指導者のコミュニケーション力を上げる
パネリスト、参加者共にのめり込む時間が続く勉強会。いよいよカリスマ指導者たちのコミュニケーション力についての話題となる。
「今の子どもたちは、間違えないで話そうとする傾向が強い」と、Z世代の特徴を挙げたのは野田監督。「ですから、とにかく話しやすいような雰囲気を作っています。アウトプットできる雰囲気の中で、先ずは子どもたちに話させてみて」と、アウトプットをスムーズにさせるコミュニケーション力が大切と話す。
自身を「小学校4年生まで友だちは”本”だった」と振り返る野田監督は、「吹奏楽の道に入り、人と触れあうようになったことで自分の居場所ができて性格が変わりました」と、指導者として成功しているのは、決して先天的な能力があったわけでは無いと言う。
「先ずは全員でメシを食う。学生スタッフの女生徒たちは、普段ほぼ練習に顔を出さない活動なので、試合後に選手たちと一緒にご飯食べる機会を設けました。すると、男ばかりの選手たちは学生スタッフと上手く話せません。それでも全員でメシを食うことを繰り返すうちに、徐々に上手く話せるようになりました」と、生徒同士がコミュニケーションを取る機会を作ると話したのは秦監督。
「サッカー指導者の中でも、競技と違うところでコミュニケーションを取る指導者もいれば、徹底的に競技外で接触しない指導者もいて、コミュニケーションの取り方はそれぞれ。大学生はフランクに付き合いやすいと思います。みんなでどこかにドライブに行ったり、食事をしたりと気軽に触れあう機会を持てるのは、中学生や高校生では難しいですからね」と、大学生だからこそ使えるコミュニケーションの取り方を紹介する。
「先ずは自分が元気に挨拶して練習場に入ることで、コミュニケーションを取りやすい雰囲気を作っています。とは言え練習時間が短いので、足りない部分は生徒たちとノートのやり取りで補っています。その内容はSNSでコーチたちとも共有し、気になった生徒は皆で注視するようにしています」と、ノートとSNSを使ったコミュニケーションの取り方を野田監督が紹介すれば、「高3で主将を経験した選手が多いのですが、最近の選手は大人しく、互いに課題点を指摘しない傾向があります」と、大原監督が続く。
「練習後に、主将や副主将を経験してきた下級生たちを集め、『自分たちが高校3年生だった時、今日の練習は悔いなくできたと思うか?本当に良い練習にするためにはどうしたら良いと思うか?』と話しました。すると、それから下級生だけで集まり話し合いをするようになりました」と、生徒たちの特徴に合わせたコミュニケーションの取り方の事例を紹介した。
「リーディングでは、子ども同士で言い過ぎるくらい言うことがあります。でも、本当はみんなそこまで言いたくない。ですからそんな時、言われた生徒たちに対して『どういう気持ちで(先輩があなたたちに)言っているか分かる?』と、聞くようにしています」と、野田監督が話せば、「自分がやるべきことをやっていないにもかかわらず、発言する選手の話しを遮ることはあります。私たちは練習などのデータを皆が見られるようにしているので、やっていない選手は一目で分かってしまいます。ですから、聞いている選手たちもその選手の発言を苦々しく思っている。ただし、その選手がやるべきことをやり始めると数値で分かりますので、それからは他の選手たちもその発言を認めるようになりました。」と秦監督も、一様では無い生徒たちと柔軟にコミュニケーションを取る必要性を唱える。
令和の10代20代をどのように導くか?生徒たちの自主性を尊重しながら、失敗を成功に繋げて行く。生徒たちが声を出すきっかけを作るだけでなく、些細な変化を見逃さずにそれぞれのベストタイミングを見計らいアドバイスを送る。その中で、チームとして高みを目指し続けるような目標を設定し、チーム全員が方向を見失わない羅針盤となる。