そしてもう一人のカリスマ指導者は、競技未経験ながら箕面自由学園高等学校チアリーダー部 GOLDEN BEARSを日本屈指の強豪校に育て上げた野田 一江総監督。創部34年、平成から令和へと生徒たちは変われども、夏(JAPAN CUPチアリーディング日本選手権大会)、冬(全日本高校チアリーディング選手権大会)で全国制覇41回と高いパフォーマンスレベルを維持し続ける背景に、野田監督独自の”7つのルール”に基づく指導が根付いている。
大会前の“ルーティン”に共通項が見える
部活動指導者はもちろんだが、スポーツに限らず勉強やビジネスにおいても”勝ち筋”を見いだすことはとても難しい。司会者から最初に投げかけられた話題は、常勝チームの勝ち筋「大会前にチームとして必ずやっているルーティンは何か?」だった。
「毎年、選手たちのカラーで戦術や戦略が異なるので、大会前のルーティンはないですね」と秦監督が口火を切ると、会場の参加者たちは少し残念そうな表情に。しかし続けて、「上手くいかなくなった時に必ず選手たちはブレます。“戦術・戦略・起用法”に自信がなくなり、何かを変えようとするので、私が出て行ってブレないよう徹底して言い聞かせるのがルーティンです」と話すと、参加者たちはメモを走らせる。
対照的に徹底したルーティンがあると続いたのは、野田監督。チアリーディングではアップから2分30秒の演技時間まで、演技を行う16名の選手たちが如何に一糸乱れず動けるかに勝敗が掛かっているという。「大会一週間前から、徹底して本番同様のルーティンで同じ動きができるように繰り返します。一つの学校で3チームまでエントリーできるので、Aチーム、Bチーム、Cチームとミスない演技を連続して続けることで、生徒たちが自ら大会さながらのプレッシャーを与え合って大会に臨みます」と、チアリーディングならではのルーティンを紹介した。
最後にどちらにも当てはまらないルーティンを紹介したのは大原監督。練習メニューに“和大ドリル”という独特のルーティンが存在する和歌山大学硬式野球部では、「普段からやるべきことを選手たちがやっているので、試合前日の練習に行かないこともある」と話すと、メモを取っていた参加者たちの視線が一斉に大原監督に向けられる。
「試合で自分の勝負勘がブレないよう、前日に高校野球や他の大学の試合を観に行きます。選手交代などの勝負勘を鈍らさないようにすることがルーティンです」と、ノーサイン野球において大原監督自身が必要とする、選手交代のタイミングを研ぎ澄ますルーティンについて話すと、参加者たちは感心した表情でその内容をメモしていた。
三者三様の回答だったが、共通していたのは“選手の自主性を尊重した調整”をしていること。普段から選手たちが考え、実行していることを大会前も変わらずに続ける。これが令和の“強者の勝ち筋”なのだ。
目標設定は誰が決める?どう変える?
選手たちが考え、実行することが令和の強者の勝ち筋とのことだが、現在その過程にないチームは、どうやってそのステージまで登っていけば良いのか?カリスマ指導者たちも最初からカリスマだった訳では無いはずだ。