下部の写真で見ると乾燥した実は黒く変色していますが、樹になっている実は黄色で美味しそうです。すると、「ヤギが食べる果肉部分はとてもいい香りで一見美味しそうに見えますが、実は苦いのであまり食用には適していないのですよ」と笑顔で礒田先生が教えてくれました。ヤギに美味しくない果肉を食べてもらい、吐き捨てた種子を回収してオイルに使うのを発見した人には感心しますね。

左からアルガンの実、種子、カーネルーJournal-ONE撮影
アルガン産業の存在と礒田先生とメリエムさんが願う未来
モロッコには世界に誇る主産業として “リン紘石” があります。それに次ぐ産業としてアルガンオイルも柱にしたいと力を入れているのです。現在、モロッコ国内では約3万人がアルガンオイル産業に携わっていて、そのほとんどが女性。国として女性の働く環境を整備し、支えている重要な産業の一つなのです。
2010年に“国立アルガンツリー発展庁”ができましたが、その前から現在に至るまでの約30年間も礒田先生、そしてモロッコの大学、欧州の大学、そして礒田先生の研究室が研究を続けています。「科学的根拠に基づいたアルガンのプロモーションで、現地モロッコの農業省や品質管理を行う機関と協力を重ねてきました。SATREPS事業によりモロッコにハイスペックな機材を投入し、現地で日本と同じ研究ができるように技術移転もしてきました」と話す礒田先生。

礒田先生が思い描くアルガンの未来とはーJournal-ONE撮影
最後に、お二人に今までやってきた研究をどのように発展させていきたいかを聞いてみると、「実は日本企業がモロッコに投資している額は大きいです。自動車産業をはじめ、様々な分野でモロッコに進出しています。そこで我々がアルガンオイル製品のブランド、製品監修として科学的に貢献できるのもいいのかなと思いますね。特に食品、薬や化粧品などの産業で研究が活かせると、企業側にもメリットがあるのではないかと思います」と、礒田先生は日本企業との将来の協業について言及します。
「今日お話ししたように、科学的なエビデンスはここまで蓄積できたので、日本の技術協力でアルガンオイルをより良い製品にして色々な人に使ってもらいたいですね。アルガン産業をもっと発展させられるように協力できればと思っています」と、モロッコと日本がさらに深く繋がる未来を描きます。
メリエムさんも「私は現在モロッコを含むアフリカのフランス語圏を担当する仕事に就いています。これからは、より外国と日本企業との交流を深め、アルガンオイルをはじめとしたビジネスの橋渡しができればと思います」と、明るい未来を想像していました。

モロッコと日本の橋渡しをしたいと笑顔で話すメリエムさん‐Journal-ONE撮影
「モロッコにはアルガンオイルの他、エッセンシャルオイル(香料)や世界一香りがいい薔薇と言われている ”ダマスクローズ” などの特産品もあります。それを日本企業と研究をしたり、日本で紹介をしてもらったりして一緒にモロッコのサポートをしたいです」と続けました。
モロッコが誇るアルガンオイルを長い間研究してきた礒田先生とメリエムさん。その研究内容は非常に興味深いものでした。この記事を通して、お二人が研究した内容やアルガンの魅力をもっと知っていただき、ぜひアルガンオイルが持つ様々な力を体感していただきたいです。
モロッコと日本を繋ぐ一つとして、アルガンの樹がもたらす希望にJournal-ONEはこれからも注目していきたいと思います。

とても興味深いお話でしたーJournal-ONE撮影
