何より、最も大きなカギを握る存在がトム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)だ。現役時代に日本で長くプレーし、日本人の特性をよく知るホーバスHCは、東京オリンピックで女子代表を銀メダルに導いた手腕を評価され、男子代表の改革に着手。
選手に自信を植えつける巧みな人心掌握術で、前述の通り昨夏のワールドカップで男子代表をも飛躍させた。日本バスケット界の歴史に残る名将として、パリでどのような采配を披露するのか、大いに楽しみだ。
鍵を握るのはブラジル戦
グループBに入った日本は、日本時間7月27日(土)のドイツ戦を皮切りにグループラウンド3試合を戦う。FIBAランキング26位の日本に対してドイツは同3位、フランスは9位、ブラジルは12位といずれも格上。
しかし、昨夏のワールドカップも5試合のうち4試合までがランキングで36位(当時)の日本を上回る相手との対戦だったが、1次ラウンドで24位のフィンランドを撃破し、2次ラウンドでも17位のベネズエラに勝利している。
今大会は、グループラウンドで1勝すれば8カ国による決勝トーナメント進出の可能性が出てくる。ランキングを考えると、最も勝機を見出せそうなのはやはりブラジル戦ということになるだろう。
主力のレオナルド・メインデルと昨シーズン、アルバルク東京でともに戦い、そのプレースタイルを知り尽くしている吉井はマッチアップする可能性も高く、特にディフェンス面で重要なキーマンになりそうだ。
戦術のベースとなるのは、ホーバスHCが女子代表でも披露した「5アウト」と呼ばれるオフェンスシステム。スペースを広く取り、全員が積極的に3ポイントを狙うという、NBAでも主流となりつつある世界最先端のオフェンスだ。そこに、日本が従来得意とする攻守の切り替えの速さが加われば、どの国にも脅威を与えることができるはずだ。
女子代表は7月4日と6日にニュージーランドを、男子代表は5日と7日に韓国をそれぞれ東京・有明アリーナに迎えて強化試合を実施しているが、それに先立つ3日には同会場で男女代表が一堂に会する「日本一丸イベント」を開催。
公式ファンサイト「AKATSUKI JAPAN Plus+」の有料会員300人が会場に招待された中、男子代表はこの時点で候補に残っていた16選手のうち、八村を除いた15選手とホーバスHCが登壇した。
普段は見られない男子選手と女子選手のトークセッションや、ファン・ブースターからの質問に選手が答えるコーナーなど、およそ1時間のイベントは和やかに進行。イベントの最後には、ホーバスHCから「ベスト8に入りたい。(入れれば)ショック・ザ・ワールドだと思います」という力強い決意表明もあった。
女子代表の歓喜の陰で、男子代表が3戦全敗の失意に終わった東京オリンピックから3年。ホーバスHCの掲げる目標が達成されれば、日本国民は改めて日本バスケットの大きな節目の生き証人となる。
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