古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影
取材・文:
アレックス・グレイ(イギリス)
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Click here to read English article.日本の歴史や文化を学んだことのある外国人ならば、三重県伊勢市にある伊勢神宮のことを一度は耳にしたことがあるでしょう。 日本人の心のふるさとであり、日本で最も格式の高い神社である伊勢神宮。日本の歴史、文化、そして日本人にとって極めて重要なこの美しい伊勢の地には、毎年多くの人々が訪れます。 多くの日本人の心を魅了するこの聖地を、日本へ旅行する折りには、是非とも訪れるべき場所のひとつです。

ここでは、二見興玉神社と伊勢神宮を訪れるべき理由と、最も素晴らしい体験が出来るコースをご紹介していきます。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

二見興玉神社と伊勢神宮を訪れるべき理由

伊勢神宮(皇大神宮)は、日本の最高神である天照大御神をお祀りする、日本で最も重要な神社です。天照大御神は2000年以上にわたって、日本人の守護神として内宮にお祀りされています。
20年に一度、社殿を新しくして、大御神にお遷り願う神事(式年遷宮)があるなど、常に清らかな空間が保たれている場所なのです。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

古来、伊勢神宮参拝の折りには、二見興玉神社の海で身を清めてから参拝するのが習わしとなっています。二見興玉神社もまた、導きの神である猿田彦大神をお祀りし、波間はるか700mの海中にお鎮まりになられる霊岩・興玉神石がある神聖なる地なのです。 さらに神々しいのは、海面から突き出た2つの岩・夫婦岩(めおといわ)です。5本の縄を絡めたしめ縄で結ばれていて、仲の良い夫婦のように見えることからその名で呼ばれています。身を清め、自然を愛でることができる平和でスピリチュアルな場所です。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

今回私は、二見興玉神社と伊勢神宮を巡る2日間のツアーに参加し、古の参拝者たちの足取りを追う旅をしました。 ただ観光地を訪れるだけではできない感動的な体験と、知ることのできない貴重なお話を聞くことができました。

二見興玉神社と夫婦岩

旅は、日本の伝統的な建物が立ち並ぶ小さな町、二見から始まります。 駅から歩いてすぐのところにある旅館 “岩戸館” にチェックイン。直ぐに夕日を見るためにビーチに出てみると、とても素晴らしい景色に出会えました。二見の美しい自然は、息をのむほどの景観でした!古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

日が暮れてから、風情ある提灯を受け取り、二見興玉神社での夜の浜参宮に参加しました。普段、夜間の参拝が出来ない二見興玉神社で、特別な参拝をすることができました。 静かな夜の暗闇の中で、提灯に照らされた二見興玉神社へお参りした後、海辺を歩くと心が落ち着きます。冬至前後の満月の夜(10月~1月頃)に訪れれば、岩間から昇る満月を見ることが出来ます。これは見逃せない風景ですよ!古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

二見興玉神社では、浜参宮をすることができました。今回の儀式では穢れを祓って身を清めるだけでなく、願い事を短冊に書いて神様に祈りを捧げることもできました。 一緒に参拝した日本人の方から、「これだけ近くで、ひとりひとりに時間を掛けて丁寧にお祓いをしていただける参拝は珍しいですよ。」と教えていただきました。参拝の後は、地域のお料理が食べられる “松風軒” に向かいました。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

地元食材を使った日本食が自慢の松風軒

二見でおすすめのレストランは、地元の食材を丁寧に調理した料理を提供する日本料理店 ”松風軒” です。伊勢神宮の神々へのお供え物には、古来より地元産の塩や貝類など、同様の食材が使われているものもあるとのこと。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

その二見の塩をまぶした季節の天ぷらは確かに美味しかったです。私のようなビーガンでも、事前にお店の方に伝えておくと、食事をアレンジしてくれるのは有り難いですよね。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

二見興玉神社への参拝に便利な宿・岩戸館に泊まる

夕食後はホテルに戻り、眠りに就きました。岩戸館には男女別々の大浴場があり、寝る前に旅の疲れを癒すには最適です。布団と畳のある伝統的な和室は、快適でとても暖かかったです。そして、地元の方にオススメしていただいた、日の出を見るために朝6時に起き、海岸へと向かうことにしました。岩戸館の素晴らしいところは、神社や夫婦岩から歩いて数分のところにあるため、日の出の直前に寝床から出れば、楽に日の出が見られるというところです。

