陸上日本一を決める戦い
8月に開催されるパリ五輪の日本代表選考会を兼ね、「陸上日本一」を決める “第108回日本陸上競技選手権大会” は、6月27日(木)~30日(日)新潟市の “デンカビッグスワンスタジアム” で開催される。
陸上競技の五輪出場資格は、”ワールドアスレティックス”(世界陸連)が設定する参加標準記録突破者および、”ワールドランキング” で、”ターゲットナンバー”(出場枠)内に入る競技者の2パターンで獲得することができる。
加えて、日本陸連が設定する選考基準に則って決まっていくため、すでに内定している者、日本選手権当日に即時内定する者、大会後の選考を経て内定する者と、ちょっとわかりづらいというのが正直なところだ。
ここでは、会場で即時内定となる可能性も踏まえつつ、日本選手権で注目したい7選手を、5つの視点からご紹介しよう。
※エントリー状況や記録・競技結果、ワールドランキング等の情報は、6月22日時点の情報に基づく
【参照サイト】
誕生なるか、日本選手権初の9秒台!
男子100m 栁田 大輝
男子100mは、昨年のブダペスト世界選手権で、2大会連続ファイナル進出を果たしたサニブラウン アブデルハキームが、日本選手権前の段階でパリ五輪代表に内定したため、今大会にはエントリーしていないが、サニブラウンがいなくても見逃せない1戦となる。
なぜなら、残り2枠となったパリ五輪代表の座を巡って、新進気鋭の若手から百戦錬磨のベテランまで、多士済々の顔ぶれが熾烈な戦いを繰り広げるからだ。そして、国内では2021年6月以来となる日本人による9秒台レースが見られるかもしれない。
その候補の1番手に挙げることができるのが、東洋大学3年の栁田大輝。群馬・東京農大二高2年の2020年から注目を集め、逸材の呼び声高かったスプリンターだ。シニアとして著しい躍進を見せた昨シーズンは、7月に開催されたアジア選手権で10秒02の自己新記録をマークして優勝。
日本チャンピオンよりも先にアジアチャンピオンの座に就くと、ブダペスト世界選手権では、100mと4×100mリレーに出場し、4×100mリレーの5位入賞に貢献した。
今季は、初戦を10秒02の自己タイで滑りだすと、世界リレーに出場し、日本の4×100mリレーのパリ五輪出場権獲得に尽力した。その勢いは、日本選手権を控えて、さらに加速する。
6月中旬に行われた日本学生個人選手権男子100mの準決勝で、なんと9秒97という記録を叩きだしたのだ。3.5mの追い風が吹いていたため、残念ながら参考記録となったが、初めて10秒切りを経験する、貴重なレースとなった。
パリ五輪の出場資格という点では、すでにワールドランキングで “安全圏” といえる順位にいる栁田だが、パリ五輪に向けては以前から参加標準記録(10秒00)を突破しての出場を目標に掲げてきた。追い風参考とはいえ、大一番となる日本選手権の前に、「9秒台」を体感できたことは、大きなアドバンテージといえるだろう。
男子100mは、3日目に予選・準決勝が行われたあと、最終目に決勝が行われるタイムテーブル。予選から記録を狙っていくのか、それとも決勝で9秒台突入も達成して、五輪即時内定を手にするのか―。いずれにしても、栁田は勝てば今回が初優勝。そして、公認で日本人5人目となる9秒台が誕生すれば、長い歴史を持つ日本選手権で初の快挙となる。
膨らむ”12秒台”への期待
男子110mハードル 村竹 ラシッド
近年、急速にレベルを上げて、世界でメダルが狙える水準へとステップアップしてきたのが男子110mハードル。昨年行われたブダペスト世界選手権では、13秒04の日本記録を保持する泉谷駿介が、日本人初の決勝進出を果たし、見事5位でフィニッシュする快挙を成し遂げた。
“トッパー”(110mハードル)の通称で知られるこの種目では、すでに複数が13秒27の参加標準記録を突破済みで、日本選手権本番でも増える可能性がある活況。どんなに良い自己記録を持っていても、ここできっちり上位を占めないと、つかみかけていたパリ行き切符を逃す可能性もある。10台のハードルを越えるなかでの、本当に些細なミスが大きく明暗を分けることもあるだけに、最後の最後まで目が離せない。