男子では五輪代表に内定済みのサニブラウン アブデルハキーム(100m)、泉谷 駿介(110mハードル)、三浦 龍司(3000m障害)が日本選手権をスキップしたが、田中と北口については、日本選手権にエントリーしている。ビッグスワンでの日本選手権は、ワールドワイドに活躍する世界的トップアスリートのパフォーマンスを見ることのできる貴重な機会といえるだろう。
まるで「インターハイを目指す高校生が県大会にチャレンジするかのようなハードなスケジュールに挑む」のは田中だ。すでに五輪内定を決めている5000mだけでなく、日本人で唯一、4分を切る3分59秒19の日本記録を持ち、東京五輪では8位入賞を果たしている1500m。
そして、サブ種目の位置づけながらも2分02秒36(2021年)の自己記録を有する800mの3種目に出場する。田中の3種目挑戦は、2年ぶり3回目で、前回の2022年には、この3種目で世界選手権にも出場している。
パリ五輪に向けては、すでに内定している5000mのほか、1500mも6月初旬のダイヤモンドリーグ・ストックホルム大会で4分02秒98と参加標準記録(4分02秒50)に肉薄。ワールドランキングでも出場が見込める位置にいる。いつも戦略を持って種目選択、レースに出場している選手だけに、今回もパリ五輪本番を見越しての取り組みとなりそうだ。
田中の出場する3種目は、1500mは初日と2日目に予選・決勝が各1本ずつ。3日目に800m予選と5000m決勝の2本を走る必要があり、最終日は800m決勝のみという日程だ。
3日目は、15時25分から800m予選が行われたのちに、17時55分に5000m決勝がスタートするスケジュールだが、昨年、5000mの自己記録を14分29秒18(日本記録)という(ものすごい)水準まで引き上げている田中であれば、そう大きな負担とは捉えていないだろう。
3日間の各レースを、どんなレースプランで臨んでいくのか。小柄な身体から放たれるエネルギッシュな走りには、見る者を夢中にさせるオーラがある。「こんなに速いペースで走ってきたのに、さらに、ここでスパートできるのか!?」と、驚くようなパフォーマンスを見せてくれるだろう。
最後に名前を挙げておきたいのは、なんと言っても北口だ。昨年のブダペスト世界選手権で金メダルを獲得したほか、ワールドアスレティックスが展開する世界最高峰の国際競技会”ダイヤモンドリーグ”のファイルで優勝。
自身5回目の更新となった67m38の日本記録は、2023年の世界リスト1位となるもので、名実ともに世界の頂点に立つ1年となった。今季はセイコーゴールデングランプリでの63m45がベスト記録だったが、6月22日にフィンランドの競技会で64m28を投げ、シーズンベストを更新。今季季世界5位タイまで浮上してきた。
恐らくパリ五輪で目指すパフォーマンスを視野に入れつつ、さらに記録を上げてくるような状態に仕上げて臨んでくるだろう。現段階での今季世界最高は66m70。もしかしたら、「今季世界最高記録です!」というアナウンスが、ビッグスワンを沸かせることになるかもしれない。
戦うフィールドが、すでに世界各地になっている北口の投てきは、これからはさらに日本で目にする機会が少なくなっていくはず。そういう意味でも、「世界一の放物線」を実際に目にする貴重な機会になる。
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