この岩戸館、素敵なご家族が経営されているんです。ご主人に話を聞くと、彼らがこの旅館と二見の地域をいかに大切にしているかが良く分かります。二見興玉神社へお祓いに出かけ、朝から宿泊されたお客様を神社にご案内。ブログには毎日日の出の写真も載せていて大忙しです。「二見興玉神社は、二見の海や太陽、夫婦岩に感動し、感謝の気持ちや安らぎを感じる自分自身に帰る場所です。」と、ご主人が二見の素晴らしさについて話してくれました。そして、「自然の中に安らぎや美しさを見出すことが神道の本質であり、それがとても身近に感じられる素晴らしい場所である。」とも付け加えてくれました。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

二見興玉神社での日の出に感動

旅館のご主人から、「晴れた日であれば夫婦岩の間に富士山が垣間見えることもあるから、日の出前に二見興玉神社にお参りすると良いですよ。」と素晴らしい情報を教えていただきました。この日は天気良く、その景色も期待を裏切らないものでした。夏至(5月~7月)の頃に訪れれば、富士山から昇る朝日も夫婦岩の間から見ることもできるそうですよ。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影
夜明けに神社の近くの海を前に立ち、山と神社の間から夫婦岩と海へと昇る日の出は、とても不思議な光景でした。この場所がいかに神聖で、なぜ多くの人が伊勢参りを始めるためにここを訪れるのか、容易に理解することができました。海を見つめながら、今無事に生きていることに、私は計り知れない平和を感じていました。この貴重な瞬間と、早朝の夫婦岩に映る美しい光は、二見に宿泊してこそ味わえるものでした。是非また訪れてみたいと思います。夫婦岩 -Journal-ONE撮影

かつての老舗旅館・賓日館で歴史を学ぶ

日の出を見た後は旅館に戻って、美味しい朝食をいただきました。私がビーガンであることを伝えていたので、それにも快く対応してくれました(卵など、食べられないものは全て事前にお伝えして下さいね)。岩戸館の名物は寄せ豆腐です。自家製の柔らかくておいしい豆腐と、地元のさまざまな食材を載せたトッピングは見た目にもとても美味しそうな逸品です。老舗旅館・賓日館の朝食 -Journal-ONE撮影
朝食後、重要文化財の賓日館を訪れました。博物館になる前は旅館であった賓日館は、多くの皇族をお迎えしてきた歴史があるとのこと。現在もその豪華な部屋を見ることができ、年間を通して様々なイベントが開催されているんですよ。重要文化財の賓日館 -Journal-ONE撮影

重要文化財の賓日館 -Journal-ONE撮影

五十鈴勢語庵の塩羊羹に舌鼓

二見に来たならば、”五十鈴勢語庵” の二見浦岩戸の塩ようかんは外せない旅の楽しみです。宿泊した “岩戸館”さんも絶賛する和菓子屋さんで、二見の塩を使ったようかんが有名です。歴史も古く、昔からこの地域でお菓子を販売していたそうです。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影
塩を混ぜることで、甘過ぎない絶妙な風味のようかんに仕上がっています。和菓子初心者の外国人の入門編としても最適ですし、あんこやようかんが苦手だという外国人の方にもおすすめです。五十鈴勢語庵の塩羊羹 -Journal-ONE撮影

“無事に帰る” 願掛けのお土産を買うなら大洋堂

二見での土産をお探しの方、カエルが好きな方は大洋堂がオススメです。二見興玉神社の周辺には、カエルが神の使いとされていることから、カエルの像がたくさんあります。また、カエルは「帰る」と読み、旅の安全を祈願するシンボルでもあります。カエルは、「無事に帰る」と同じ発音なので、このような願が掛けられたんですって。
大洋堂には、あなたの知らないカエルグッズがたくさんあります。季節ごとにお土産の種類も入れ替わるそう。お守りや家に飾るための像もありますよ。カエルの像 -Journal-ONE撮影

古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

散策に便利な二見浦観光案内所

Wi-Fiの利用や観光案内をして欲しい場合は、二見浦駅と二見興玉神社を結ぶ道中にある”二見浦観光案内所” を利用することをオススメします。また、今回のツアーではここから伊勢神宮までの貸し切りバスが用意されていました。個人でこのコースを旅する場合ですと、二見浦駅から伊勢市駅まで列車で行けますので、ご安心を。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

