西バスターミナルの改築や道路整備も行われた駅前は、5万人のファンを集めるに相応しいインフラ設備となった。じっくりと取材を進めたいところだが、夏の日射しを避けるように阪神高速道路の高架橋が作る日陰に足早に進み、7時の開門を待つことにした。
開門すぐにスタジアム内に入ると、”銀傘” が作る日陰はその直下と三塁側の内野席のみ。日光で観戦席や通路が熱気で包まれる前とはいえ、やはり “午前の部” では帽子の着用など頭部を直射日光から守る術は必要だ。
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花咲徳栄高(埼玉)の青一色のスタンドを背に力投する上原堆我投手-Journal-ONE撮影
第1試合は、第99回大会を清水 達也投手(中日ドラゴンズ)を擁して優勝した、埼玉県代表の花咲徳栄高に、春夏通じて甲子園初出場の新潟産業大付属高が挑む一戦。
チームカラーの青一色に染まった花咲徳栄高の一糸乱れぬ応援に対し、初出場の新潟産大付属高の応援団も負けじとたくさんの野球部OBがユニフォームを着て声援を送る。
この試合も、5回終了時に10分間の “クーリングタイム” が取られると、直後の6回表に0 – 1とビハインドだった新潟産大付属高が反撃。この回適時二塁打で同点に追いつくと、続く7回にも逆転の左前適時打を放って逆転勝ちで嬉しい甲子園初勝利をあげた。
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休息明けに流れを引き寄せた新潟産大付属高の攻撃-Journal-ONE撮影
花咲徳栄高にとっては、クーリングタイムが試合の流れを変える一端となったことは否めない。甲子園常連校であっても新たな取り組みに対応することが、とても難しいことを教えてくれた一戦となった。
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接戦を落し甲子園の砂を集める花咲徳栄高の選手たち-Journal-ONE撮影
昼をまたぐ第2試合は厳しい暑さに -“午前の部”
続く第2試合は、第74回大会で優勝の経験を持つ、福岡県代表の西日本短大付属高が登場。対するは、甲子園100周年を彩るメモリアルな活躍の一つとして紹介されている第100回大会で “カナノウ旋風” を巻き起こした秋田県代表の金足農業高と注目の好カード。
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“カナノウ旋風”再来を期待するスタンドの応援を背に躍動する金足農業高(秋田)の選手たち-Journal-ONE編集部
北海道日本ハムファイターズの新庄 剛志現監督がOBの西日本短大付属高と、北海道日本ハムファイターズのドラフト1位で現在はオリックスバファローズで活躍する吉田 輝星投手がOBの金足農業高。加えて、金足農業高のエース・吉田 大輝投手は、その吉田 輝星投手の実弟という、やや因縁めいた一戦には真夏の太陽が降り注ぐ。
試合は、初回から相手のミスなども絡めて先制した西日本短大付属高が、クーリングタイム直前の5回裏に一挙4点をあげて試合を優位に進めて10分間のブレイクに突入した。
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スタジアムにいる全員に向けた熱中症予防のメッセージ-Journal-ONE撮影
選手たちと同じく「全員日陰に・・・」とはいかない両チームのアルプススタンドでは、順番に生徒たちが通路裏に避難するなど、学校関係者の指示に従いそれぞれに熱中症対策を実施していた。
第1試合同様、クーリングタイム直後の6回表に金足農業高がいきなり連打でチャンスを作るも、走塁ミスなどもあり反撃ならず。
最終回、0 – 6のビハインドから3連打などで1点を返した金足農業高に、第100回大会の “カナノウ旋風” 再来を予感する観衆が大声援を送り大きな盛り上がりを見せる。この声援も味方に2点差まで詰め寄った金足農業高だったが、西日本短大付属高が反撃を凌ぎきって2回戦に駒を進めた。
観客も周辺施設で涼を取る
前述で紹介したとおり、”午前の部” が終了すると観客はスタジアムから出なければならない。高校野球を一試合でも楽しみたいファンにとっては「チケットを1日2枚買わないと全ての試合が観戦できない」と、デメリットを指摘する声も聞かれる。
しかし、取材をしてみて “2部制” はメリットの方が大きいとJournal-ONE編集部は見る。その最大の理由は、「観客が一律にマインドセットして涼を取ることで、熱中症対策の効果が広く期待できる」からだ。