人口50万人近くの松戸市でも、「これでも数年前と比べ、チーム数や選手数は2割近く減りました。」と矢野さんは話しますが、少子化の波が押し寄せる中でこれだけの選手が集まる光景は羨ましい限りです。
JDリーグの杉浦 穂華選手(日立サンディーバ)や幸内 保乃香選手(日本精工ブレイブベアリーズ)、昨秋に東京で開催された “第1回WBSC女子U-15ソフトボールワールドカップ” に出場した大川 沙菜選手など、多くのOGを輩出している松戸市のソフトボールクラブ。LA2028のその先へ続く選手たちを育てようと、トップチームの練習メソッドを吸収しようと、48人の熱心なコーチたちも集まり、ネット張りやグラウンド整備をして選手たちを待ち受けていました。
すると、ワゴン車から現われたのはシャイニングベガの主力選手4名! リーグ戦初制覇はもちろん、LA2028の日本代表を目指す選手たちを目の前に、未來のオリンピアンたちも少し緊張した表情で対面式に臨んでいます。
トレーニング、守備、打撃、投球の4つのゾーンに分かれたシャイニングベガの選手たち。参加者は4つのグループに分かれ、時間を区切って全てのセッションに参加する効率的メニューのクリニックがいよいよ始まりました!
楽しくトレーニングを -池上 桃花捕手
「バッティングやピッチングなどの技術練習ではないので、楽しくトレーニングをしてもらえるようにメニューを考えてきました!」と話す池上 桃花選手。身体全体を徐々に温めながら、ソフトボールに必要な下半身を強化するメニューを次々と紹介していきます。
「子どもの頃からとにかくたくさん練習して、人との繋がりを大切に過ごして欲しいです。」と、JDリーガーになるための心構えを伝える池上選手と選手たちのやりとりは、教育実習に来た先生が生徒たちを体育の授業をしているかのような楽しそうな雰囲気。
徐々に懐いてきた選手たちも池上先生に話しかけたくて、休憩の時間でも側を離れません(笑)。
練習の最後には、2チームに分かれてリレー形式のダッシュで勝負! 選手たちのテンションは一気に高まり、遠慮がちだった選手たちに大きな声と笑い声が起こります。負けたチームにはちょっとした “特別トレーニング” が待っていましたが、負けたチームの選手たちはとても嬉しそうにそのメニューをこなしていました。
ボールとの距離感を大切に -須藤 志歩選手
「もっと基礎的なメニューをするつもりだったのですが、想像した以上に選手たちのレベルとソフトボールに対する意識が高くて! 少しレベルの高い練習にスイッチしました。」と話す須藤選手。昨年夏の “日米対抗ソフトボール2023” では、JAPANのユニフォームで軽快な守備を見せてくれたリーグ屈指の守備力を誇る須藤選手の “世界レベルの守備クリニック” が始まりました。
地面に印を付け、スローイングや捕球の重要なポイントを分かりやすく説明する須藤選手の指導に、選手たちは頷きながら地面にTの字や三角形を描きながら、身体の使い方を楽しく学びながら練習に取り組んでいます。
須藤選手は、「ボールを捕球する場所と自分の身体をいつも一定の距離に保つことが最も重要なんです。」と、その極意を惜しみなく子ども達にも伝授! シャイニングベガの練習でも常に行っている “ケンケンをしてからのゴロ捕球” といったトップチームでも大事にしている基礎練習に進むと、選手たちの動きは格段に良くなってきました。
「私が皆さんの年の頃は、こんなにキャッチボールも上手ではありませんでした。そんな私がJD.リーグでプレーできているのですから、今日このクリニックに参加してくれた全員にJDリーガーとなるチャンスはあると思います。」と、選手たちにエールを送っていました。
難しい技術にも果敢に挑戦! -福重 さくら選手
「小学生には少し難しいかもしれませんが、折角の機会なので挑戦してもらいました。」と話すのは、バッティングを担当した福重 さくら選手です。野球には無いソフトボール独特の打撃テクニック “スラップ” の習得と、野球でも大事な得点を獲るためのテクニック “バント” のクリニックを行いました。
“スラップ” とは、左打者がバッターボックスの中で助走をつけ、ボールをバットに当てながら一塁に向かってダッシュするという高等テクニックです。軽く当てて緩いゴロを打つことで内野安打を狙ったり、強く叩きつけて内野の頭を越すヒットを打ったりとチームの攻撃バリエーションが一気に増やすことができる高度なバッティング技術なのです。
「先ずはスラップをする時に注意するポイントだけを覚えてもらえたら。」と、選手たちを集めて3つ4つのポイントを分かりやすく話す福重選手。その話を神妙に聞きながら、選手たちもそれぞれバットを構えて感覚を掴んでいきました。
流石にすぐに習得することは出来ませんが、それでもポイントを絞った指導で選手たちの構えも様になっています! 「あとは、足の運び方ポイントを注意すればOK!」「上手い! 上手い! 次はサード側に転がすことを意識してみて。」と、次々と打席に入る選手たちひとりひとりに福重選手がアドバイスを送ると、選手たちは嬉しそうにバットを構えて次の順番を待っています。