そこで、バッバ選手が抜けたクリンアップの一角に据えたのは、ベテランの鎌田 優希選手だった。昨シーズン不動の2番打者として、チーム最多の犠打数を挙げた “繋ぎのスペシャリスト” に課したのは “繋ぐクリンアップ” としての役割。この攻撃が機能したのはパロマ瑞穂野球場で行われた第4節の “タカギ北九州 ウォーターウェーブ” 戦だった。緊迫した投手戦となる中、 1死三塁から見事にスラッグで内野ゴロを放ち、タカギ北九州のモメンタムを削る追加点を挙げるなど、新たな戦い方で勝ち星を積み重ねていった。
後半戦の開幕で敗れた経験が吉となる
新たな “トヨタの戦い方” を試しながらも18勝負けなしという快挙を達成した前半戦。「いったいどこまで勝つのか?」と思われた後半戦の開幕で初黒星を喫する。前半戦、自身初勝利を挙げた石堂 紗雪投手を打線が援護できず、東地区6位(5勝13敗)のNECプラットフォームズレッドファルコンズに1点差で敗れるまさかの展開となった。
「勝ち続けると、負けたときの修正が難しい。あそこで敗れて良かった」と話すのは、河合 満顧問だ。「調子が良いのは嬉しいが、負けた時の振る舞い方を学ぶことも必要。特に、新人選手には早く(JDリーグ公式戦で負ける)経験させてあげたかった」と、強豪チームならではの悩みを教えてくれた。
この経験が活きたか、トヨタは翌日から続いた「仮想・ダイヤモンドシリーズ決勝」と注目された “日立サンディーバ“、”戸田中央メディクス埼玉“、”ビックカメラ高崎ビークイーン” との三連戦を、落ち着いた試合運びで勝ち切りファンを喜ばせる。
怪我やコンディション不良など、選手全員が常にベストな状態で戦い切れない過酷なリーグ戦。しかし、トヨタは得意の “先行逃げ切り” の試合展開を貫き続け、ダントツの勝ち星を挙げて西地区三連覇を果たした。
後藤投手、メーガン投手の盤石な二枚看板を背に、調子の良い選手がジェイリン投手から先制点を奪うことができれば、トヨタが圧倒的有利に試合を進めて行くだろう。
超攻撃打線で逆に先手を取りたいホンダ
プレーオフ2試合を完投し、14イニングス投げての失点はわずかに「1」。獅子奮迅の活躍でホンダを二年連続、プレーオフの舞台に引っ張ったのはジェイリン投手だ。
「分かっていても手を出してしまった」と敗軍の将を唸らせた、伸び上がるライズボールと低めに制球されるドロップのコンビネーション。日本代表の多くがスタメンに連なるトヨタ打線でも攻略は至難の業だ。
ジェイリン投手がトヨタ打線を抑えている間に、何としても先制点を挙げられるか。これがホンダ “下克上ストーリー第3章” のシナリオとなる。どこからでも点を取れるホンダ自慢の強力打線だが、世界を代表する後藤投手と、メーガン投手のどちらが登板しても攻略は一筋縄ではいかない。唯一の対戦となったリーグ戦(交流戦)でも、後藤投手から得点を奪えなかったホンダ打線がどういった対策で臨んでくるのか?
“推しのソ” 塚本 蛍選手、大川 茉由選手と続くホンダの日本代表1、2番をはじめ、強打の左打者を多く抱えるホンダ打線。やはり後藤投手から点を奪うには右打者の活躍が欠かせない。
怪我から復帰した5番・ “推しのソ“ 大工谷 真波選手、プレーオフ1stステージで殊勲の適時打を放った4番・山口 未葵選手。チャンスに強い右の強打者が、少ないチャンスで確実に得点に繋がる活躍を見せてくれるかに期待がかかる。
トヨタは地元・愛知県の大応援団を背に、一気呵成に攻め込んでくる。リーグ屈指の熱量ある応援が持ち味のホンダ応援団が、アウェイのパロマ瑞穂野球場でトヨタを超える熱量あるパフォーマンスを見せてくれるかも勝負の行方に影響を与えるだろう。