フォーカスした課題を効果的に克服
「この練習は、トライした直後に相手がコートに投げ入れるボール(インバウンド)を敵陣内で積極的にディフェンスして奪うための練習なんですよ。」と、取材陣に笑顔で丁寧に説明してくれます。
コートの1/4を使い、4人のライン(コート上4名の合計点が8点以内となるように編成されたチーム)がフォーカスポイントにしっかり集中できるように反復練習を重ね、1/2、全面と徐々に制約を外していく効果的な練習を取り入れているストーマーズ。
コーチを兼ねる三阪選手が、プレーごと更なる改善ポイントをメンバーに伝えると、すかさず中町選手を中心に互いの視点から確認。コミュニケーション力とチームプレーのスキルを同時に引き上げていく効率的なメニューは三阪コーチが考案したメニューです。
先ほど練習の意図を教えてくれたスタッフが、スマートフォンでプレーを撮影しながらホイッスルをテンポ良く吹いています。ボールを小脇に抱え、テキパキと動き回るこのスタッフは渡邊 萌衣さん。今年オープンした北海道日本ハムファイターズの話題の本拠地・” エスコンフィールドHOKKAIDO” がある北海道北広島市出身の新加入スタッフなのです。
今年加入したとは思えないほどプレーを良く知っていて、練習サポートの手際も良い!聞くと、「実は私、2018年からストーマーズを応援し続けているファンだったんです。」と、取材陣納得の自己紹介を即座にしてくれました。「東京の大学に通っている時、アルバイトをしていた焼き肉店に、JAPANのジャージーを着た日本代表の選手たちが食事に来たんです。それで、なんの競技なのかな?と興味を持って見ていたら、車いすラグビーの日本代表で。そこから試合を観に行くようになったんです!」と、今まで知らなかった車いすラグビーに “一目惚れ” した出会いを教えてくれた渡邊さん。
渡邊さんの大学での専攻は健康福祉だったこともあり、車いすとJAPANのジャージーの装いに “ビビッときた” のも頷けます。“観る人” から “支える人” に立場が変わった渡邊さんは、観る角度が劇的に変わったと言います。「応援しているときは、ボールを運ぶハイポインターに目線が行っていましたが、スタッフ側に回ると相手のオフェンスを40秒耐え忍んでターンオーバーするような戦略的なプレーに目が奪われるようになりました。」と、車いすラグビーの “ツウな魅力” 教えてくれます。「今日のような練習で、役割を確認しながら何度も反復してきたプレーが “ここ一番” の場面で機能した時にベンチ一体となって大声で喜ぶことが快感になっています。ルールも次第に詳しくなってきて、益々車いすラグビーが好きになっています。」と話す渡邊さんは、その楽しさを少しでも多くの人に伝えるべくスマホで撮影してはInstagramにアップしているのです。
「試合では中々観ることの出来ないシーンを撮影することを心がけています。ストーリーは短くなければ観ていただけないので、とにかく15秒以内で “これは!” というシーンを見付けては公開しているんです。」と、奥深い動画を頻繁に公開しているストーマーズInstagramの極意も教えて貰いました。
他チームとの助け合いで技術を磨く
昨年から車いすラグビーの魅力を一から伝えようと、埼玉を本拠地とするAXE(アックス)に密着して取材もしてきたJournal-ONE編集部。東京・お台場にある日本財団パラアリーナで行われたAXE練習の取材でお見かけした選手にようやく取材をすることができました。
「千葉県に住んでいるので、ストーマーズの練習がない土日は、都内で練習している他のチームに混ぜてもらって練習しているんですよ。」と、爽やかな笑顔が印象的な今野 匡人選手が、都内で良くお会いしたご縁の理由を教えてくれました。
フルタイムで勤務をしながら競技を続ける今野選手は、中町選手や橋本選手といった日本代表の選手たちとプレーするため、「平日は夕方から家の近くで自主トレをしたり、週末にAXEさんのなどの練習に参加させてもらったりと、工夫しながらパフォーマンスを上げるよう努めています。」とのこと。
自分の時間を殆ど車いすラグビーに捧げている今野選手ですが、「バスケットボールが好きで、この前のワールドカップはAXEの乗松(隆由)選手と観戦しました!乗松選手とは仲が良くって、家に泊まりに行ったりもしています。」と、Journal-ONEがAOCで解説をお願いしたAXEの乗松 隆由選手とのエピソードも教えてくれました。
「今シーズンは、チームのスターターとして試合の流れを作る役割を与えられています。日本代表の橋本、中町の動きを助けるプレーで彼らが波に乗れるようにすることが僕の役割。全体練習という貴重な機会にコミュニケーションを良く取り、彼らが望む動きが自然と出来るように集中して取り組んでいます。」と、話す今野選手は、練習の合間に中町選手と積極的に会話。中町選手の身振り手振りに頷いては、いろいろな動きを試していました。