しかしながら、難しい仕事であることも覚悟の上。「この立場でできるのは僕しかいない」と指揮官の責任を日々感じながら選手たちと向き合い、「やるべきことはどのカテゴリーでも変わらない。それをやり続けるという信念を持ってやっていくしかない」と腹をくくっている。
シャンソン化粧品では選手たちにポジティブシンキングを植えつけ、結果を残してきた。同じように新潟を導くことができるか。
そして、覚悟という点では、五十嵐は鵜澤HC以上に強いものを持っている。この試合は3ポイント5本を含む18得点。司令塔にあたるポイントガードとして、「オフェンスをコントロールできる自信もあるし、自分が点を取らないといけないということは常に意識してるので、それが今日は良い結果につながった」と先頭に立ってチームを引っ張った。
その五十嵐は、1980年生まれの44歳。鵜澤HCの1歳上であり、いわゆる大ベテランの年齢だが、プレーもまだ若々しく、豊富な経験を武器にコート上で模範を示すことができる存在だ。
ただ、鵜澤HCが「この年齢でも頼りになる存在ですが、そこにばかり頼ってはいけない。彼のシュートが当たらないと勝てないというチームにはしたくない」と語るように、五十嵐への依存度が高くなることは望ましくない。
新潟再建へ着実に一歩を踏み出す
誰よりも厳しい目をチームに向ける五十嵐は、この日の勝利を受けてなお、「僕からしてみれば、まだまだ危機感が足りない」と辛口だ。それはやはり、今まで常に高いレベルでプレーしてきたという自負からきている。
「B3で戦う上で、『新潟には勝てない』と相手に思わせるくらいじゃないといけないという話もみんなにしたんですが、現在地はこのレベル。自分はレベルを落とすつもりはないですし、B1でプレーしていたクォリティーでやっていきたいです。
そのレベルについてこいとは言わないですが、ベースを上げていかないと勝てない。戦えるベースを作っていくことが、クラブを立て直す、チームを立て直す第一歩だと思ってます」。
再建を期して立ち上がったものの、「思っていた以上に難しい」とこぼす五十嵐だが、「連敗していてもこうしてたくさんのブースター(ファン)の皆さんがアウェーまで応援に来てくれるし、ブースターさんに勝つ姿を見せていくことが今の新潟にとっては一番大事」と決意を新たにしている。
新潟OBも復活にエールを送る
最後に、この日の対戦相手である湘南・堀田剛司HCのコメントも紹介しておこう。堀田HCもまた、クラブ創設と同時に新潟でプロキャリアをスタートさせたクラブOB。アシスタントコーチとしてコーチ業のキャリアをスタートさせたのも新潟だった。
鵜澤HCと五十嵐は、他クラブでもチームメートになった経験があり、それ以外にもかつての戦友が新潟には多く在籍しているとあって、今回の対戦は「懐かしい気持ちになった」と言うものの、「B1で戦っていたチームなので、B3に降格してきたのは残念ですね」と古巣の現状を憂えた。
しかし、アシスタントコーチとして、コーチ業のキャリアも新潟で始めた堀田HCは、「アルビレックスで学んだことがその後にも生きたし、成長させてもらったから、今こうして湘南のHCとして仕事ができている」と感謝の気持ちを抱いているのもまた事実だ。
クラブの歴史を紡いできた多くの人が誇りを持ち続けるためにも、新潟は必ず再起しなければならない。
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