その外宮にお祀りしている豊受大御神は、天照大御神の食事を司る御饌都神(みけつかみ)とされ、現在では衣食住、産業の守り神として崇敬されている。人類の進化に伴う文明や文化の発展の根幹が、食料や環境に関わる「農」の発達であるとするならば豊受大御神はまさに豊作の神様。収穫祭は、先ずはその豊受大神宮へ奉献する式典から始まる。
東京農業大学世田谷キャンパスの正門をくぐると直ぐ、都心とは思えない静寂に包まれた小さな杜の中央に、鎮座まします豊受大神宮への奉献式が厳かな雰囲気の中で始まった。神職の祝詞、創立133年 収穫祭2024の安全な開催を祈る関係者たちの玉串拝礼と続くと最後に、応援団が学歌を奏上した。
この学歌を奏上するのは、東京農業大学全学応援団。箱根駅伝2024に10年ぶりの出場を果たした陸上競技部、今秋31年ぶりに東都大学野球リーグ1部に昇格した硬式野球部、5年連続で全日本大学野球選手権大会に出場した北海道オホーツク硬式野球部、多くのOBを角界に輩出している相撲部など、各運動部の応援活動に加えて入学式、卒業式、収穫祭といった主要な大学行事には必ず参加する東京農業大学には無くてはならない存在だ。
豊受大神宮奉献式に続き、開会式、そしてステージ演舞など収穫祭でも多忙を極める応援団をまとめるのは、金森 一紘団長(国際食料情報学部 食料環境経済学科)だ。
1931年(昭和6年)に設立された “東京農業大学全学学生応援団” は、その後 “東京農業大学全学応援団” となり、”大根踊り” の通り名で有名な伝統応援 ”青山ほとり” や学歌など、東京農業大生のアイデンティティを代々受け継ぎ披露している。スポーツの応援はもちろん、大学の主要イベントでも無くてはならない存在である東京農業大学全学応援団への興味は尽きない。今回、特別なご縁をいただき東京農業大学全学応援団の記事も別に掲載したので、是非そちらも読んでみて欲しい。
収穫祭にかける学生の思い
豊受大神宮奉献式に続いては、収穫祭の開始を告げる開会式が百周年記念講堂で行われ、いよいよ本番に向けた最後の準備に取りかかる。収穫祭実行本部が主導して無事に執り行われた開会式を終え、ホッとした表情を見せる新井さんに話を聞いた。
長野県出身の新井さんが所属している収穫祭実行委員会の実行本部は、学生全体の統括を担当。大学側と学生団体の間に入り、準備段階でのやりとりをする縁の下の力持ちといった仕事が主だという。
「昨年の資料がない中で一からスタートしたこともありましたし、人前に立って何かするのも得意ではなかったのですが、後輩たちも一緒に隣で頑張ってくれているのでやるしかないと思ってここまで頑張ってきました」と、コロナ禍前と変わらない規模・内容となった久しぶりの収穫祭準備を無事にやりきれていることに自信を覗かせる。
2024収穫祭のテーマ ”明日を創る農” は、「昨年のテーマ(農の新時代)は、コロナ後の新しい世代で頑張っていこうという意味がありました。それに続き、古いものを取り入れつつ新しい文化を未来に繋いでいこうとした今年のテーマは、私たちにぴったりだと思います」と話す新井さん。コロナ禍で途切れてしまった伝統を再び結び直す大事な年、収穫祭に携われたやりがいを熱く話してくれた。