スーバースターの登龍門
野球ファンの中にも「一番面白いのは甲子園」という人が一定数存在するように、バスケットボールも高校の全国大会の人気は高い。
今でこそ、日本代表が東京オリンピックで銀メダルを勝ち取った女子バスケット”Wリーグ”や、”富樫勇樹”(千葉ジェッツ)や”河村勇輝”(NBAメンフィス・グリズリーズ)といったスーパースターを輩出している”Bリーグ”の認知度も高まっているが、かつての日本バスケット界は、高校カテゴリーがトップコンテンツだったと言っても過言ではない。
毎年末に開催されるバスケット界の冬の風物詩、”ウインターカップ”は1年の総決算ということと、3年生にとっては高校生活の集大成ということもあり、特に注目度の高い大会だ。
秋田・能代工業高校が”田臥勇太”(現・宇都宮ブレックス)を擁して史上初の3年連続3冠(インターハイ・国民体育大会・ウインターカップ全制覇)を達成した1998年の大会は、会場の東京体育館が約1万人の観客であふれ、満員札止めになったほどだ。
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高校バスケの聖地・東京体育館-Journal-ONE撮影
女子は京都精華学園が3連覇に挑む
2024年12月23~29日の7日間に渡って開催されたウインターカップ2024。最大の注目ポイントだったのが、女子で京都精華学園高校の大会3連覇なるかという点だった。
日本バスケットボール協会(JBA)によれば、かつて定義されていた”高校3冠”から国体のタイトルが外れ、昨年度からは日清食品U18トップリーグを追加。既にインターハイ3連覇を達成し、U18トップリーグも2年連続で制している京都精華学園は、この大会に高校8冠もかかっていた。
第1シードとして2回戦から登場した京都精華学園は順調に勝ち進んでいったが、準々決勝では鵬学園高校(石川)に3点差、準決勝は精華女子高校(福岡)に2点差と薄氷の勝利でもあった。そして決勝で対戦したのは、桜花学園高校(愛知)や岐阜女子高校(岐阜)といった上位の常連校が姿を消していった中、熊本県勢として初の決勝進出を果たした慶誠高校だ。
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京都精華学園と慶誠の決勝戦-吉川哲彦撮影
近年は男女ともにアフリカなどからの留学生を抱える高校が上位に進出しており、京都精華学園、慶誠も留学生を擁し、180~190センチの長身を生かした戦い方で勝ち上がってきた。ロー・ジョバ(慶誠)は長身なだけではなく、ドリブルや外角シュートのスキルも高いオールラウンダー。京都精華学園がジョバに苦しめられることも大いに予想された。
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主力として活躍する留学生-吉川哲彦撮影
しかし、この日のジョバは準決勝までとは異なり、得意の3ポイントが精度を欠いた上、ゴール下のシュートもブロックされるなど、本来のプレーを出すことができず、最後は第4クォーター残り約4分に5つ目のファウルを犯してファウルアウトとなってしまった。慶誠はその後もキャプテンの岸希を軸に粘ったものの、京都精華学園の勝負強さが光り、59-54というスコアで京都精華学園が見事に大会3連覇、高校8冠を達成した。
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3連覇を達成した京都精華学園-吉川哲彦撮影
中高一貫の強化体制で黄金期
準々決勝以降が全て5点差以内だったという事実は、京都精華学園の大舞台での強さを物語ると同時に、他校のレベルの向上を示してもいる。同校の校長でもある山本綱義コーチは、新チームの始動時から危機感を覚えていたということだが、それでも勝ち続けてきたことを受けて選手たちを称えた。
「去年のチームはなんとか優勝できるだろうという気持ちがあったんですが、今年のチームはしんどいスタートでした。『この1年は休憩の年だな』なんて、あちこちで言ってたんですが、この子たちの意地と、先輩たちが残してくれた伝統を守ろうという努力で、インターハイ3連覇、トップリーグも連覇、そしてウインターカップも3連覇と、こんなに嬉しいことはない」。
「このチームがスタートした時に、連覇という言葉を発した者は誰もいないと思いますし、このウインターカップはベスト4まで来れたら十分だというくらいの気持ちで臨みました。しかし、選手たちの心の中にはすごい情熱があったんだと気づいて、大変ありがたいことだと思っています」。
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