試合も東西対抗企画もEASTが勝利
そのトリを飾る本戦は、選手たちが随所に観客の笑いを誘うパフォーマンスを披露しつつ、オールスターにしては白熱した展開となった。前半の20分間は43-45でWESTがリードし、第3クォーターに入るとWESTが一時リードを9点まで広げたものの、その後はEASTが逆転に成功し、再び接戦に。EASTの2点リードで迎えた第4クォーター残り6.6秒、WESTはレギュラーシーズンMVPの細谷将司(福井ブローウィンズ)がファウルを受けてフリースローのチャンスを獲得。
目の前のEASTベンチからブーイングが起きる中、細谷は落ち着いて1本目を決め、EASTベンチに歩み寄ってドヤ顔を見せたが、2本目を外すとEASTにボールキープされ、最終スコア90-89でEASTが大熱戦を制した。また、東西対抗企画も4勝2敗でEASTに軍配が上がっている。
選手たちにとっても特別な試合に
試合後、東西各3人の選手に話を聞くことができたのだが、彼らの口からは一様に「楽しかった」という言葉が飛び出した。それは伊藤良太(しながわシティバスケットボールクラブ)が「普段一緒にプレーしない選手たちとこうやって縁があったのも貴重でしたし、被災地から子どもたちが来てくれて、こういうオールスターもあまりないと思うので」と言うように、特別な試合だったからだ。
それと同時に、宮田諭(東京ユナイテッドバスケットボールクラブ)が「堀井(幹也、B3リーグ理事長)さんからも『しっかりしたゲームをやろう』と言われた」と証言したように、選手たちがただのお祭りで終わらせようとしなかったからでもある。
「僕はB1でもオールスターに出たことがあるんですが、正直今日のほうが楽しかった。最後の5分くらいは声援も聞こえないくらい集中して、僕らがそれだけプレーを楽しめたということは、お客さんにも何か響いたものがあるんじゃないかと思います」(細谷)。
「今日は『ガチ』な感じがあって、お客さんにも楽しんでもらえたと思いますし、最後までどっちに転ぶかわからないオールスターもなかなかないので、本当に楽しかったの一言です」(ヴィアティン三重・宮﨑恭行)。
オールスターが花道となった選手も
今回取材に応じてくれた6人のうち、玉田博人(湘南ユナイテッドBC)は今シーズン限りでの引退を表明し、これが最後の晴れ舞台。國分大輔(豊田合成)も、クラブが今シーズン限りでB3を退会するため、第一線から退く可能性がある。開催の契機は能登半島の震災だったが、シーズン終了後の開催により、選手の花道という付加価値も加わった。
「豊田合成さんは僕が鹿児島レブナイズにいた頃からしのぎを削ってきた仲ですし、金沢に関しては2年在籍していたので、今日のゲームができて本当に良かったです。9年間、たくさんの支えがあってここまでこれたと思うので、最後の恩返しとして、多くの皆さんの前でプレーできて本当に感謝の気持ちでいっぱいです」(玉田)。
「被災された子どもたちと、こうして関われたのはとてもうれしかったです。僕自身、エントリオでプレーする機会は恐らくなくなると思うので感慨深いものがあって、こういう素晴らしいメンバーの方々と、もう一度バスケットができたことは、最後としては良かったなと思います」(國分)。
復興支援は終わりではなく、これからも続く
そして、EASTを率いた三木力雄ヘッドコーチ(金沢)は「めっちゃ楽しかったです!今シーズンの総まとめとして、気持ち良く終われた試合でした」と興奮気味に語る一方で、被災地にも想いを馳せ、この試合の意味を噛みしめていた。
「復興支援は今シーズンで終わりではなく、これからも続く。これをどう継続していくか、次にどんなことをやるかという足がかりになるようなゲームであればと思います。『B3もこんなに面白いじゃないか』と思ってもらえたと思うのでね」。
関係者によると、B3リーグとしてはこれが最初で最後のオールスターという認識が広がっているようだが、一部からは継続開催を望む意見も出ているとのこと。多くの人に活力を与えるスポーツの力を示した以上、来シーズン以降も開催されることを願うばかりだ。