「新リーグの開幕戦」となれば、どんな競技もワクワク感はある。2024年10月11日(金)の東京体育館で行われたのは、バレーボールの”大同生命SV.LEAGUE“の開幕戦だった。
昨季までは”Vリーグ”だったが、”SVリーグ”は2027年の完全プロ化を目指してそれを再編したものだ。開幕戦は”サントリーサンバーズ大阪“と”大阪ブルテオン“(旧パナソニックパンサーズ)による男子の2強対決だった。
新リーグのへの期待と危機感
試合開始の1時間半ほど前に会場へ到着してグッズ売り場を覗くと、売り切れが続出していた。「バレーボールファンはグッズの購買意欲が高い」と耳にしていたが、その情報を思い出した。場外や通路を歩いていると、サントリーの「赤」と大阪Bの「青」は勢力が拮抗している。妙に関西アクセントの会話が耳に入ってくるのは、大阪から駆けつけたファンが多かったからだろう。
開幕戦から10日ほど前の取材で、大阪Bの西田有志選手は新リーグ誕生で起こる変化について、こう述べていた。
「何よりも注目度だなと思います。自分たちがバレーボールをやって、勝ちにこだわっていくことには変わりはありません。だけど、こういうふうに多くの方に注目していただけることは今までありませんでした」。
「2019年のワールドカップ、東京オリンピックの後は注目されたものの継続できなかった。2度も3度も同じことを起こさないように、1人1人が危機感を持ちながら、自分ならではのブランディングをしていくところがすごく大事になります」。
バレーボール界は過去にリーグの「改革」を唱えつつ、尻すぼみで終わった過去が何度もある。西田の言葉から伝わってきたのは喜びでなく「危機感」だった。
開幕戦は間違いなく西田の「らしさ」が出た試合だった。サービスエース、スパイクなどからチーム最多の16得点を挙げ、ロペス・ミゲル、ジェスキー・トーマスの両外国籍アウトサイドヒッターとともに攻撃を引っ張った。大阪Bはアレクサンデル・シリフカを負傷で欠いたサントリーを圧倒し、3-0(25-17、25-18、25-21)のストレートで勝利している。
スタンドがどっと沸いたのは第3セットのマッチポイント直前だった。西田のサーブの場面で、会場のビジョンに映し出されたのは彼の愛妻・古賀紗理那さん。その件を問われた西田は、照れたような困ったような顔でこう答えていた。
「来るというのは家族なので話していましたけど…。一応、僕はスタッフに伝えていて、『あまり出さないでくれ』と言っていて、あそこでああいうふうに出てびっくりしました。でも、それでちょっとギアが上がって、サーブのところでしっかり片がつきました」。
日本代表の人気を地方に広げる役割
西田は新リーグの「スタイル」についてこう言葉にしていた。「今日の試合は非常に面白かったですし、ディフェンスからつながるシチュエーションが多かったですね。お互いの外国人選手も日本にフィットしたスタイルになっていると思います」。
「ロペス選手もジェスキー(・トーマス)選手も最後までボールを追いますし、だから落ちない。それは日本リーグだからこそだと思いますし、海外選手が日本人選手に感化されています。ハードワークし続ける試合を、今日は見せられたのではないかなと思っていますし、やっていてすごく楽しかったです」。
男子の日本代表はパリオリンピックをベスト8で終えている。準々決勝のイタリア戦はストレート勝ち寸前からの大逆転負けで悔しい結末だったが、とはいえ大会前後の盛り上がりや視聴率は他競技をしのいでいた。筆者は試合会場のパリ南アリーナで取材していて、「日本人以外」も日本のユニフォームを着て応援している姿をよく目にした。日本バレーの魅力が、世界に届いていることを強く感じていた。
日本は世界の強豪と比べて明らかに平均身長が低く、ブロックにはどうしても限界がある。ただ、レセプションで拾う、そこからつなぐ部分は世界でも唯一無二だろう。トスはもちろん、スパイクも相手との駆け引きやギリギリで判断を変える「上手さ」が際立っていた。西田や髙橋藍(サントリー)、石川祐希(ペルージャ)は世界的なスター選手でもある。