伊勢市駅周辺はランチが充実

伊勢市駅に到着したら、昼食やコーヒーブレイクをするのに最適な場所が幾つかあります。伊勢神宮への参道を散策しながらお店を探してみては如何でしょうか。伊勢に来たら、やはり “伊勢うどん” を食べずにはいられません。醤油出汁が効いた柔らかいうどんが特徴の伊勢うどん。伊勢うどん -Journal-ONE撮影

うどんを食べた後は、甘いものが欲しくなります。伊勢名物の ”赤福餅” は、お餅に甘くてなめらかなあんこをのせた和菓子。コーヒーやほうじ茶との相性は抜群です。伊勢神宮へ参拝する前に、赤福餅を食べるのもオススメしますよ。伊勢名物 ”赤福餅” -Journal-ONE撮影

伊勢神宮で神聖な空気を感じて祈る

伊勢神宮は、市内外にある125の神社を管理しているということを知らない方も多いのでは無いでしょうか。その中でも特に重要なのが、伊勢神宮の外宮と内宮です。外宮は豊受大御神(とようけのおおみかみ)をお祀りしています。内宮の天照大御神(あまてらすおおみかみ)のお食事を司る御饌都神(みつけかみ)である、衣食住、産業の守り神としても崇敬されているのです。
伊勢神宮の参拝は、まず外宮、次に内宮の順で参拝します。ツアーでは、今回に限り特別に神職さんの案内で神宮参拝することができました。

豊受大神宮(外宮)での参拝

自然に囲まれた外宮は、穏やかで、落ち着きと畏敬の念を感じさせてくれる場所でした。特にそれぞれにお祀りされている神社ではとても神聖な空気を感じ、高位の神々をお祀りしている場所は周囲を囲われ、隠されています。日本人は昔、写真を撮られることは魂を吸い取られることだと考えていたため、神様がいらっしゃる場所、即ち穢れを祓い浄化された場所では写真撮影が禁止されているのです。神職の方は毎日朝と夕の2回、御饌殿(みけでん)で行われる神事でお供えものを、神々に捧げるのだそうです。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

いよいよ皇大神宮(内宮)での参拝

いよいよ内宮への参拝です。今回の訪問地の最後となります。内宮を訪れると、巨大な鳥居と全長100mのとても印象的な宇治橋が出迎えてくれます。この木造の橋も20年ごと執り行われる神事で建て替えられるんです。いわゆる “式年遷宮” ですね。案内してくださった神職さんによると、20年間で1億人以上の参拝者の方々が橋を渡るので、20年後には橋の上半分がすり減るんだそうです。凄いです!古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

伊勢神宮内宮は、日本国民から総氏神として崇められる天照大御神をお祀りしている神社です。その特別な霊的存在感は、訪れた私のような外国人でも感じることができます。内宮のスケールと美しさには目を見張るものがあります。神宮にあるすべてのもには、この神聖な神が宿っていることは明らかです。神宮の社殿は、特殊な工法で建てられています。20年ごとにすべてを新しく建て替えるという日本人の献身と配慮は想像を超えるものではありますが、その目で伊勢神宮を見れば、畏敬の念を覚えてその神事に含まれる重要な意味を理解出来るようになるでしょう。古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

古式ゆかしい参拝の旅で二見興玉神社から伊勢神宮を巡る-Journal-ONE撮影

神宮に別れを告げて

丁寧に説明をいただいた後には、多くの参加者から質問が飛び交うなど、大好評のうちに内宮の参拝が終了しました。宇治橋前からバスなどで伊勢市駅まで戻り、名古屋行きの列車に乗れば、簡単に家に帰ることが出来ます。

日本の歴史や文化に興味がある方、日本の神社仏閣巡りが好きな方、日本の心のふるさとである伊勢神宮を是非訪れて下さい!

■記者プロフィール
アレックス・グレイ
英国、リバプール近郊生まれ。日本のライフスタイル並びに旅行記者。日本文学を通じて日本に興味を持ち、夏目漱石、東野圭吾、吉本ばなななどの作品を好む。日本のライフスタイル・文化などのメディアサイト「Guidable.co」の編集長として、外国人向けに日本での生活に関する記事を執筆・編集。趣味はヨガと静寂の中で平和を感じること。好きな日本食は油揚げ。
アクセス
①二見興玉神社 ~②豊受大神宮(外宮) ~③皇大神宮(内宮)
  • ①JR名古屋駅-快速みえ(約110分)-二見浦駅-徒歩(15分)
  • ②二見浦駅-JR参宮線(約10分)-伊勢市駅-徒歩(5分)
  • ③豊受大神宮(外宮)-バス(10分)

 

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