タイルに着色、次に形を切り取り、貼り付けの全てを手作業で行うが、実は最後の柄を作る時、表面の色を見ながら埋めるのではなく裏面の着色していない面を見て、タイルの形・色の配置を頭の中のイメージを頼りに埋め込んでいくそう。もちろん完成するまでは裏返して、柄を確認することはできないので職人の腕が試される。
その衝撃的な話を聞いた後にあたりを見渡すと、ガーデン内のほとんどがゼリージュで囲われていた。
受け継がれる伝統技術
ゼリージュは父から子に代々引き継がれる職業であり、モロッコが世界に誇る手工芸術の1つ。今は職人養成学校を国内に多く建てられていたり、モロッコ政府も毎年助成金を出して職人さんの支援をしていて、先々の世代に残していかないといけない大切な遺産だとズバイダ参事官は話した。
その後ゼリージュの制作を終えた職人10名が改修工事のために来日、約50日間にわたり仕上げ作業を行った。
そんな職人の伝統技術が実際に見られる、モロッコガーデンの入口には大きなアーチ状のゲートがそびえ立っている。よく見てみると、その表面は石膏細工やゼリージュが一面に広がった繊細な装飾。屋根には半円形の陶器の瓦が綺麗に並べられて、軒下は木工細工で重厚感ある造りになっている。
このガーデンにはゼリージュの他に、石膏細工や木工細工が多くあるが、その全てを手作業で作り上げたと考えると職人技の凄さが見て分かる。
ゲートをくぐり中に入ると中央に特徴的な形をした噴水があり、それを囲むように十字に水路が配置されている。ガーデン内の水は循環していて、モロッコガーデンには ”水” が欠かせない要素の1つ。そして様々な種類の植物が植えられていた。
「中には泉や植物もありますが、ゼリージュも含めたバランスが良くないとモロッコガーデンとは呼べません。モロッコの景観設計士が実際に植栽に関わっているので、そういったところのハーモニーも見ていただきたいですし、1歩入ったらモロッコを訪れたような異国感があるので、小旅行のように楽しんでもらいたいです」と話した。
モロッコと日本のこれから
日本に赴任して2年のズバイダ参事官から聞いたモロッコ人の人柄は、はっきりした気質の人が多いので、心の中にあることを溜め込まずにはっきり相手に伝える人が多いと言うこと。「自国に対する誇りや愛情が非常に高いので、モロッコのどこが好きかを現地で聞くとその質問が嬉しいと感じて、愛国心の良さを全面に出して説明する人がとても多いです。それは日本の方も同じなのでは?(笑)」と私たちが知らない一面を教えてくれた。
「日本との共通点も多いということに関しては、日本ではおしぼりを出しますよね。実はモロッコにもお手拭きがあるんです。モロッコではその場でポットのようなもので手を洗い、拭くタオルを渡してもらい、それを1人ずつ行います。他にも、日本では温泉が好きな人が多いですが、アラブの国だと ”ハマム” と呼ばれる蒸し風呂に入ります。後はお茶です。モロッコでもミントティーでおもてなしをすることが1つの儀式になっているので茶道もあります」
今後のモロッコと日本の関係について聞いてみると、「日本には皇室、モロッコには王室があってその付き合いは昔から良好な関係が結べています。外交関係も良好で、お互いに連携も行えているのでこれからはこれを更に超えた一歩先の付き合いをする必要があると思うんです」