朝から夕方までスタンドに留まる場合、暑さから逃れる場所と時間が限られてしまう。甲子園の客席通路はエアコンがフルパワーで稼働しており、たしかに涼しい場所ではある。しかし、この場所は全ての観客が一定時間を過ごし続けるには限界のあるスペースだ。そのため、観客席に座る時間が相対的に多くなってしまい、いくら水分を補給しても身体を冷ます効果が均一にあるとは言い切れない。
一方、一旦スタジアムから外に出てしまえば、再開発で充実した商業施設群や、新たに誕生した商業施設 “甲子園プラス” 内に、球場の外野スタンドにあったものを一部移転・拡張して2020年にリニューアルオープンした展示施設 “甲子園歴史館” で熱くなった身体を冷ましながら充実した時間が過ごせるのだ。
特に、昨シーズンのNPBを制した阪神タイガースに、甲子園100周年を迎えた今年は、阪神タイガース、高校野球、阪神甲子園球場の歴史に関する特別企画展示もされており、夏休みの思い出がさらに深まることは間違いない。
チケットを2枚購入しなければ1日中観戦できないことを問題視する声もあるが、熱中症から身体を守るという大きな目的で行われた試みであること。さらに、地方から縁ある学校だけを応援しに甲子園までやって来たファンや関係者に、観戦機会を拡大する利点もあることを考えると、効果検証の結果は見ずともその成果は大きい。
時代に即して運営を進化し続けることこそが、”夏の甲子園” が次の100年までも続く国民的行事となる。様々な課題に直面しながら、最適解を探し続ける高野連ら主催者側の考えを理解し、する人、観る人、支える人が一体となって高校野球を守り、育てていくことの必要性を感じる取材となった。
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