今季は、ダイヤモンドリーグを主戦場として海外でのレースに出場し、経験と実績を積んできた。7月21日に、今季初の国内レース(トワイライトゲームス)に急きょエントリー。圧巻のハードリングを披露して13秒10のシーズンベストをマーク。今季世界リストの順位を10位タイに引き上げている。
その偉大なる先輩に「追いつけ、追い越せ」と成長を遂げてきたのが、2学年後輩の村竹だ。東京五輪は、最終選考競技会となった日本選手権の予選で参加標準記録を突破しながら、決勝を不正スタート(フライング)で失格する大失敗。その悔しさをバネに、着々と力をつけてきた。
昨シーズンも春先に肉離れに見舞われて世界選手権出場を逃したものの、夏以降に復帰すると、9月の日本インカレで、泉谷に並ぶ13秒04をマーク。泉谷とともに日本記録を保持することになった。
今季は、早々にパリ五輪代表内定を決めた泉谷が出場しなかった日本選手権を、今季世界6位タイとなる13秒07のセカンドベストで圧勝し、五輪切符を獲得。高いレベルでの安定に自信を深め、「五輪ではメダル獲得と12秒台突入を狙いたい」と、目標を上方修正してパリに臨む。
それぞれにタイプが異なる2人だが、どちらも天候や風の条件に大きく左右されることなく、いったんマークしたシーズン最高記録に近い、あるいはそれを上回る記録を安定して出せるところは共通項。これまで五輪で決勝進出を果たした日本選手はゼロ。2人揃って、その歴史を塗り替えることができるか!? さらには、日本人初となる12秒台突入にも大きな期待がかかる。
オリンピック男子100m決勝、という大舞台へ
すでに豊富な実績を持つ選手としては、2022年(7位)・2023年(6位)と男子100mで世界選手権連続入賞を果たしているサニブラウン アブデルハキームに、五輪での自身初の決勝進出、さらには上位入賞の期待がかかる。
今季世界リストは、ジャマイカの新鋭であるキシェーン・トンプソンが9秒77で1位を占めているが、ブダペスト世界選手権でスプリント3冠(100m・200m・4×100mリレー)を果たしているノア・ライルズ(アメリカ、今季9秒91)、高地での記録ながら9秒79をマークしているファーディナンド・オマニャラ(ケニア)など、複数が9秒8台以上のシーズンベストをマークしており、決勝では大接戦が予測される。
まだ25歳のサニブラウンだが、世界選手権には16歳の2015年から出場し、同年の北京大会では準決勝に進出(史上最年少)、2017年ロンドン大会では史上最年少で決勝に進出して7位に入賞と、キャリアは豊富。この顔ぶれのなかで決勝進出が実現すれば、自己記録の9秒97はもちろんのこと、9秒95の日本記録(山縣亮太、2021年)を塗り替える可能性が高い。
2004年アテネ大会の4位越えを期す:男子4×400mリレー
2022年オレゴン世界選手権で4位入賞を果たした男子4×400mリレーも活躍を大いに期待できる種目の1つ。昨年は個人の400mで佐藤拳太郎(44秒77=日本記録)、佐藤風雅(44秒88)が44秒台に突入。また、中島佑気ジョセフも、44秒台突入を目前に迫る位置にいる。
この3人に加えて、東京五輪、オレゴン世界選手権に出場している川端魁人も復調し、チームとしては上り調子にある状態。序盤から上位争いに絡んでいく展開でレースを進め、2004年アテネ大会で果たした五輪での最高順位(4位)を上回り、ロングスプリント界悲願のメダル獲得を実現させたい。
女子1500m・5000mの2種目入賞にチャレンジ:田中希実
女子では1500mと5000mに出場する田中希実に、2種目入賞の期待がかかる。前回の東京五輪では1500mで8位入賞の快挙を達成するとともに、日本人女子として初めて4分の壁を突破する3分59秒19の日本記録を樹立し、見守る人々をも驚かせた。