最も悔やまれたのが、第2戦のフランス戦だ。開催国が相手という圧倒的アウェーの状況で、ドイツ戦に続いて追いかける展開となりながらも、日本は奮闘。第2クォーター終盤には一時リードを奪い、前半を5点ビハインドで終えると、第3クォーターも一進一退の攻防となり、再び5点差で第4クォーターを迎える。
ここで、日本にとってはまさかの事態が発生する。唯一の現役NBA選手である八村塁が、この試合2つ目のアンスポーツマンライクファウルを取られ、コートを去ってしまったのだ。ドイツ戦で20得点を叩き出し、この試合も既に24得点を挙げていたエースの退場は、日本にとっては大打撃のはずだった。
しかし、ここからの日本の粘りは驚異的だった。河村勇輝とジョシュ・ホーキンソンが3ポイントを連発し、守っては渡邉飛勇が相手のダンクをブロックするなど、ビッグプレーが次々に飛び出した。残り1分を切って同点の状況から、河村の4本のフリースローで4点をリードし、勝利は目の前に迫っていた。
ところが、残り10秒に3ポイントを許し、しかも河村がファウルしてしまう。フリースローを決められて同点となり、勝負はオーバータイムに突入。渡邊雄太を筆頭に主力の出場時間が長くなった日本は脚が止まり、最後は90-94で敗れる結果となった。
河村のファウルについては世界中のバスケット関係者やファンの間で「本当にファウルだったか」と議論を巻き起こしたが、大舞台の場数が少なかった日本に対し、審判がファウルを予測する状況を作ったフランスが一枚上手だったことは間違いなく、経験値の差が勝敗を分けた。
大黒柱の負傷離脱が大きく響いた第3戦
そして第3戦はブラジルとの対戦。女子代表も第3戦に勝てば決勝トーナメント進出の可能性はあったが、同様に男子代表も1勝2敗なら決勝トーナメントに進むチャンスはあった。
しかし、前半に背負った11点ビハインドを第3クォーターに巻き返し、4点差と射程圏内で第4クォーターを迎えながらも、やはり終盤は主力の疲労が色濃く、84-102と力尽きた。女子代表が山本を失ったのに続き、男子代表もフランス戦で八村が負傷していたことが明らかになり、ブラジル戦を前にチームを離脱。もし八村が出場できていればと、これも悔やまれるところだ。
その後、決勝戦でアメリカに挑戦したのはフランス。銀メダルに終わったとはいえ、11点差という結果を考えると、フランスにも勝つチャンスはあった。日本がそのフランスを大いに苦しめたという事実は、成長を物語るこの上ない材料と言っていいだろう。
1試合平均出場時間が36分を超えたホーキンソンと、フランス戦の29得点を含めて3試合の合計で61得点を叩き出した河村の働きは出色。特に、NBAチームと”イグジビット10契約”(開幕前のトレーニングキャンプに参加できる契約)を結び、田臥勇太、渡邊雄太、八村に続く日本人4人目のNBA選手を目指す河村にとっては、本契約を勝ち取るための良いアピールになった。
世界との差を痛感させられた東京大会と比較すると、同じ3連敗でも内容は全く異なり、女子代表と比べても希望を感じさせる3試合だった。東京大会の女子代表に続き、今度は男子代表を飛躍させたトム・ホーバスHCの手腕には脱帽するほかないが、いずれにしても、出直しとなる女子代表はもちろんのこと、爪痕を残した男子代表も、この3連敗が意味のあるものだったと後に言えるよう、次なる一歩を踏み出さなければならない。
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