続いてはツエーゲン金沢(サッカー)を取材
24日はJリーグディビジョン3(J3)の”ツエーゲン金沢”vs.”奈良クラブ”を見に行く。”金沢ゴーゴーカレースタジアム”は今シーズンから使われているフットボール専用のスタジアムで、IRいしかわ鉄道の東金沢駅、北陸鉄道の磯部駅から徒歩圏内。さらに金沢駅からはシャトルバスも出ている。観光客が公共交通機関でふらっと見に行きやすい立地だ。
試合前にいただいたスタジアムグルメ、通称「スタグル」は金沢カレー。サクサクで揚げたてのカツが乗っていて、ルーとの相性も抜群だった。店の行列を見ると奈良クラブのサポーターが過半数を超えていたが、「手軽に、ついでに楽しめる金沢グルメ」としては大正解だ。
この試合はJ3最終節で、両チームとも昇格・降格はもう関係なかった。言ってしまうと消化試合なのだが、いちサッカーファンとしてかなり楽める試合だった。最大のカタルシスは後半のロスタイム。ツエーゲンは90+8分の「ほぼラストプレー」で得たセットプレーから、キャプテンの畑尾大翔がゴールを決めて、1-0と勝ち切った。
試合後、畑尾はこう語っていた。
「今シーズンはサポーターの皆さんに悔しい思いばかりさせてしまっていました。もし、今日のゲームを落としていたとしたら、来年応援しようと思ってもらえなかったと思います」
金沢は2015年から昨季まで9年連続でJ2にいたクラブ。当然ながら今季はJ2復帰が至上命題だった。夏のウィンドウ(移籍期間)には熊谷アンドリュー、西谷和希、平智広といった人材を獲得して上積みを狙った。
第23節の時点では5位とプレーオフ圏内で、その時点で2位のFC今治とわずか勝ち点3差だった。しかし、第24節以降の14試合は1勝5分け8敗と散々で、昇格戦線から遠ざかるシーズンだった。
それでも来季の続投が決まった伊藤彰監督は、記者会見でシーズンをこう振り返っていた。
「チームとして昨季と180度変わったサッカーをしていました。前半戦は僕がやろうとしているサッカーよりも、少し守備的なものが多かったと思います。中断以降は素晴らしい選手たちが入ってきてくれて攻撃的なクオリティが上がり、チームとして何を目指すべきかというビジョンもしっかりしました。しかし、その裏腹にデメリットが逆に浮き彫りになってしまった。後半戦は先に失点をしてしまう、何とか追いついて同点に勝ち点1を奪うゲームが多かったです」。
伊藤監督は大宮のアカデミー時代から、攻撃的なスタイルを貫いてきた指導者。ただし、ボールを持って人をかけるスタイルは「攻撃の終わり方」が中途半端だと、逆襲を受けるリスクが上がる。最終節に限れば守備が我慢して最後に勝ち越したが、1試合を見ただけでも「FW」「フィニッシュ」が金沢の課題であることはよく分かった。
新スタジアム・金沢ゴーゴーカレースタジアムの効果
一方でスタジアムは掛け値なしに素晴らしかった。単に「箱物」「アクセス」としてでなく、その場の雰囲気が良かった。ステージや飲食の売店といった「場外」が充実していて、バックスタンドスタンドの屋根下には椅子とテーブルも用意されている。
それは大げさに言うとJリーグ、プロスポーツが目指す一つの理想だ。
スポーツはそれ自体だけでなく「地域の価値を上げる」「人と人のつながりを広げる」といった波及効果に価値がある。私のような「よそ者」を呼び込む、人の流れを作るところも大切な価値だ。だからこそ「飲んで食べてワイワイ語る環境」の充実が試合と同じくらい大切だ。
一方で私の旅も「フィニッシュ」にちょっとしたトラブルがあった。取材時間が押したため、まず金沢駅近くで何かを食べていくプランが崩れる。駅ナカでなにか美味しいものを買おうとしたら、19時前後の時間帯はほとんどが売り切れていた。
仕方なく売り切れ間際のお弁当屋で、唯一の選択肢だった「能登牛」の弁当を購入する。これが美味しかった――。冷めているのにこれだけ美味しいのだから、熱々で食べたらどれだけ美味しいのだろう?
次に金沢へ来たときは「能登牛の焼き立て」を食べよう。そう心に決めた。私は旅のロスタイムに「スーパーゴール」を決めて、満ち足りた気持ちで東京に戻った。
武士団もツエーゲンも「3部」のチームだが、そこには賑いがあって、(筆者のように運が良ければ)手に汗握る試合を2日連続で見られる。
主な取材対象はバスケットボール、サッカーだが、野球やラグビーも守備範囲。取材の疲れをスポーツ観戦でいやす重度の観戦中毒でもある。
軽度の「乗り物好き」でもあり、お気に入りの路線バスは奈良交通「八木新宮線」、沖縄バス「名護東線」と今はなき宗谷バス「天北宗谷岬線」など。