小澤選手は、3回戦の九州産業大学(福岡六大学野球連盟)戦でも好走塁を見せており、試合後のインタビューで「(母校の特徴でもある)走塁は守備と共に自信を持っている」と話していた。母校・健康福祉大高崎高が標榜する ”機動破壊野球” が、大学野球の檜舞台でも威力を発揮した早稲田大学が遂に均衡を破ると、三塁側応援団の ”紺碧の空” 大合唱と共に流れが一気に早稲田大学に傾いていった。
長身左腕が流れを渡さない
無死三塁と意気上がる早稲田大学に対し、青山学院大学の安藤 寧則監督は迷わず189cmの長身左腕・ヴァデルナ フェルガス投手をマウンドに送る。最速146km/hの直球とキレのあるスライダーを武器に、青山学院大学のセットアッパーとして大車輪の活躍を見せている投手だ。
ピンチの場面でも落ち着いたマウンドさばきを見せるヴァデルナ投手は、後続を連続三振に切って取るなどの好投でベンチの期待に応える。
早稲田大学が1点を先制したものの、試合の流れをつかみきれずにこの回の攻撃を終えることになった。
東都を制した集中力で一気呵成の逆転劇
「入替え戦がある厳しいリーグで戦う青山学院には、1点を取らせないことへの執念を感じた。」と、試合後に小宮山監督は追加点の好機を防いだ青山学院大学の集中力を評した。
その青山学院大学の集中力が、ピンチを脱した直ぐの攻撃で一気呵成の逆転劇を演じることになる。
5回表の先頭・松本 龍哉(岩手・盛岡大学附属高)が打ち上げた打球は、ショートの名手・山縣 秀(東京・早大学院高)とセンター・尾瀬選手の間に。
これを追った山縣選手がグラブにボールを当てながらも捕球できず。レフト側に転がったのを見てすかさず松本選手が二塁を陥れると、犠打で同点の走者を三塁に進めた。
ここで打席に入った中田 達也(石川・星稜高)選手がバット一閃!右越適時二塁打で同点に追いつくと、今度は青山学院大学応援団から大きな歓声があがる。
さらに2死後、藤原選手がこの日2本目の中前安打を放って逆転。東都を制した集中力で、ピンチの直後に試合をひっくり返した。
互いの攻撃を継投策で必死の防戦
「当初は3回までの予定だったが、余りにも調子が良かったので」と小宮山監督が話したとおり、不運なヒットから逆転を許したものの鹿田投手が試合を作った早稲田大学は、予定通りの継投に入っていった。
宮城 誇南(埼玉・浦和学院高)投手、香西 一希(福岡・九州国際大学付属高)投手が要所を締めて味方の援護を待てば、青山学院大学も鈴木 泰成(東京・東海大菅生高)投手をマウンドに送って必勝を期す。
7回表の無死一、二塁のピンチを早稲田大学がしのげば、青山学院大学も8回裏、1死満塁のピンチをしのぐ。ついに1点差のまま9回裏の早稲田大学の攻撃に移っていった。
9回裏、早稲田大学が同点に追いつくか?青山学院大学が切って取るか? 早稲田大学応援席が “紺碧の空” を熱唱し続けるボルテージ最高潮の中、先頭の山縣選手が四球を選んでチャンスを作る。
しかし、鈴木投手は3回戦で特大の逆転本塁打を放っている3番・𠮷納選手、4番・印出選手を切って取り、5番・前田 健伸(大阪桐蔭高)選手を一塁ゴロに。アウトになった瞬間、高々と両手を天に突き上げる鈴木投手に駆け寄るチームメイトたち。
青山学院大学が9年ぶりの王座奪還を目指した早稲田大学を僅差で下し、2戦連続通算6度目の優勝。一塁側応援席の学生たちとともに勝利を喜び合った。