大混戦の東地区首位争い
JDリーグの2024シーズンリーグ戦も終盤、西地区ではトヨタレッドテリアーズが3シーズン連続優勝を決めた10月6日のJDリーグ 第11節。前日、あいにくの雨で順延となった東京都多摩市で開催された多摩ラウンドはこの試合が一戦目となる。
子供から大人まで人気のテーマパーク、”サンリオピューロランド” にほど近い都心近郊の住宅街の中、突如現れる “多摩市立一本杉公園野球場” でJDリーグ初の公式戦が開催された。
記念すべき多摩市初開催の対戦カードは、中盤に怒濤の13連勝を達成した首位の “日立サンディーバ” と、東地区二連覇中の “ビックカメラ高崎ビークイーン” が激突する首位攻防のゴールデンカード。
今シーズンの東地区優勝レースは、例年にない大混戦。日立とビックカメラ高崎のゲーム差は僅かに1.0。さらに0.5ゲーム差で3位の “戸田中央メディックス埼玉” が続いている。ワールドカードでプレーオフ進出の可能性がある4位の “ホンダリベルタ” までが2.5ゲーム差にひしめいている。
意地、プライド、冠をかけた先発起用
この日の試合を含めて、6試合を残す両チームはたった一つの敗戦が地区優勝はおろか。プレーオフ進出までを逃す可能性がある両チーム。首位の意地か?2年連続王者のプライドか?優勝をかけた天王山に先発したのは、両チームが最も信頼する投手だ。
先ずは守備に着くビックカメラ高崎の先発投手がコールされると、集まった1,175人の観客から「おぉ!」「きゃぁ!」という歓声と、大きな拍手が起こる。日本が誇る世界のエース、”推しのソ” の上野 由岐子投手だ。
今シーズン、クローザーとして見事な火消しを見せてくれていた上野投手を、この場面で今季初先発に起用した岩淵 有美監督。また上野投手をリードする捕手にも “推しのソ” 炭谷 遥香選手を起用。ゴールデンルーキー・井出 久美選手を女房役に据え、インサイドワークの英才教育を施してきたが、日本代表のバッテリーを先発させたことからも、この試合にかける並々ならぬ決意が覗える。
対する日立の先発は、左腕・田内 愛絵里投手。左右に豪華な投手陣を擁する日立だが、中でも今シーズンの田内投手は安定感抜群。前半戦、東地区ナンバーワンの防御率でチームの首位躍進に貢献した田内投手に加え、捕手にはDH出場が続いた山内 早織選手を起用した村山 修次監督。DHに新加入のアメリカ代表・ Dejah Mulipola(デジャ・ムリポラ)選手を入れた超攻撃的なオーダーで、世界のエースを迎え撃つ。
初回から世界のエースに仕掛ける日立
試合が動いたのは初回、日立の核弾頭・東地区首位打者の藤森 捺未選手がファールで粘ってフルカウントから左越二塁打を放ち、いきなり先制のチャンスを作る。続く2番・笠原 朱里選手は当然ながらバントの構え。
厳しいバントシフトでプレッシャーを与えるビックカメラ高崎内野陣の隙を突いた予想外のプレーを日立が見せる。1-0から炭谷捕手が上野投手に返球した瞬間、藤森選手ががら空きになった三塁へ盗塁を試みた。
素早くベースカバーに入るショートの “推しのソ” 工藤 環奈選手のカバーリングを確認した上野投手は、慌てることなくサードへ送球して間一髪のタッチアウト。意表を突いたプレーでモメンタムを奪いにかかった日立だったが、経験豊富な上野投手を崩すことはできなかった。
再びチャンスを作る核弾頭
初回に大きなチャンスを逸した日立だが、3回に再びチャンスを作り上野投手にプレッシャーをかけていく。1死から9番・高瀬 沙羅選手が四球で出塁すると、チャンスを広げたのはまたもやこの人、1番・藤森選手だった。死球の後の初球を定石通りに振り抜いた藤森選手の打球は綺麗に一、二塁間を破る右前安打。世界のエース・上野投手から2打数2安打を放ち得点圏に走者を進めた。