ただ、バレー界は代表とクラブチーム、リーグに格差があった。今までは代表の盛り上がりを地域に引っ張れていなかった。サッカー、バスケなら3部まで合計50チームを超える「プロ」が全国に根ざして活動をしている。アカデミーの活動を通して普及や育成も手掛けている。SVリーグも、バレー界にそういった「広がり」を生むための取り組みだろう。
控えめだった開幕戦の演出
リーグの「ブランディング」を見るために、開幕戦は分かりやすい材料だった。筆者は過去にBリーグ(男子バスケ)、Tリーグ(卓球)の新リーグ開幕戦を取材しているが、このような大一番は可能な限り派手にやるのが定石と言っていい。新規ファン、メディアに印象付けるためにはインパクトが必要だ。
ただ、SVリーグの開幕戦は想定していたより地味な空間だった。よくいえば地に足のついた、無理のない会場づくりをしていた。東京体育館はメインビジョンのサイズが小さく、最新のスタジアムやアリーナのようなリボンビジョンもない。しかし外からビジョンを持ち込まず、そのまま使っていた。音響も特別なセッティングはしていなかった。
SVリーグは「品格と洗練」をテーマに掲げている。選手のコートインは15.6人の楽団が弦楽器を奏でる中で行われた。例えばバスケならヒップホップ、サッカーや野球だと、80年代&90年代のロックがよくBGMとして使われるのだが、それと違う方向性を打ち出していた。
日本代表が出場したネーションズリーグ、パリオリンピックはむしろ「派手目」の演出だった。FIVB(国際バレーボール連盟)主催の国際大会は演出スタイルが確立されていて、ファンを巻き込むためための「仕掛け」もある。ブロックが決まったら「MONSTER BLOCK」、サービスエースが決まったら「ACE!ACE!」、強烈なスパイクが決まったら「BOOM!! BOOM!!」と定番フレーズや振り付けも浸透している。
「品格と洗練」というコンセプトにどう「熱気」を加えるか
大河チェアマンはSVリーグの開幕戦後にこう述べていた。「日本代表はほぼ皆さん、日本を応援しに来ておられるので熱意を感じますね。ブルテオンのファンも、サンバーズのファンの方も、確かにいらっしゃるけれど、そういう文化はこれから根付いてくと思います。そこはいい意味での課題で、そこが変わってきたらもっと良くなると思います」。
バレーボールファンの熱が低いわけではないし、選手の発散するエネルギーも十分だ。Jリーグ、Bリーグとは違う色を出すことは大切で、「品格と洗練」というコンセプトも悪くない。一方でエンターテイメントである以上「熱気」は必要だし、大切だ。
各チームがどう色を出し、応援文化を作っていくか。さらに言うとファン同士のつながり、チーム単位のコミュニティがどう深まっていくか――。それはSVリーグがプロとして発展し、各地に根付いていくためのポイントだろう。
開幕戦は「大阪のチームがリーグ主催の試合を東京で戦う」という変則的なものだった、大切なのは24チームそれぞれの取り組みだ。今度は違う会場に足を伸ばして、その個性を味わってみたい。
主な取材対象はバスケットボール、サッカーだが、野球やラグビーも守備範囲。取材の疲れをスポーツ観戦でいやす重度の観戦中毒でもある。
軽度の「乗り物好き」でもあり、お気に入りの路線バスは奈良交通「八木新宮線」、沖縄バス「名護東線」と今はなき宗谷バス「天北宗谷岬線」など。