「六道さん」と親しまれ、お盆の精霊迎えに参詣する寺として知られる、六道珍皇寺。平安時代以前に建立され、冥府を行き来したと伝えられる小野篁おののたかむら卿ゆかりの寺院である。臨済宗建仁寺派に属し、正平年間（1346〜1370年）に建仁寺の僧、良聡によって再興された。

薬師堂には木造薬師如来座像（重要文化財）が安置され、閻魔堂えんまどうには木造閻魔大王座像と小野篁の立像が祀られている。また、境内裏庭には小野篁が冥府めいふ通いをしたといわれる井戸がある。

「六道」とは、仏教の教義でいう地獄道じごくどう・餓鬼道がきどう・畜生道ちくしょうどう・修羅道しゅらどう・人道にんげんどう・天道てんどうの六種の冥界を指し、人は因果応報により六道を輪廻転生りんねてんしょうするとされる。

六道珍皇寺ろくどうちんのうじの一帯はかつての葬送地であり、鳥辺野とりべの入り口にあたる六道の辻ろくどうのつじと呼ばれている。この地で「野辺送りのべのおくり」の法要が行われたため、珍皇寺の辺りは中世以降「六道の辻」と呼ばれ、他界への入り口とされてきた。

珍皇寺では、毎年お盆前に鐘楼にかかる鐘が撞かれ、この鐘の音は遠く冥土まで響き渡り、亡者はその響きに応じてこの世に呼び寄せられると伝わる。このため「迎え鐘むかえがね」と呼ばれる。

京都では、盂蘭盆うらぼんを控えた8月7〜10日の期間に「六道まいり」という風習がある。初盆を迎える家には新仏さまのお盆特別永代供養や一周忌・三周忌の追善特別供養の申し込みも受け付けている。