しかし実際のところはモロッコから輸出後に、各地で商品を製造する過程において、どのように加工されているのか追跡することはできないのです。つまりアルガンオイルが他のオイルと混ぜられ、薄められていたりする可能性も無きにしも非ずと、礒田先生は警鐘を鳴らします。
「それでもアルガンオイルとして高値で売買されていることもあるので、しっかりと成分分析を行い、アルガンアイルがどのように皮膚の細胞に働きかけるのかということをメリエムさんと一緒に研究してきました」と研究の一つを紹介する礒田先生。

持ってきたオイルの成分を確認するメリエムさん‐Journal-ONE撮影
最近では私たちの周りでも、アルガンオイルと表示された商品を目にすることが増えてきています。礒田先生は「アルガンオイルには、主として8種類のアルガン特有のサポニンが含まれていることを、九州大学の清水先生との研究で分かりました」と説明してくれました。
LC-MSMS(液体クロマトグラフィー質量分析計)という分析機器を使うと、アルガンオイルの中には、アルガン特有のサポニン類が8種類入っていることが判ります。礒田先生がモロッコの共同研究先から入手したアルガンオイルには、8つのサポニンのピークがはっきりわかりますが、日本でアルガンオイルとして販売されている商品について同様の分析をすると、その8種類のサポニンが全種類含まれていなかったり、本来黄色みがかったアルガンオイルが白く脱色されたりしていました。
これはオイルを脱色したり精製することで機能成分が無くなったこと、保存状態が悪くて劣化していることや、他のオイルを混ぜられたりすることなどいくつかの原因が考えられるそうです。このように本来のアルガンオイルの効果が認められない製品もあると教えてくれました。
こういった研究でアルガンオイルの効能やエビデンスを示すことで、モロッコとしてもトレーサビリティができるようになり、通常の効果を有した製品を選別するために世界中で使われるようになるとのこと。「研究機関 “お墨付き” の製品があるといいですよね」と、アルガンオイルの価値を守る未来を礒田先生が語ります。
礒田先生とマリエムさんの研究で“もったいない”をなくす

研究時のメリエムさん‐メリエムさん提供
研究を進めていくと、種子の固い殻にはカーネルケーキの美白作用とは逆にメラニン色素を増やす作用があることもわかったそう。そこで、殻部分も使えないかとマリエムさんたちは考えました。
アルガンのカーネルから搾油したオイルと殻の成分を使ってアルガン100%のクリームを製造することにも成功したのです。「アルガンの成分が持つ抗酸化作用はエイジングケアになりますし、他にも抗炎症作用もあるので、昔は薬として使用されていたかもしれないですね。捨てられていたアルガンの副産物を使った素材が、このクリームのように実際に使われるようになれば良いと思いますね」と、礒田先生も将来的な普及に期待を寄せます。
アルガンオイルはどんな使い心地?
研究について一通りお話をうかがったところで、メリエムさんから「ぜひアルガンオイルを試してみてください」と言ってメリエムさんがバッグから取り出した、数値検査に合格したアルガンオイルを初めて手につけてみることに。私はスキンケアとしてオイルを使うのは「付け心地が重い」と感じてしまうので、今まで試したことがありませんでした。しかし、アルガンオイルを手に乗せてみると「え…軽い!!」と思わず声を出してしました。

実際にアルガンオイルを体験してみましたーJournal-ONE撮影
想像していたよりさらっとしていて(粘度が低く)、手からすぐに垂れてしまうようなテクスチャー。手に馴染むのも早く、保湿はしっかりされるのに全くべたつかないのです。オイルをつけた手でスマートフォンを触ってみましたが、べたつき感などはほどんどありませんでした。
これなら乾燥が気になる季節にスキンケアとして取り入れやすいですし、お肌に良い成分が入っているので、お肌の美白効果も期待できますね。モロッコ王国とのご縁をいただき、さまざまなモロッコの方を取材してきましたが、皆さんお肌が綺麗だったので美肌の秘訣を聞いてみたところ「アルガンオイルを使っていますよ」と答えていたことを思い出しました。礒田先生とマリエムさんのお話を聞いた後だと、その秘訣に納得できますね。
