーストラリアを揺さぶりに掛かります。
【3・3・1・1ライン】#21池選手(3.0)、#7池崎選手(3.0)、#1若山選手(1.0)、#9今井選手(1.0)
ここでギアを上げたのは、#1 若山選手と#9 今井選手のローポインターコンビです!#10 ボンド選手に猛烈なプレッシャーを掛け始めます。このプレッシャーにボールを出せないオーストラリアは耐えられず#3 エースのバット選手と投入しますが、ボンド選手へのプレッシャーを掛け続けます。
【3.5・3・1・0.5ライン】#32橋本選手(3.5)、#13島川選手(3.0)、#23小川選手(1.0)、#2長谷川選手(0.5)
オーストラリアもディフェンスを変えてきます。長谷川選手をローポインター2枚で抑える作戦です。長谷川選手との協調でボールを運んでいる日本の攻撃のリズムを崩しに掛かる狙いです。これに対応した小川選手がポジションをスイッチして、オーストラリアの思惑を崩しに行きます。橋本選手もしっかりと小川選手が入ってくるのを待って攻撃!落ち着いたプレーが光ります。島川選手も自らをおとりに、ディフェンスをしっかり引きつけてからフリーの橋本選手にパスを出すなど、絶妙なゲームメイクを見せてくれます。
橋本選手がエース・バット選手とのマッチアップに何度も競り勝ったり、小川選手が正確で距離のあるインバウンド(ベースラインからコート内にボールを投げ入れるプレー)を見せたりと随所に唸るプレーが続き、35-35でレフリータイムアウト。このタイミングで日本が更に仕掛けてきます。
【3・3・1.5・0.5ライン】#21池選手(3.0)、#7池崎選手(3.0)、#22乗松選手(1.5)、#2長谷川選手(0.5)
第3ピリオドの残り少なくなったディフェンスのタイミングで、日本がラインを変えてきました。高さのある池選手と乗松選手を入れることで、ターンオーバーを取りに行く積極的なディフェンスフォーメーションです。
しかし、激しいプレッシャーに対峙するオーストラリアのオフェンスも、巧みな戦術を使ってかわします。攻撃側に与えられた “40秒ルール” という制限時間内にゴールを奪えないと判断したオーストラリアはタイムアウト。フォーメーションを再構築してからリスタートしました。このタイムアウトは残り時間15秒を切った時点で取られると、リスタート時には15秒に回復した状態になるため、40秒の攻撃時間が最大55秒まで伸ばすことができ得点する確率が上がるという訳です。
こういったオーストラリアの質の高いオフェンスから、そう簡単にターンオーバーを取ることは出来ませんが、プレッシャーを続けることで一寸でも集中が切れた時に一気に状況が変わっていくのです。
Game8-第4ピリオド
【3・3・1.5・0.5ライン】#21池選手(3.0)、#7池崎選手(3.0)、#22乗松選手(1.5)、#2長谷川選手(0.5)
42-41と息詰まる接戦のまま。いよいよ最後の8分に突入しました。第3ピリオドからオーストラリアは長谷川選手を抑えることで、日本の攻撃のリズムを崩しに掛かります。一方で日本代表も乗松選手がバット選手に何度も何度もプレッシャーを与える攻撃的なディフェンスを見せて、オーストラリアに攻撃リズムを掴ませません。
遂に!乗松選手と長谷川選手のディフェンスで焦りを見せたオーストラリアが痛恨のターンオーバーを許します。これをエース・池崎選手がしっかりと得点に結びつけて2点差のリードを広げました。
【3.5・3・1・0.5ライン】#32橋本選手(3.5)、#13島川選手(3.0)、#23小川選手(1.0)、#2長谷川選手(0.5)
ここでベンチから「ディナイ!」という声が飛びます。インバウンドする選手とパスを受けたい選手の間にディフェンスが入り込んで、オーストラリアのオフェンスの焦りを誘う作戦に出ます。思惑通りに焦ったオーストラリアはミスを連発!更にターンオーバーで3点差に広げます。残り4分を切って、バット選手にも疲れが見えてきた様ですね。
島川選手がブロックされるや否や、橋本選手が積極的に声を出してフォローする!若手がベテランをフォローする姿に、日本の車いすラグビーの未来が見えます。本当に良い動きで51-47と4点差まで広げましたが、この “世界で勝つためにはとても重要なライン” と目していたラインがオーストラリアに2度にわたって効果的に機能したことは、パラリンピック・パリ大会で金メダルを目指す日本代表にとって、大きな成果となったと思います。
