日本チャンピオン×パリ五輪内定を狙え!
第108回日本陸上競技選手権大会が6月27~30日、パリ五輪の日本代表選考会を兼ねて、新潟市のデンカビッグスワンスタジアムで行われた。梅雨のさなかでの開催とあって天候が心配されたものの、雨模様となったのは最終日のみ。当初の予報よりは良い条件のなかでの開催となった。
日本陸連の設定する選考基準により、この大会でパリ五輪代表の即時内定を得られるのは、決勝を終えた段階でワールドアスレティックス(世界陸連)が設定する参加標準記録を突破している優勝者のみ。
さらに大会後、2回に分けて発表される内定者についても、日本選手権の順位が優先されることから、「2024年度日本チャンピオンの座」とともに、パリ行き切符を巡っても各種目で激戦が繰り広げられた。
日本人3人目の47秒台ハードラー誕生
400mハードルの豊田兼、圧巻の走りで初優勝&内定
日本選手権におけるパリ五輪内定第1号は、大会2日目に行われた男子400mハードル決勝で誕生した。初日に行われた予選を、再び五輪参加標準記録を上回る48秒62で通過していた豊田兼が、決勝ではさらにギアを入れ、序盤から大きくリードを奪うレースで他を圧倒。
日本人3人目となる47秒台(47秒99)をマークして初優勝を遂げるとともに、初の五輪切符も手に入れた。2・3番手争いも注目されていたこのレースでは、前回覇者の小川大輝が最終ハードルを降りてから見事な追い上げを見せて2位でフィニッシュ。
五輪参加標準記録とぴったり並ぶ、48秒70の自己新記録をマークしたことで、豊田に次ぐ代表争いの1番手に名乗りを上げた。3位には、すでに参加標準記録突破を突破済みの筒江海斗が49秒08で続いた。
激戦区のスプリントハードル
村竹ラシッドと福部真子が代表に内定
男女ともに見応えのあるレースとなったのは、スプリントハードル種目(男子110mハードル、女子100mハードル)。昨年のブダペスト世界選手権5位の泉谷駿介(今大会は不出場)がすでに内定したことで、残り2枠を巡る戦いとなっていた男子110mハードルでは、泉谷とともに13秒04の日本記録を持つ村竹ラシッドが“横綱レース”を披露した。
村竹は、3日目に行われた予選を向かい風0.8m(-0.8m)のなか13秒29、準決勝でも向かい風1.0mの悪条件下となったにもかかわらず、参加標準記録(13秒27)を大きく上回る13秒14で難なく通過する。
そして、雨が打ちつけるなかでのレースとなった最終日の決勝では、セカンドベストで今季日本最高となる13秒07(追い風+0.2m)でフィニッシュ。この時点で今季世界リスト6位に並ぶ好記録で五輪代表に内定。村竹は今大会の男子MVPにも選出された。
2019年に「13秒の壁」が破られて以降、毎年レベルの高い争いが繰り広げられている女子100mハードルは、大会前の段階では参加標準記録(12秒77)突破者は不在の状況だったが、大会3日目の準決勝で、日本記録保持者(12秒73)の福部真子がセカンドベストのパフォーマンスで、日本歴代2位となる12秒75をマークして標準記録を突破。
今季好調の田中佑美、12秒台の扉を開き、日本の水準を引き上げてきた寺田明日香との大接戦となった決勝では、前半でリードを奪う得意の展開で、田中と寺田の猛追から逃げ切り、12秒86(-0.2)で優勝。
昨年、唯一参加標準記録を突破しながら4位となったことで、ブダペスト世界選手権出場を逃していた福部は、レース後のインタビューで感想を求められ、「やったー、リベンジ達成!という気持ち」と声を弾ませた。2位には田中が12秒89で続き、足のケガからの復調が懸念されていた寺田が0.02秒差で3位という激戦だった。