ところで、「今日はどちらに勝ってほしいですか?」と聞くと、「両チームにがんばってほしいですが、試合はブロンコスの勝利で!」と笑った。
Bリーグとして何ができるか -島田チェアマン
この日はBリーグの島田 慎二チェアマンが視察に訪れており、試合前には田鶴浜体育館や、七尾市内の被災地に立ち寄った。島田チェアマンはあいさつで、亡くなられた方へのお悔やみ、被災された方へのお見舞い、復興に向けて活動されている方への感謝を述べた後、「改めて今回の災害の大きさを認識し、我々に何ができるかを考えさせられた。」と話した。
その上で、「まだシーズン中なので、できることは限られていますが、オフシーズンになりましたら、Bリーグの選手を集めて、この地に足を運んで、被災されたみなさまに、少しでも元気を与えられる活動ができればと考えています。」と、今後について語った。
さらに、「金沢武士団の選手、チームのみなさま、このような厳しい状況の中、炊き出しであったり、被災された方に寄り添ったり、元気を与えてくれて、本当にありがとうございます。」と感謝を述べた。
避難所のみなさんの声で復帰できた -中野社長
地震の直後、金沢武士団の中野 秀光社長は「練習場が避難所になったことで、今シーズンの活動継続は厳しいと思った。」と言う。しかし、その後は白山市や野々市市から練習場提供の申し入れがあり、場所の問題は解決した。
ただ、中野社長は「この状況で場所があるからバスケットをやっていいのか? と思いました。」と話す。だが、「避難所のみなさんの、『選手にとにかくバスケットさせてあげてほしい。』という声が大きくなったことで、我々は行動を起こすことができました。」と続ける。
そうなったのも、金沢武士団が避難所で被災者に寄り添っていたからだろう。田鶴浜体育館の避難所には、行政とともに金沢武士団が深く関わっている。マスコミでも紹介されてご存じの方もいるだろうが、田鶴浜体育館の2階で毎晩開かれている、1時間限定の居酒屋 “語ろう亭”も中野社長の発案だ。
そのきっかけは、避難所のゴミ袋に多くのビール缶があったことだ。「役所の方に聞くと、『避難所でお酒を飲むのは不謹慎だと思って、1人でこっそり車の中で飲まれている。』とのことだったので、これは絶対良くないと思った。災害関連死を防ぐためにも、語り合える場所を作ろう。役所の方には、金沢武士団で責任を取りますからと、”語ろう亭” を開設した。」
もちろん、”語ろう亭” には大人だけでなく、子どもも参加できる場所で、ジュースやソフトドリンク、簡単なつまみも準備されている。1時間だけだが、毎晩みんなで集まってワイワイ “語る” 場所で、長引く避難生活のリフレッシュの場となっている。「不謹慎かもしれませんが、『毎日イベントみたいな避難所ですね』と言われます。」
絶対に諦めない。最後まで戦い抜く -金沢武士団
さいたまブロンコスとの試合は一時、18点差をつけられるも、金沢武士団は第4クオーター残り5分で、1点差に迫る猛追を見せた。しかし、ここから引き離され、78-86で地元のファンに勝利を届けることはできなかった。
昨年の12月に就任が発表された三木力雄ヘッドコーチは、地震の影響で石川に入ったのが1月20日になった。「正直、今シーズンは無理かと思いました。奇跡ですよね。こんなに早く試合ができるとは思わなかった」と話した。
そして、試合後のあいさつでは、「被災して厳しい環境が続いていますが、こうやって七尾からたくさんの方が応援に来ていただいています。その方々に我々は、『絶対に諦めない』『最後まで戦い抜く』『決して下を向かない』ことで、勇気と感動とエネルギーを与えること、それをモットーとして活動してまいります。」と語った。