大会1日目は開会式が終わった後、10時過ぎに行われた第1試合(有田工業高 vs 滋賀学園高)の試合が終わると、観客を含めた全員が球場の外に。その後、15時に再度開門し、16時には第2試合(英明高 vs 高崎健康福祉大高崎高)が行われた。
主催者側は、この3日間の試みの結果を見て今後の検証に繋げたいとのことだが、ナイトゲームとなった第2試合を日中の炎天下での試合と比較すれば、その効果は明かだろう。
とは言え、選手たちの動きはもちろん、アルプススタンドで応援する出場校の生徒たちや関係者、そして夏休みに入り多くの子どもたちで賑わうスタンドの観客にとってこの “朝夕2部制” はどのような効果があるのか?Journal-ONEでは、大会2日目の午後の部、大会3日目の午前の部を取材した。
明らかに暑さが和らぐ – “夕方の部”
大会2日目の第3試合は、16時開門となった。正面スタンド前に毎日掲げられる本日の対戦カードを掲出する掲示板も、<午前の部>と<夕方の部>に書き分けられていて新鮮さを感じた。
この時期の16時はまだ夏の長い日射しがグラウンドに差し込んではいたが、内野を大きく覆った “銀傘” の下はほとんどが日陰になっている。グラウンドに目を向けると、ちょうど内野の黒土の部分も “銀傘” の恩恵を受けて日陰になっていた。「マウンド上は、気温以上の熱気となっていることでしょう」と、アナウンサーが解説するような苛酷な状況にはならないだろうと胸を撫で下ろす。
一方で、両チームのアルプススタンドを見ると、三塁側に陣取った初出場の札幌日大高(南北海道)応援団には、西日が直接当たっていた。しかし、徐々に傾いていく日射しは日中のそれと比べればまだ良い方だ。南北海道大会をノーシードから勝ち上がり、4度目の決勝挑戦で遂に甲子園へのきっぷを勝ち取った札幌日大高応援団の熱気の方が、はるかに関西特有の肌を刺すような西日の熱を上回り、初回から熱い応援を選手たちに送っていた。
18時を過ぎると、スタジアム内の暑さも一気に和らいでくる。西日が残る中で点灯を始めた照明も、気付けば漆黒の空に大きなドーム状の温かみのある光りの空間を提供してくれていた。
この照明設備も、甲子園100年の中で最近改良された設備の一つ。2022年2月にLED化された甲子園の照明は、かつて ”カクテル光線” と呼ばれていた白熱灯と水銀灯をミックスしたオレンジ色がかった伝統ある照明を継承している。LED化によりナイター照明使用に伴うCO2排出量を約60%抑制しながら、変わらない甲子園の雰囲気を実現しているのだ。
進化と遂げながらも次の100年も野球ファンに愛されるスタジアムであることを目指す、阪神甲子園球場の取り組みの中、選手たちは今でも変わらない夢の舞台で、全力プレーを見せてくれた。
朝からキツい夏の日射しも工夫で凌ぐ -“午前の部”
翌日の大会3日目、阪神甲子園駅に降り立った瞬間に汗がドッと吹き出してくる。7時前とはいえ、夏の日射しはやはりキツい・・・
阪神甲子園駅と甲子園球場を結ぶ、全長約100mの歩行者動線も甲子園100周年に向けて、2020年に再整備されたレンガ造り風の駅前公共空間となった。
この広場の名前は “タイガースロード”。甲子園を本拠地とするNPB(プロ野球)阪神タイガースの名を冠した綺麗な広場は、沿道にタイガースグッズを販売するショップ等が入る商業施設が設置されている。無電柱化でスッキリした両サイドの街灯にも、阪神甲子園球場100周年タペストリーが時代を想起させる甲子園の写真と共に飾られ、来た人をもてなしている。