
インタビューに答える鮫島和人HC‐大島和人撮影
16日の新潟戦は山口にとって5連勝目で、プレーオフ進出に向けた大きな一歩だった。しかし若き闘将は緩みが一切なかった。
「本当にもっとまだまだできると僕が信じているからこそ、不満のある試合でした」。
新潟はインサイドのカイル・ハントと、ムトンボ・ジャン・ピエールが不在だった。プレストンを中心にリバウンドで上回ったとはいえ、鮫島HCはそこにも苦言を呈していた。
「リバウンドの部分はもっと支配しないといけない。もっと泥臭くやらないといけないし、そこが僕的にはまだ足りなかった」

新潟に勝ち、5連勝を達成した山口パッツファイブ-小野寺俊明撮影
「僕らが山口県のバスケットを変える」
山口が目指すバスケについて、彼はこう力説する。
「僕らにスター選手はいないですし、派手なプレーはいらないです。求めるのはただ『泥臭くやり続ける』ことです。誰が出てもチームのベーシック、スタンダードを絶対に下げたらいけません。12名全員が自分にフォーカスするのでなく。チームのために働くチーム作りをしたいです」

チームのために働く12人がコートで踊る‐小野寺俊明撮影
彼は東京からふらっと訪れた初対面のライターに対しても、「熱」「思い」を込めてメッセージを伝えようとしていた。
「本当にプレーオフに行きたいからこそ、今シーズンは選手とも言い合っています。でも、それくらいの覚悟は持ってやってほしい。『僕らが山口県のバスケットを変える』という気持ちでやらないといけません。変な言い方ですけど、まだ「できたクラブに」「ただ入ってきて」「ただ仕事しているだけ」です。そこを変えないと、このままお客さんは増えなし、仕事以上のものをコートに持ってこないと勝てません」。
宇都宮ブレックスも、琉球ゴールデンキングスも、強いチームにはファンを惹きつけるような「泥臭さ」「エナジー」がある。本来はチャレンジャーであるべきB2、B3のチームのほうが悪い意味でクールな体質を持っていたりする。
怒れる32歳は、選手にチャレンジャーの自覚を求めている。
「ちょっと殿様感覚なことに、僕は腹が立つんです。僕が来た当初は朝練なんてあり得なかったですし、5分前に練習に来るとか、自主練もしないで帰るのが当たり前でした」。
「今は本当に少しずつ変わってきています。これを当たり前のベースにして、さらに上げていかないと1人ひとりが置いていかれてしまいます。リーグが(B革新で)変わるとなったら、今のままなら、僕を含めて生きる場所さえ残らないないと思うんです。なのに、まだみんなどこかに『なんとかなる』という感覚がある」。

鮫島HCに高い意識を求められている山口パッツファイブの選手たち‐Journal-ONE撮影
隠れたバスケ王国・山口での存在感
山口県は河村勇輝、佐々木隆成、中村功平らを輩出した「ポイントガード王国」で、佐々木と中村は県立豊浦高校の同級生。実はバスケ熱、文化が備わった土地でもある。
「県立高校がウインターカップに出て、全国でも結果を残しています。国体の成年男子も結果を残しています。でも、僕らが結果を残していません。トップである僕らが引っ張っていくべき立場なのに、足を引っ張っている感覚があります。そこを絶対変えないといけないし、選手たちもそれを理解しないといけなません。選手は努力して頑張っているけど、本当にプレーオフに行くならもう一度ギア上げないといけません」

試合後、ブースターに挨拶する選手たち- 小野寺俊明撮影
パッツファイブは決して完成されたチームでなく、全国的な知名度がある選手もいない。指揮官はキャリア2季目の32歳だ。ただ「何か」が起こる、起こそうとする熱気と、危機意識と、上昇気流がそこには充満していた。

主な取材対象はバスケットボール、サッカーだが、野球やラグビーも守備範囲。取材の疲れをスポーツ観戦でいやす重度の観戦中毒でもある。
軽度の「乗り物好き」でもあり、お気に入りの路線バスは奈良交通「八木新宮線」、沖縄バス「名護東線」と今はなき宗谷バス「天北宗谷岬線」など。