金沢武士団(バスケ)の取材へ
スポーツライターをしていると、良くも悪くも現場が「日常」になる。いつも同じ競技、同じチームを見ていると、どうしても刺激は乏しくなる。何か新しい世界を見たい。そして旅をしながら肩ひじを張らずにスポーツを楽しみたい――。そんな気持ちで、晩秋の11月23日(土)と24日(日)に石川県へ出かけた。
23日は”松任総合運動公園体育館”へ、プロバスケットボールリーグ”Bリーグ”ディビジョン3(B3)の”金沢武士団”vs.”東京八王子ビートレインズ”の試合を見に行った。金沢駅からは10分、そこから徒歩15分の場所にある体育館だ。
自分が見たのは22日(金)に行われた第1戦で武士団が先勝した翌日、23日(土)の第2戦。前半は32-40とリードされた武士団が、80-76と逆転勝利した試合だった。金沢は198センチのスモールフォワード(SF)スティーブン・グリーンが攻撃の中心で、彼はリーグ屈指の得点力を誇っている。この試合も26点と大活躍だった。
金沢は外国籍選手枠を1つアウトサイドのグリーンに割いている分、サイズがやや小さい。しかし、第4クォーターの勝負どころで八王子の巨漢センター、デイビッド・ドブラスを複数でよく封じ、リードチェンジが優に10回はあった激闘を制した。1238人のお客さんは大盛り上がりで、私のような「緩い観戦者」も最後は手に汗を握る展開だった。
松藤貴秋ヘッドコーチはチームの現状についてこう説明してくれた。
「まだ、経験値の浅い選手が多いチームです。ケビン・コッツァーと高橋幸大、髙松秀太朗は途中加入。だから、まだケミストリーができていなくて、いったん歯車が狂うと駄目になってしまう。前半もそんな感じでした」
B3は17チームのうち、8チームがプレーオフに進出できるレギュレーション。首位・横浜エクセレンスは17連勝するなど20勝2敗(12月17日現在)と絶好調だが、中位グループ混戦だ。松藤HCは東野恒紀、國分大輔といった若手の成長をポイントに挙げていた。
また、12月6日にはウクライナ代表ヴャチェスラフ・ペトロフ、チャイニーズ・タイペイ代表経験のあるソン・スーヤオの加入も発表されている。ソン・スーヤオは今まで金沢にいなかったアジア特別枠で、「3人目の外国籍」としてコートに立てる。グリーンが攻守ともアウトサイドのプレーに専念できる時間が伸びるため、チームにとっての相乗効果も大きい。シーズン中盤以降の武士団はかなり楽しみだ。
武士団社長から見た金沢の魅力
武士団の中野秀光社長は、かつて”bjリーグ”の社長も務めたバスケ界の「大御所格」だが、彼に挨拶がてら、金沢という街の魅力について聞いてみた。
「一番の魅力は食ですね。食、そして文化が豊かです。どの地方も文化が豊かと言いますけど、深さが違います。お茶一つにしても、素晴らしいものが普通の居酒屋でも出てくるのが金沢です。ウチの女房を喜ばせるには最高にいい街ですし、私は奥さん孝行をしていますね(笑)」。
取材後は金沢駅構内にある武士団のスポンサーでもある「金沢まいもん寿司 金沢駅店」で、香箱ガニ、寿司のコースをいただいた。普段は回転寿司しか知らない自分だが、「まいもん寿司」は一見の観光客でもふらっと入りやすい雰囲気で、大将も私のような「素人客」に慣れている。林(富山)、白龍(福井)、神泉(石川)と北陸三県の地酒を堪能して(やや飲みすぎた状態で)ホテルに戻った。
翌朝はチェックアウトからしばらく時間があった。ただ、遠出するほどの時間はないので「カフェ 加賀麩不室屋」でしばらくお茶をする。ここは金沢の「麩」を使ったスイーツを出すお店で、これがまたなかなか美味にして美景。普段から日本茶が好きな私だが、何よりここの加賀棒茶は絶品だった。