【3・3・1・1】#21池選手(3.0)、#7池崎選手(3.0)、#1若山選手(1.0)、#9今井選手(1.0)
タイムアウトを取った日本代表は、主力ラインで最後の逃げ切りを図ります。一方のオーストラリア側は若手選手のラインに入れ替え。反撃する余力無く57-52で日本代表が4連勝を飾り、早くも最終日のGold Medal Gameに駒を進めることとなりました。
絶妙のコンビ技が炸裂・若山 英史選手、今井 友明選手のコメント
「僕たちは二人で一人ですから(笑)」と仲の良さをアピールした若山選手は、「僕たちはやるべきことをしっかりやってきた。ラインの成熟度も上がり、その成果が出た試合だった。」と自信を持って準備して臨んだ充実感を教えてくれます。
「(オーストラリア戦は)2試合共に第4ピリオドで相手の集中力が切れたことが勝因だったが、これもゲームプランに沿って自分たちのプレーを貫けたからです。」と今井選手も同調しつつ「ランとパスのどちらかを選択かのタイミングが良く、コミュニケーションも取れていました。とは言え決勝に向けてオーストラリアも対策を講じてくるはず。油断せずこちらも修正ポイントをしっかり共有して臨みます。」と気を引き締めていました。
個人技、俯瞰力でラインを統制・島川 慎一選手のコメント
「ミスは多少ありましたが、自分たちのやりたいラグビーができました。前半は我慢だと分かっていたので、そこもしっかりと耐え抜いてやるべきことをやれたのが良かったですね。」と第一声を上げた島川選手の顔も充実感に溢れています。バット選手とのマッチングで圧倒したことを聞かれると「東京2020以降もフィジカル強化だけでなく、経験を深めて俯瞰力を高めてきました。バットはやはり強い選手ですが、フィジカルでもスピードでも負けない自信はあります。」とニッコリ。「橋本選手とのラインも日頃から一緒に練習していることもあり、良いラインになって来ました。どのラインでも戦えることが自信に繋がっているので、この自信を保持して決勝まで勝ち切りたい。」と、しっかりとした口調で決意を話してくれました。
AOCを振り返って(と、オマケ):乗松 隆由レポート
ここまでの4試合、日本代表の全選手が高い集中力でミスを最小限に抑え、個々のフィジカルと協調したチームプレイを見せて快勝に導いてくれました。全選手がMVPと言っても過言ではありません!しかし、その中で敢えて一人を挙げるとすれば、やはり橋本 勝也選手です。
ケビンHCはこれまで、ここ一番の場面で橋本選手のラインを使う場面が少なかった。しかし、AOCでは大事な場面で積極的に橋本選手を使い、その期待に橋本選手が応えるという新生・日本代表の形が見えた展開となりました。特に、今日は倉橋選手が欠場し、オーストラリア戦に有効であった【3・3・2・0ライン】が使えなかったにもかかわらず勝ち切れた。今日の一戦、パラリンピック・パリ大会が終わった時に振り返って「あぁ~ あのAOCの試合が、日本の車いすラグビーの新時代を開いた瞬間だったんだね!」と話せるような印象深い試合だったと思います。
AOC開催期間中、車いすラグビーを応援してくれている企業がブースを多数出展。私も “車いすラグビー体験イベント” を三井不動産ブースで、同じチーム “AXE” でプレーしている、パラリンピック・リオデジャネイロ大会・銅メダリストの山口 貴久選手も、同僚の池選手と橋本選手を応援する日興アセットマネジメントのブースで、ファンの皆さんに車いすラグビーを知っていただくお手伝いをしていました。
これからも現役選手として車いすラグビーをプレーするだけで無く、こういった “スポーツをささえる” 企業の皆さん、“スポーツをみる” 皆さんと一緒に日本代表のパリ大会での金メダル獲得を応援し、車いすラグビーの人気拡大に努めていこうと思います。
また、AOCを最後に優待したケビンHCに変わって日本代表を率いることになった岸 光太郎さんは、私や山口選手と同じクラブチーム “AXE” でプレーしている現役車いすラグビー選手なんです! 岸選手(新HC)は、Journal-ONEで「AXEの頭脳」と呼ばれる理論派。岸選手、羽賀選手、倉橋選手を含む私たち “AXE” の活動も各地で行っていきますので、皆さんも是非一度プレーを観ていただいて、車いすラグビーの魅力を体感して欲しいと思います。また、コートでお会いしましょう!
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