吉村)色々な反応がありましたよ。「え?この人、何言ってるの?うちのチーム、最下位だよ」と言いたげな顔もあれば、「この監督、何かやってくれそう」と目を輝かせる顔もありました。

選手との初対面で先ずは成功体験の積み重ねが優先と感じた‐Journal-ONE撮影
― 平林金属ソフトボール部を立ち上げたときと同じく、先ずは志が高くないとレベルは上がらない。こういった経験から、敢えて就任前に選手たちの志の位置を確認したのですね。そして、把握した現在位置から開幕まではどういった準備をしたのですか。
吉村)一言でいうと、成功体験を積み上げることを徹底しました。オープン戦ではレギュラーを定めず、全員をとにかく起用して様々なパターンを試しました。上手くいくこともあればそうでないこともありましたが、一番の収穫は選手の目の色が変わったことです。「自分がやるんだ。自分はできるんだ」という意識が高まりました。
吉村)互いに選手起用や戦術を試すオープン戦ではありますが、マドンナカップで8戦全勝することができました。この大会で、公式戦へ臨む手応えはある程度掴めたと思います。でも、まだまだ選手が自分自身を信用しきれていないところがあり、ここまで(第4節を終了して3勝5敗)で惜しい試合を落としています。

投球練習では毎回マウンドで投手とコミュニケーションも‐Journal-ONE撮影
― 具体的にはどういったところですか。
吉村)例えば、犠牲フライで得点できるチャンスで、「エンドランのサインを出してください」というケースがありました。本来は充分に外野に飛ばせる、結果長打になる可能性も秘めた選手が、自分を信用できずに安全な策を求めてしまう。ピンチの場面で四球を恐れて、厳しいボールを投げる能力があるのに甘いコースに投げてしまうなど、まだまだ成功体験の積み上げが足りないなと感じています。
吉村ソフトが思い描く強い太陽誘電
― ここまで第4節を終えて、接戦の試合が続いています。
吉村)はい。開幕の戸田中央戦を除けばスコアは僅差でしたし、どの試合も勝つ可能性がありました。こういった戦いを続けることで、やり切ったプレーや勝ち切った試合を通じて成功体験が積み上がっていきます。その結果、ヒラキンのように強いチームのDNAが育っていくと考えています。
― 勝負にこだわり続け、気付けば日本一を狙えるチームになってくると。
吉村)今シーズンは、とにかく序盤の失点を抑える。接戦に持ち込み、成功体験を積んだ選手たちが結果を出せば、また自信も勝ち星も付いてくる。こういった戦い方を通じて、プレーオフ争いに食い込みたいと考えています。
吉村)一度、勝ち方を知ったチームは、阿吽の呼吸で創造的なプレーができるようになりますし、勝てる流れを作れるチームになります。新たに加入した選手も当たり前のようにそういったプレーができるようになりますし、「私も太陽誘電でプレーしたい」という有望な選手も集まってくるでしょう。今まで私が携わってきたチームにおける”強くなる過程”は着実に踏んでいると思います。

勝つためのプロセスがチームのDNAになることが目標だ‐Journal-ONE撮影
成長に欠かせない世界で戦うマインド
― 他の強豪チームを相手に優勝を常時狙える”強豪・太陽誘電”の復活ですね。日本代表で戦った経験からはどうでしょうか。
吉村)一番は、”心に火を付けるものを見つける”ということでしょう。国を背負って戦う際、諸外国の選手たちが出す鬼気迫る闘志や実力以上のプレーは、実際に対戦すると圧倒されます。奥ゆかしい日本人が同じように気迫を前面に出すことは難しいですが、それぞれが胸の奥に秘めたものを燃やして戦えるようになれば、相手に臆することはなくなります。JDリーグでも日本一を目指す場面では、こういったことのできるチームが勝ち切れるのかなと思います。
吉村)それと、”特別な環境が人を変える”ということです。今まで行ったことのない場所、対戦したことのない相手、大会を体験することで、人間的にも新たな成長ができるのです。プレーオフ、ダイヤモンドシリーズ、日本代表と新たなステージを経験することで、選手としても人間としても成長できるチームにしていきたいです。
監督自身のマインドセットと本拠地・群馬県
― 沖縄(高校生まで)、愛知(大学生)、東京(JICA受験)、岡山(平林金属)と様々な地域で活躍している吉村監督ですが、群馬県ではどういったマインドセットをされていますか。
